2011年07月16日

いまアメリカで起きている本当のこと 日高義樹

著者は米国在住のジャーナリスト。テレビ東京系「日高義樹のワシントン・リポート」が有名。NHKニューヨーク支局長を経て、ハドソン研究所首席研究員。

保守系シンクタンクとして知られるハドソン研究所にいるだけあって、立場は共和党寄り。歴代の民主党政権は失敗ばかりと批判。ブッシュのイラク戦を正当化し、オバマのアフガン戦は意味不明とするなど、あきらかな偏りは見られるものの、「米国の保守派から見えるアメリカと世界」という視点を知るには良い一冊です。日本国内では流通しないリアルな情報も詰まっています。

民主党の社会主義的なバラマキ政策が批判されてオバマは中間選挙で大敗し議会はねじれ現象、しかし保守陣営もこれといった有力候補者が見当たらないようです・・なんか日本とそっくりじゃない?と笑います。以下メモ。

・・・
●米中衝突
米国内ではオバマの失政に不満が高まり、保守派の力が台頭している。オバマも再選に向けて保守的な傾向を強めてはいるが、今後の選挙で民主党が勝てる見込みは小さい。
オバマ政権の2年間は中国に対して宥和的で、甘やかしたために増長を招いた。中国人は黒人を一段低く見るため、オバマ大統領を軽んじた。今後は米中対立の方向が出てくる。中国に進出した企業はダメージを蒙る可能性がある。日本も米中衝突のはざまで、いかに生き残るかを考えなくてはならない。

●日米関係
日本の民主党政権は米国との関係を徹底的に悪くした。内向きの理屈が世界に通用すると勘違いし、安全保障面を大幅に依存している米国と「対等」の関係を求め、中国に擦り寄った。現下の世界においては、現実的に国家が存在と存続の単位である。その国家の安全保障について何の構想も戦略も持たない政権を米国は信用できない。
前原誠司前外相が新幹線を売り込みに行っても「国家間の約束事(核持込の機密暴露・基地問題)をひっくり返した政党が何をしに来たんだ」という扱い(当たり前)。

●オフショア戦略
中国の軍事力増強に対する新たな戦略は「オフショア」。機動力や遠隔コントロール技術の向上により、紛争地域の近くに基地を置く必要が消えた。グアムあたりに引き、中国のミサイルが届かない遠隔地から中国本土を叩く。アフガンで実証された無人偵察機の能力も向上している。(管理人:ということは沖縄に基地がある必然性は無いはず。多額のお金を払ってでも沖縄に米軍がいてほしいのは日本の事情。中国や北朝鮮を牽制するため)

●ドル離れ
米国内においてもドルに対する信任が失われつつある。もともと米国人は、それほどドルを妄信していないし、中央銀行のことも信じていない。「ドル離れ」の裏で、州独自の地域通貨実験や、金本位制への動きもある。
大統領によりドルの無効化が宣言され、世界一の金保有を背景に、ゴールドに裏付けられた新しい通貨に切り替えられる可能性もある。(管理人:金・ドルの兌換停止も突然だったわけだし、あり得るのか)

●エネルギー政策の変更
地下2000mのオイルシェールを天然ガス化する技術を完成した(シェールガス革命)。オイルシェールの埋蔵量は原油の2〜3倍。米国だけでなくブラジルなどの地下に大量に眠っている。向こう数十年はエネルギーに困らない。これにより、今まで推進してきた原子力をどうするか迷いはじめた。(管理人:GEと結んだ日立、ウェスティングハウスを買収した東芝の運命は?)

●中国のアフリカ進出
中国は1960年代からアフリカに進出。タンザニア・ザンビア鉄道の建設など積極的に援助してきた。欧州の植民地でしかなかったアフリカに初めて産業の芽が生まれた。
いっぽう、三狭ダムで追い出された数百万の農民をアフリカに送ったため、土地を奪われたアフリカの人々が反対運動を始めている。かつての帝国主義型植民地侵略と同じ構図が起こっている。

●人民解放軍の増長
中国の一般民衆が腐敗した共産党に見切りをつけ軍人に期待を持ち始めているため、共産党が軍を抑えきれなくなってきている。2.26事件〜戦争へと進んでいった、かつての日本と似た状況になっている。
ただし中国の軍事力は張子の虎。核兵器を除けば、通常の陸・海・空軍では日本の自衛隊にも勝てない。まして米軍に追いつくのは、はるか先。中国の長距離ミサイルでは、防御・攻撃機能を備えた米空母を攻撃できない。ただし、サイバー戦争には注意が必要。

●イノベーションの力
米国パワーの源泉は大学発の技術開発力。柔軟な発想で新しいコンセプト、技術、仕組みを生み出し、困難を切り抜けてゆく。中国は模倣はできてもイノベーションの力は弱い。両者の逆転は簡単に起こらない。
・・・

と、安直な米国衰退論を退けます。

中国はまだ成長するでしょうが、今後も当分の間、世界でもっとも精強な国はアメリカであり続けるでしょう。目先の「米国衰退」「中国台頭」論に惑わされて、日米関係をおろそかにし中国につこうと軽挙妄動すれば共産党政府の思うつぼです。

とはいえ、米国も(他の全ての国と同様)自国の国益を最優先に動きます。損得を超えた友情というものは個人間にしか成立しないので、このあたりを混同してはなりません。
本書には、米国が冷戦時代と違い極東地域の安全保障をアメリカ一国が負う必要はないと考え始めている、とも書かれています。シェールガス革命によってエネルギー資源を手に入れ、食料は自国でふんだんに生産できる米国が、いつまで警察としてアジアにいる必要があるでしょうか?日本は日本として、何が自分たちにとって最善なのか・・をよく議論し見極める必要があります。そのためにも、本書のようにリアルな情報を知りましょう。

米国の保守派、という観点が色濃く出た論調ですが、長年ワシントンに拠点を持って活動する著者ならではの手応えある一冊です。日本のマスコミから流れてくる低レベルで薄味の情報とは較べものになりません。

読むべし!






posted by 武道JAPAN at 15:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月07日

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で 水村 美苗

読了してからブログに書くまで時間が掛かってしまった。
あまりに重要な問題が提示されており、その危険性をどう表現したものか今もわからない。

とにかく「本気」の本である。ぜひ読んでもらいたい。読む価値が極めて・・きわめて、高い。そして、この危機感を共有してほしいと、切に願う。

・・・
世界には元来、「普遍語」と「現地語」のふたつしかなかった。

「普遍語」とは学問の言葉(主として書き言葉)であり、国や地域を越えて、科学や芸術などの「叡智」が蓄えられるデータベース。代表的な「普遍語」は、西洋であればラテン語、イスラム世界ではアラビア語、アジアでは漢語。対する「現地語」は、生活のための言語(主に話し言葉)。

「学問をする」「叡智を求める」とは、二重言語者として「普遍語」の知識にアクセスすることだった。かつて日本の知識人は、漢語で書かれた書物を読み、漢文を記した。

近代になって、そのハザマに「国語」が生まれた。
国民国家の成立とともに、国語の整備は盛んになり、本来「現地語」に過ぎなかった言葉で学問をし、科学を学び、文学を顕すことが可能になった。
日本は、いち早く対応した。大学は巨大な翻訳機関となって西洋からの新知識をせっせと日本語の中に取り込み、日本近代文学は世界で「主要な文学のひとつ」と見なされるほどに興隆した。

「国語の祝祭」とも言うべき時代が訪れ、そして終焉した。いまや世界は単一の普遍語である英語と、その他の現地語に収斂しようとしている。「国語」として栄えた言葉たちは、徐々に「現地語」へと押し戻されつつある。

グローバル化とインターネットの普及により、英語=世界普遍語の不動の地位は、ますます加速する。米国が衰退し中国が大国化したとて、世界中の科学・文学が中国語に置き換わる事態は起きない。
今後、主要な科学や文学は英語で表現され、「叡智を求めるものたち」は英語世界に吸収されてゆく。日本においても、減少する人口がこの傾向に拍車をかける。日本語では1億人にしか通じないものを、もし英語で発表できれば数倍〜数十倍のユーザーに届けられる。世界に通じる有為な人材ほどこの傾向に惹き付けられる。
結果、日本語で発表される「書き物」は、相対的にレベルの低いものに落ちぶれてゆく。漢語にアクセスする者が減り、やがて専門家のみが出入りするクモの巣が張った図書館に成り果てたのと同じ。

これまで日本語は、庇護を必要としなかった。日本の国力と人口が、日本語の「国語」としての地位を支えた。しかし、これからは意図的に、(しかも相当な覚悟を持って)日本語を護る、という決意が要る。さもなくば日本語は衰退し、我々の子孫は、近い未来に漱石や鴎外を読めなくなっているだろう。

国益の点からも英語普遍語化への対策は急務。
現下の世界においては英語での情報発信が死活的に重要。日本人の下手糞な英語が、外交・貿易その他の場面でどれほど日本の利益を毀損しているか枚挙に暇がない。

ヨーロッパ語と英語は親戚関係にあるため、西洋諸国人が英語を習得することは我々ほど困難でないが、言語の成り立ちが根本的に違うアジア、特に日本においては戦略が要る。

国民全員バイリンガル戦略は悪しき平等思想であり、幼児からの英語教育には反対。真に必要なのは英語で重要なメッセージを発信できる少数の専門家養成。
むしろ、国語の授業時間を増やし、覚悟を持って日本語を護る気概が必要。

・・・

と、長いスパンで地球に起こっていることを俯瞰させてくれます。

国益とは別に、文化の問題もありそうです。
我々は言語にない概念については思考しにくい。英語に翻訳が困難な、日本語に特有の概念、例えば近年世界的に有名になった「もったいない」などは、日本的な美徳が結集した言葉=概念だと思いますが、日本語が劣化すれば、そういった「日本的なセンス」〜これからの世界に、きっと必要な智慧〜が消えてしまうのではないか?と危惧されます。

生物界では、疫病が流行したときに、多様な種がいれば全滅はしない。どれかが生き伸びてまた繁殖する。多様性がリスクヘッジになっている。
もし世界の言語空間、思考空間が英語という単一種になってしまったとき、地球の文明は弱体化をはじめるのではないでしょうか?そのためにも、我々しか守り手のいない日本語を、なんとしても守らねばなりません。

本書で提起されているのは、経済や戦争、テロや環境汚染といった見えやすい危機ではない。しかし、もしかすると日本と日本人にとって(あるいは世界にとって)遥かに致命的な危機かもしれない

読むべし!





posted by 武道JAPAN at 23:08 | Comment(1) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月03日

これからの日本経済の大問題がすっきり解ける本 高橋洋一

著者の高橋氏は、、現在ベストセラーになっている「日本中枢の崩壊」を著した古賀茂明氏と同様、改革を志した挙句に霞ヶ関を追われた元官僚。
東大理学部数学科を出たのち東大経済学部に再入学、卒業後に大蔵省(当時)に入省。小泉政権で政治任用されて一連の構造改革を手がけた。研究者としてプリンストン大学に在職中、後にFRB議長となるベン・バーナンキに学び、金融政策にも詳しい。
「埋蔵金」を発掘するなどしたため財務省から敵視され、霞ヶ関を去った。(その辺りの経緯は「さらば財務省!」に詳しい)

本書では、特に震災後をふまえた日本経済の問題解決を論じます。以下メモ。

・・・

現行の「災害復旧負担法」では、元の状態への「復帰」が原則。だが今回は、元通りにするのではなく新しいグランドデザインが必要。より国際競争力のある新しいインフラを作るためにも、まずこの枠組みの撤廃を。

復興には財源が必要。逐次小出しはダメ。20〜30兆円ほどを一気に手当てし、多すぎれば後に減額するくらいで良い。
予算の使い方は新設する「東北復興院」に思い切って権限委譲する。復興院のトップは、復興後に「東北州」の首長になると良い。

財源確保に増税は絶対ダメ。震災のダメージに追い討ちをかける。100年に一度の事態には、負担を時間軸で平準化できる国債発行→日銀引受け+埋蔵金で手当てすべし。

国債の日銀引受けは「禁じ手」と言われるが、「特別な事由」がある場合には国会の決議により引受けさせることができる。
日本は震災前からデフレであり、通貨供給量を増やしてインフレ方向に導くためにも、円安方向に導いて輸出産業の息を吹き返すためにも、日銀引受けは効果的。

そもそも、実は国債の日銀引受けは毎年一定額行っている。財務省や日銀は、「それは日銀が既に保有する国債の満期に伴う借り換えだけ」と言うが、現在日銀が保有する国債の償還額は30兆円、対して今年度予算では12兆円しか買わない。つまりあと18兆円引受けできる。なのに増税を優先する。

「復興構想会議」は増税をもくろむ財務省に操られている。議長の五百旗頭(いおきべ)氏は、政治・歴史学者であり経済の専門家ではない。それが、復興のアウトラインも決まらぬうちから「増税」を言い出した。管政権が終わっても、後継候補の野田財務相や仙石副長官、与謝野経済財政相、自民党谷垣氏などみな増税路線。

菅首相が支持率回復したければ有効なカードは「増税なし」「東電解体」「脱原発」。一番容易な「脱原発」ポーズを浜岡原発停止で始めた。

かつて日本軍は「兵は一流、将校は三流」と言われたが現在も同じ。自衛隊や消防庁、現場で頑張る被災者達は素晴らしいのに、政治は三流芝居。特に政治家の資質が劣化し官僚に負けている。

官民癒着構造が国民不在の政治を作り出している。
経産省から東電に多数の天下りがある。原子力安全・保安院は経産省の植民地。天下りは官僚が二重三重に収入を得るだけでなく、監督する側と規制される側が癒着し、チェック機能が壊れる。原発事故の遠因もここにある。天下り根絶はこの観点からも必要。

日銀にも財務省から天下りがある。財務省の増税路線にとって日銀の低金利・低成長は好都合。(もちろん国民には良くない)

リーマンショック後、各国は通貨供給量を増やしたが日銀はほとんど増やしていないため円高。つねに円高圧力がある。震災後、1ドル76円という急激な円高局面があったが、投機筋にそこを狙われたのではないか?

政府の東電救済スキームでは国民負担が最大化する懸念がある。解体し、発電送電の分離が望ましい。震災の起きた3月11日に閣議決定された電力買取法案が成立すれば、発電事業に他業種からの参入が起こり、電力料金が安くなる仕組みがスタートする。

・・・

などなど、構造改革をすすめて成長の種を作り出し、既得権集団を解体して国民のための政治・行政が行われる道筋を主張しています。元官僚だけに、役人のずるい手口を知悉しています。役人が天下りしたがる当たり前の構図もさばさば書いています。

「これからの日本経済の大問題がすっきり解ける」と題したわりに、途中重複する部分も多く、やや軽量級な印象ですが、構造改革・規制緩和・公務員制度改革をすすめ、政治でも行政でも産業分野でも古い手法にしがみつく既得権益集団を排し、新しい産業を興す・・衰退を受け入れるのではなく成長する方策を探し求める、との方向性には大いに賛成です。

「もうこれ以上日本は成長しない」と諦めてしまえば、社会保障を賄うために増税し、皆で窮屈な生活に耐えていく未来しか描けません。子供たち世代にそんな未来を残すわけにはいきませんし、諦めるのは早すぎます。世界中、問題を抱えていない国などないし、他の多くの国と比べて我々は遙かに恵まれた条件を持っています。まずは、お上任せにしないで国民が情報リテラシーを磨き、正しい判断力を持ちましょう。

読むべし!



posted by 武道JAPAN at 22:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月25日

2011年の衝撃!~3.11後の世界経済から資産を守る方法・増やす方法~  菅下清廣

2年前、同著者のこの本↓を読んだ時、正直、少々「うさんくさい」と思った。


2011年まで待ちなさい!
世界経済の裏を知る!元外資系投資銀行社長が書いた!3年後にお金持ちになる資産運用


世界経済の裏を知る元外資系投資銀行社長」という肩書きのわりに、算命学などを持ち出して景気の波を予測していたからだ。ただ、国家にも人間と同様にライフサイクルがあるという主張は頷けたし、他の世界・経済情勢分析も大筋で納得できるものだったので、一定の評価はしてブログに書いた。(→こちら
日本は2011年に「鬼門通過現象」があり、国家を揺るがす大事件や大転換がある”という、時期を明確に言い切った予測も気になっていた。

・・・そして2011年、東日本大震災がやってきた。

鬼門通過は、とんでもない災厄で日本中が一致結束する転換点になる」・・まさに、これのことだったのか!?と思わせる事態だった。

で、5月28日に本書が出版された。相変わらずうさんくさいデザインの表紙だったが、これは読んでみないとイケナイ・・というわけで以下メモ。

・・・

算命学では、動乱期、教育期、経済確立期、庶民台頭期、権力期、の(およそ)50年サイクルで国家の盛衰を見る。日本はいま教育期の5年目で「鬼門通過」の年にあたる。

鬼門通過時には、国家を揺るがす大事件が起こる。50年前は安保闘争、100年前は日露戦争。これを機に、国民が一致団結して大発展する転換点となる。

ただし、「その事件」が鬼門通過現象だったかどうかは、後になって初めて判る。ポイントは、

●国民が心をひとつにして災厄を乗り越えてゆく過程が起こること
●その決起となる象徴的な出来事が起こること(典型的な例は、悲劇的な犠牲者が出る・・など)

2011年5月時点では、東日本大震災が「鬼門通過」だったとは断定できない。算命学では、奇数年に内的要因、偶数年に外的要因の鬼門通過現象が起こるという。2012年にも外的要因でなんらかの大異変がありうる。

特に、韓国・北朝鮮は2012年が教育期5年目・・つまり内的要因の鬼門通過年にあたる。日本は「朝鮮半島有事」という外的要因に巻き込まれる可能性が高い。

もうひとつの有力な外的要因は中東民主化の波。
中東諸国が民主化すれば原油供給が不安定化し、ただでさえ原発を失った日本にはエネルギー危機。インフレ圧力もかかる。
また、中国のウイグル自治区には漢民族と人種も価値観も違うイスラム教徒のウイグル族が住み、隣接する中央アジアのイスラム教国から「ジャスミン革命」の情報が入っている。ロシアにおけるチェチェンのようになる可能性もある。最悪の場合、イスラム過激派vs中国政府の衝突。

中東民主化は米国にとっても危機。世界のマネー(基軸通貨ドル)とエネルギー(石油)の支配が米国スーパーパワーの源泉。(原油価格は産油国ではなくNYの原油先物市場で決まり、米国の価格支配が及んでいる)
米国は、これまでサウジとエジプトの2大地域大国とうまくやることで中東の石油を抑えていたが、エジプトの親米政権が倒れたいま、サウジにまで民主化の波が及んだら実力行使に出て第三次湾岸戦争の可能性さえある。そうなれば一気に原油価格高騰。

ちなみに、日本の原発危機は米国のエネルギー戦略に狂いを生じさせつつある。
米国は9・11以降、少数のテロリストが致命的な攻撃を仕掛ける可能性を理解し、エネルギーを中東の石油に頼る構図を改め、分散を図りだした。
具体的には原発を推進し、エネルギーの消費地で電気を生み出す仕組みへのシフト。この流れに乗って米国で原発再開、世界中で原発建設ラッシュ、東芝とウェスティングハウス/日立とGE/三菱とアレバの提携などが進んだ。米国は国際機関を使ってウラン流通を支配するつもり。
この計画が「フクシマ」で壁に当たっている。米国特殊部隊がいちはやく駆けつけたのにも理由がある。(管理人:ただ、これで米国が簡単に原発推進をあきらめると考えてはなりません。もし日本の首相が本気で脱原発を言い始めれば、すぐ首をすげ替えられるでしょう。/追記:対米追従派筆頭の前原が「脱原発」を言い始めました。どうも米国は、日本を原発ビジネスから追い出し、後をさらう戦略かもしれません。内田樹氏が、日仏原発技術大国のうち日本が脱落すれば米国にとってタナボタ。しかも今後日本が莫大なお金をつぎ込むことになる事故処理や廃炉で稼げる・・と指摘しています。)(さらに追記:シェールガス革命が実現し、米国は膨大な量の天然ガス産出と、輸出まで可能になってきました。原発推進の機運に変化があるかもしれません)

世界にはすでに400基の原発がある。日本は廃炉技術や使用済み核燃料処分技術などを磨き、世界に貢献してはどうか?

--------
●世界の抱える3大リスク
--------
1)ユーロ危機
PIIGSをはじめ財政破綻確実な国がいくつもある。あとは「いつになるか」だけ。投資家の心理にトリガーがかかれば予告なく金融危機が起きる。
--------
2)中東民主化
石油危機、インフレ圧力。
--------
3)ジャパン・リスク
世界各国のエネルギー戦略にインパクト。
--------

世界はインフレに向かう。国連統計では2050年まで世界人口は増え続ける。人口が増えるほどには食料や資源は増えない。中東が民主化しても、新興国が発展しても、民衆は豊かで便利な生活を求めるようになる。そのためには資源が必要になる。つまりモノの値段は上がる。

ドルマネーバブルも世界をインフレに導いている。リーマンショック後、米国FRBは大量のドルをばら撒いた。おかげで金融破たんは避けられたが、あふれたドルは世界中でバブルとなり、特に新興国では深刻なインフレが昂進している。
※日本のようにデフレになると脱出が難しいため、FRBは「インフレの方が戦いやすい」と考えリスクをとった。QE2が終了したら、今後はインフレターゲットを導入するなどコントロールに入る。QE3の可能性があるとしたら2012年の大統領選に向け景気テコ入れの必要がある場合。
※ちなみに日銀はデフレ放置、リスクをとらない。これは、FRBが民間銀行を母体に生まれ、リスクをとらねばリターンはないと考えるのに対し、日銀は官僚であり、役人の体質として責任を嫌いリスクを避けるから。世界がインフレに沸く中で日本だけが切り離されてデフレ、円高、株安。

ただし、算命学、コンドラチェフサイクルという「大きな波」で見ると日本の転換点は近い。コンドラチェフサイクルでは40年上昇、20年下降の60年周期の波を見る。
例えば日本の株価は戦後株式市場が再開された1946年からバブル崩壊の1989年まで約40年あがり、その後20年下がり続けた。そろそろ大底をうって長い反転に入る。
為替は、1971年のニクソンショック以来40年間円高に向かっており、おそらく2012年6月に1ドル60〜70円をつけて、そこから5〜10年かけて160円くらいまで戻すのではないか。

--------
●震災復興からのシナリオ
--------
1)国債発行、日銀引受の場合
日本はデフレ脱却し、円安、株高の急回復!「そんな事をすれば円の信任が揺らぐ・・」云々の言説があるがまやかし。これほどの「特別な事由」がある場合は、日銀引受を誰も異常なこととは思わない。
--------
2)時限増税
復興税、連帯税、のような反対しにくい名目での増税。デフレが進行し、震災不況となる。
--------
3)赤字国債と増税のセット
これも最終的には増税なのでデフレ進行。2)より多少マシなだけで結局不況。
--------

●今後の日本のトレンド

・短期的には復興財源を何に求めるかで景気が変わる。
・民主党は決定的に国民の期待を裏切ったため、今後のあらゆる選挙で負ける。
・2011年〜2014年にかけて転換が始まり、長い上昇期に入る。

大震災を通じて判明したのは、偉い学者や政治家・官僚が決定的に役に立たないという事実。官僚が支配する中央集権の仕組みは制度疲労を起こしている。今後は、官僚に対する否定が進み、改革の機運が出る。中央集権・役人支配の対極にあるのは地方分権・現場主義。現場を知悉したリーダーが引っ張る。

反対に、震災を通じて日本国民の稀有な素晴らしさは世界に感動を与えた。震災の夜、駅で一夜を明かした人々は誰も文句を言わず、暴動も起こさず、朝になると自分の周辺のゴミを片付けて静かに帰路についた。米軍に助けられた東北の被災者たちは、自分が食べるものもロクにないのに、帰還する兵士にオニギリをさしだした。青い眼の投資家たちは、この国民は絶対に復活する!と確信して日本株を買いに向かっている。

・・・

政界に優れたリーダーが現れ、中央集権の官僚システムを改革し、震災復興とともに日本が復活する日は近い!と結ばれています。
そのためには、我々が現下の日本における問題点を理解し、本気でこれを変える意思のある政治家を応援すべきでしょう。

最終章には、世界のリスクから資産を守る方法、反対に危機をチャンスに変えて資産を増やす方法、復活に向かう日本で投資すべき具体的な銘柄なども紹介されています。

読むべし!



posted by 武道JAPAN at 19:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月19日

日本中枢の崩壊 古賀 茂明

先日、ベトナムから一時帰国した友人と会った。資源開発に携わり、これまで何ヵ国にも赴任している国際派だ。帰国すると本を買うらしいが、「今日は3時間くらい書店にいて、この2冊に絞った」と見せてくれたうちの一冊が本書だった。「日本の裏支配者が誰か教えよう」というオビが刺激的。

著者は、経産省の現役キャリア官僚。
本ブログでも取り上げた「官僚のレトリック」の著者、原英史氏(元通産省官僚)を、安倍・福田内閣時代の渡辺喜美行政改革担当大臣(現:みんなの党代表)の補佐官に推薦したのも古賀氏で、いわゆる「改革派」官僚の一人である。
公務員制度改革について、2010年秋の参議院予算委員会で参考人として発言し、当時の仙谷由人官房長官から「恫喝」を受けたことで有名になった。

・・・

日本最大の課題は公務員制度改革である。
3.11の震災でさらに露呈したが、この国の中枢は制度疲労を起こしメルトダウンしている。国家の中枢に巣食う官僚と、その官僚と癒着した政治家が、国家国民のためでなく自分たちの保身と利益のために働いている。被災者にはいつまでたっても支援が届かず、それどころか震災復興をネタに増税をたくらんでいる。

官僚は、元来は優秀な人材が国家に尽くしたいと思って入省してくる。最初から将来は天下りしようなどと考えていない。
しかし霞が関は若者の「志」を摘み取る仕組みに満ちている。役所は縦割で、身分保障があるため、一度入省すると生涯そこから出ない。もともと官僚の仕事は成果を測りにくく、深夜まで長時間(無為に)働き、組織に忠誠心を示すぐらいしか方法がない。先輩のやった事を否定するのはご法度のため、おかしいと思うことも変更できない。
年次を経るごとに優秀だった者も組織の論理に染められて人材の墓場と化し、ついに国民の利益より省益を優先するようになる。
官僚が、省益でなく国家国民のために働くシステムに変えなくてはならない。

公務員制度改革は安倍政権時にスタートしたが、官僚は猛反発し社会保険庁の自爆テロともいえる「消えた年金問題」で安倍内閣は倒れてしまった。続く福田・麻生内閣は改革に興味なく、与党と官僚が改革を潰しにかかるなか、当時の渡辺喜美行政改革担当大臣の熱意により、どうにか国家公務員法の改正が行われた。
しかし、政権交代した民主党は、はじめこそ前向きだったものの、官僚の抵抗に会うとあっさり迎合し、改革は逆流し始めた。
現在では、「政管癒着」と言われた自民党時代にさえ行われなかった、あからさまな役人の横暴がまかり通っている。民主党政権は、完全に官僚になめられている。

国家公務員法改正の要諦は以下の通りで、全体として政治(特に総理)の力を強め、本来あるべき「国民の負託を受けた政治家が決定し、官僚が手足として働く」仕組みを目指している。
-----
●国家戦略スタッフの創設 総理が任命する直属のスタッフを置き、国家戦略にかかわる意思決定を行う。この制度があれば、総理候補者は自らのスタッフをあらかじめ考え、準備することになる。

*小泉政権の成功は、経済財政諮問会議に竹中平蔵、マスコミ対策に飯島秘書官という有力なスタッフがいた事が大きい。安倍内閣では、総理が政権発足後に「スタッフを公募する」とやった。これでは遅い。
*民主党は「国家戦略室」を作ったが、活用されず放置された。

●内閣人事局の創設 官僚の人事権を内閣の下におく。現在の、一度入省したら最後まで・・ではなく、省庁横断に人事を行う。十年後はどこの省にいるか分からないとなれば、省益ばかりを考えても仕方がなくなる。

●キャリア制度の廃止●官民の人材交流●年功序列や身分保障の廃止 実績に応じた降格もありうる仕組みにする など
-----

民主党は、「政治主導」を看板にしていたが、政治主導の意味が分かっておらず、また、実際に行うだけの実力がなかった。
*そもそも民主党は何をやりたいのか?マニフェストを熟読しても、目指す国家の姿が見えない。仮に公務員制度改革が進んでも、官僚を使いこなす政治家がいなければ無意味。
*かといって自民党に戻してもダメ。自民党には、利権を分かち合う構造的な官僚との強い癒着がある。長老〜中堅には官僚と結託した守旧派が多い。

民主党が政権につくと、予算を通すため早々に妥協し、省庁の中の省庁・財務省と手を組んだ。特に仙石氏は財務省と結ぶことで絶大な権力をふるった。

財務省は見返りに、悲願である「消費税増税」を求めた。徴収した税の配分を差配できることが財務省の支配力の源泉。その税収が足りなければ財務省の権力は削がれる。(増税すればますます不況となり国民は苦しむが、財務省にとっては省益が大事)

唯一、野党時代からの姿勢を変えなかった「ミスター年金」長妻大臣には、官僚からのありとあらゆるサボタージュや無根拠な誹謗中傷が飛び出し、ついに左遷された。
特に長妻氏には、国税庁を財務省から切り離し、社保庁と併せて「歳入庁」を作る構想があった。これは合理的な改革であるが、財務省は絶対反対。国税庁は査察権を使って脱税容疑で誰でも逮捕できる。(脱税していなくても、徹底的に帳簿を調べられれば単純ミスくらいは必ずある)
この、警察や検察に匹敵する強力な武器が財務省のスーパーパワーのひとつ。決して手放さない。長妻氏は邪魔だった。

日本国は、企業でいえば会社更生法適用寸前の状態。長年にわたって赤字経営を続け、借金は膨らみ業績回復のめどは立たない。企業であれば経営陣を交代し、思い切ったリストラやボーナスカット、事業見直しをすべき。
なのに、ニッポン株式会社を経営してきたはずの官僚は責任を取らず、身分保障が与えられ、あいかわらず無駄な事業を垂れ流している。民間の苦境をよそに、お手盛りで定年の延長が議論されている。残念ながら官僚は、優秀でもなければ公正中立でもない

政府が破たんしてIMFの管理下に置かれれば、公務員リストラや無駄な補助金のカット、年金支給額の削減など断行されるかもしれないが、その前に自分たちで改革できなければ国民生活は悲劇にあう。

増税はいつか必要かもしれないが、まず全体像を定めることが大事。何にどう使い、どう未来を描くのかを示さず、「足りないので、当面10%ほど欲しい」では誰も納得しない。安易に「まず増税」ではダメ。増税に頼って現行の諸問題を解決しようとすれば30%は必要になる。デフレはますます進行し、脱出不可能な泥沼に沈み、最後は破たんする。解決は成長にしかない

人口が減少するなかでも一人あたりが豊かになる方法はある。シンガポールやルクセンブルグなど、人口規模とかかわらず一人当たりGDPは高い。ものすごい新技術の発明などなくても、例えば潰れるべき会社が潰れ、残った会社が元気になるだけで活力は変わる。補助金などで延命してはダメ。

これから中国をはじめアジア諸国は大きく成長する。地理的に近く、歴史的に長い付き合いのある日本には、提供できる資金や技術が豊富にあり、チャンスに満ちている
長時間汗水たらして働くのでは中国に勝てない。知恵を使ってアイデアを出し、効率を上げ、決断を早くすべし。

政府と官僚が主導するインフラ輸出など、はたして成功するか?最後は軍事支援という切り札もある米国政府に比べ、日本政府の情報力・交渉力など幼稚園並み。何年もかかるインフラ事業で失敗すれば、巨額の損失が国民負担に返ってくる。TPPを初めとする解放・規制緩和をすすめ、民間の活力を高めよ
農業は弱いといわれるが、ヨーロッパ諸国では農業人口1%以下の国も多いのに比して、日本では5.7%。しかも大半は兼業や老後の趣味でやっている。

復興財源に国債を発行し、償還の保障が必要というなら都内の一等地にある公務員宿舎を売り、独立行政法人の資産を原資に充てよ。

医療は産業化できる。韓国には6万人、タイには140万人の外国人が先進医療を受けるために訪れる。日本には300人。技術はあるが態勢がない。まず富裕層向けの医療サービスを開発せよ。

観光も産業化のポテンシャルが高い。重要な観光資源を守るために、建築物などもっと規制すべき。現行の規制は役人の責任逃れ=アリバイ作りに過ぎぬものが多く、本気で何か大切なものを守ろうとしていない。

社会保障の改革も必要。これからのリーダーは、国民に厳しいことも言わなくては務まらない。年金は働けない人のための保障くらいに考え、女性や高齢者が働ける環境づくりをいそげ。

・・・

と、優秀な官僚らしく、最後は具体的な提言がずらずらと並んでいます。全部は書ききれません。力と希望が湧いてきますので、ぜひ一読をお奨めします。発表を妨害された、東電の処理策も掲載されています。

本書を読めば、日本という大樹の中心に大量のシロアリが巣食い、国力を蝕んでいるのが判ります。樹を倒してしまっては元も子もないはずですが、寄生虫が自ら態度を改めて、オイシイ餌の摂取を止めることはないでしょう。志を持った政治家がこの状況を変えるべきですし、その政治家を選ぶのは国民です。

民主党がダメとか自民党に戻せばという議論ではなく、日本最大の問題・公務員改革に本気で取り組んでくれる政治家は誰か?という目線でよく吟味しましょう。(たまたま昨日、海江田経産相の「原発再稼働」発言がニュースになりましたが、原発を推進したい経産省の代弁者になっているダラシナイ政治家の見本に見えます)
本書の57〜58Pに「まともな」政治家達の名前があります。

解散がなければ、次の衆議院選挙は2013年。著者は、ここが日本のタイムリミットと言っています。

読むべし!


posted by 武道JAPAN at 01:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月21日

日本復興計画 大前研一

大前研一氏は言わずと知れた日本最強のコンサルタントですが、実はMITで原子力工学を専攻した原子炉の専門家。しかも理論だけの学者ではなく、博士号を取得したのち日立に入社して原子力プラントの設計をしていたとの事。

その実際的な知識を活かし、東日本大震災の2日後には「ビジネス・ブレークスルー 大前研一ライブ」 で早くも福島第一原発の状況を解説する映像を流し、後にYuotubeで180万回以上再生されました。

本書は、震災の2日後と1週間後に放送された「ビジネス・ブレークスルー 大前研一ライブ」 の内容を元にした第一章、二章と、日本復興のアイデアを提言する第三章からなる一冊です。
私を含め、「ビジネス・ブレークスルー」を見たり、日経BPの連載を読んでいる人には既知の内容が多いですが、大前氏は印税を一切受け取らず、売上げの12%は被災地支援に向けられる、という心意気が良いではないか・・というわけで購入。以下メモ。

・・・

・日本は国策として原子力を推進してきた。理由は二つ。
1)石油危機に懲りて、OPEC依存を脱却したかった。
2)プルトニウムを保有し90日で核武装可能な状態にしておきたい。

・原子力立国はもう終わり。今後は新規原発を引き受ける自治体はない。米国でもスリーマイルのあと30年間建設できず、技術者は霧消した。どうしてもやるなら国が直轄事業としてやるしかない。そもそも原子力事故は民間会社の賠償能力を簡単に超える。東電はいったん潰し、送電会社として再出発するのが良いのではないか。

・かように危険な原発を、実は電力会社もやりたくない。国策だから進めてきたが、そのわりに原子力安全委員会も保安院も何もしてくれずいじめるだけ。原発建設を渋る地元との折衝や接待もすべて電力会社がやってきた。最終処分場の問題も「そのうち作ってやる」と言ったまま決着していない。

・何か事故があればすぐ社長の首が飛ぶため、電力会社内部でも原発部門は肩身が狭く、結果、東電の経営陣に原発畑からあがってきた人材がいなかったことも今回の対応の拙さにつながった。

・核のゴミの最終処分場問題は早く決着すべき課題。すでに出来てしまった廃棄物はどこかに処分しなくてはならない。ロシアと平和条約を結び、シベリアに共同で処分場を設けてはどうか?

・これ以上の国債発行は危険。日本国債のメルトダウンを防止するため、復興には期間限定・復興目的に限定した消費税が良い。大いに食べて、飲んで、復興しましょう。
(管理人:政府が約束を守ると信用できるならこの案に賛成なのですが、現政府では、いつの間にか恒久税となったり、復興なのか何なのか判らない目的に流用されて、けっきょく役人の懐に入ったりしそうで、どうも信用なりません)

・復興にあたっては「元通りにする」という発想は捨て、あらたな設計図を引くべき。津波が来る場所は緑地化し、頑丈な鉄骨で公共施設など作る。港は多すぎるので集約し、漁師は高台に住んで車で港へ通勤する。

・日本復興には道州制で地方に権限委譲せよ。変人(凡人ではないという意味)首長に自由な政策を競わせ、成功した地方が全体を引っ張るべし。大阪と京都を合併し橋本知事の「本京都」、河村たかしの「中京都」など有力候補はある。

・個人のメンタリティ改革も必要。国は何にもしてくれない。頼るのをやめ、世界中どこに行っても稼げる個人が自らを復興するところから日本も変わる。

・・・

と、あまり煮詰めてあるとは言えませんが、例によって切れ味の良い口調で明快な現状認識と復興へのアイデアをつづっています。その後、Twitterで質問やアイデアを募っていますから、本書は議論のためのたたき台と位置づけてよいでしょう。

原発推進の動機のひとつが、短期間で核武装可能な力を持っておくため、とスッパリ言い切っちゃってるのも痛快です。それはそうなんだけどね。何の遠慮もなく言ってる感じが良いです。

未来を考える土台は、正しい現状認識からのみ生まれる。

政府は、正しい情報を国民に与えるべきである。

読むべし!

知の衰退から如何に脱出するか 大前研一
マネー力 大前研一


posted by 武道JAPAN at 19:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月14日

日本はなぜ世界で一番人気があるのか 竹田恒泰

まずこのタイトルがうまいなあ、と思います。
おそらく多くの人は「えっ、日本って世界で一番人気があるの?」と思うでしょう。そこが判っていてタイトルを選んでいる。じっさい、本を開くとまず冒頭に「米国人も韓国人も自国が好きですが、どうも日本人は日本のことを愛せていないし良く知らないようです」とあります。本当にそのようですね。

著者の竹田さんは、旧皇族・竹田家に生まれた明治天皇の玄孫とのこと。慶應義塾大学法学部卒。2006年「語られなかった皇族たちの真実」で第15回山本七平賞受賞。

本書では、まず英国BBCが行った調査で、日本が「世界に良い影響を与えている国」に3年連続で1位となった事実を紹介。日本に否定的なのは世界中で中国・韓国くらいで、インドネシアやフィリピンなどアジアの国々はきわめて親日的。特に台湾は「自国より日本が好き」という人が多い。(管理人:今回の大震災でも、一番多額の義援金を集めて送ってくれたのは台湾でしたね)

そこから、日本の文化・国柄・天皇など、幅広く日本の魅力を紹介します。
新書なので、幅が広いぶん掘り下げは浅いですし、少々強引に日本礼賛を持ってきている部分もありますが、まずは入門用として中高生にも読んでもらいたい一冊です。巻末に北野武さんとの対談もあります。以下メモ。

・・・

・ものづくりの匠は伝統工芸から建築物まで世界で群を抜いている。イラクやカンボジアで「突然走り心地が良くなったな」と思うと日本のODAで作った高速道路だったり、ウズベキスタンで震災に唯一倒れなかった建物が、日本のシベリア抑留者によって建てられたオペラ劇場だったり・・など数知れない事例がある。

・東京は世界一の美食都市。3つ星レストランはパリより多い。飲食店の数は12倍もある。これは日本料理がきわめて専門分化し(寿司、天ぷら、鍋、うなぎ、しゃぶしゃぶ、ヤキトリ等)多彩であるため。バリエーションと専門性は、どこの国も追随できないレベル。

・ジダンなど多くの一流選手が「キャプテン翼」の影響でサッカーを始めた。主人公の翼が物語の中でFCバルセロナに所属するとライバルのレアル・マドリード幹部が「なんで翼をうちに入れないんだ!」と激怒。
イタリアバレー界のエース、ピッチニーニは「アタックNo.1」の鮎原こずえと戦うのが夢だった。

・日本はひとつの王朝(天皇家)が神話から連綿と連続する世界最長の歴史ある国。政治体制は時代とともに変更されたが国体は変わっていない。天皇は制度ではなく「はなからある(北野武さん)」存在であり、天皇がなくなれば、それは日本ではない。

・日本には宗教戦争や被征服民に対する価値観の押しつけがなく信教の自由が許されていた。出雲の国譲り神話にその原型が記録されている。(宗教戦争は世界中で終わりのない争いを生んでいる愚行)

・日本は、内戦や他民族の征服によって滅びることなく、国と文化を途切れず保持したため、古代の人々の価値観が残っており、それは日常言葉の中にも発見できる。
「いただきます」は「(食物となる動植物の)命を頂きます」で、料理人に対する感謝の言葉ではない。(「ご馳走様」は人に向けた言葉)
「もったいない」は、他国の語彙にその概念すらない。

・古代の価値や文化を保持した民族は、アメリカ先住民やヨーロッパのケルト、オーストラリアのアボリジニなどあったが、固有の国土・国家・言語を保持し、1億人以上の人口を保ったのは日本だけになってしまった。

・ニッポン人には日本が足りない。敗戦と共に占領軍の戦略によって過去の日本文明を否定し捨ててきたが、環境と調和して生きるすべを確立しなくてはならない21世紀にむけて、日本文明再興(ジャパン・ルネッサンス)の時がきた。

・・・

20年の停滞に落ち込み、自信をなくして忘れられたかのような日本に、東日本大震災によって世界の耳目が集まりました。
そこで多くの人々が驚愕したのは、大震災の中でも冷静に秩序を守り、互いに助け合う市民の姿でした。

コンビニで棚から落ちた商品を元に戻し、きちんとレジに並ぶ人々・通行の邪魔にならぬよう、端に寄って駅の階段に座り込むサラリーマン・徒歩で帰宅する人々に「トイレ有ります」と手書きの看板を出す商店・津波のせまる中で市民に警報を発し続ける市の職員・入院患者を屋上に搬送し、ともに留まった医師・まず中国人研修生を避難させた後で家族を探しに戻り津波に飲み込まれた専務・放射能の危険をかえりみず原発で戦っている人々のためにと温泉を再開した民宿・・
来日したカナダ人から「定年間際に自ら志願して原発に向かった男は無事でいるのか」と聞かれた時には、そんな話が外国にまで伝わっているのかと驚きました。

暴動や略奪が起きないことを驚きとともに報道する海外メディアがありますが、日本人のセンスからすれば火事場泥棒ほど恥ずべき卑しい行為はない。われわれ日本人にとっては当たり前の事柄が日本以外では稀有なことのようです。
ここは「世界最高の一般人がいる国」と言ってよいのでしょう。(→「私は日本のここが好き! ― 外国人54人が語る 加藤恭子(編集)」

その一方で、原発事故の対応と情報開示に関する政府・東電の不手際によってじょじょに不信感が生まれ、放射性物質を海に放出したことで日本への信頼は大きく毀損しました。残念でなりません。。今後は、和の精神を大切にする日本らしさを堂々と誇りつつも、危急の際のリーダーシップや、「想定外」を限りなくゼロに縮めるシミュレーション力、考え抜く力を磨くべきです。
そのためには、官僚的なルールの中に何もかも管理するのではなく、型にはまらぬ多様な異能者が活躍できる環境が望まれます。例えば、一教科のみで受験できる大学があれば、特定方面に突出した才能が育てられるでしょうし、中学・高校レベルからディベートを授業に取り入れれば、徹底的に考え議論する習慣が身に付くのではないでしょうか?いずれも、ほとんどコストを掛けずにできることばかりです。

・・・

3・11震災以降、なんども思ったのは「この国でよかった」という事です。
この国だから人々が助け合う。レストランにもコンビニにも募金箱が置かれ、赤十字には莫大な義援金が集まる。この国では、道路が、鉄道が、工場が、全力で復旧される。この国を、誰も憎んでいないから世界中が支援の手を向けてくれる。この国には、真の使命感を持って働いてくれる自衛隊がいる。そして国民に語りかけてくださる天皇がいる。

あなたも、もっと日本を好きになるといい。

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 18:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月02日

原子炉時限爆弾 広瀬 隆

私事ではあるが、この春は子供たちの高校・大学ダブル受験だった。で、その機に横浜から郷里の愛知県に転居し、自分のためには都内に仕事用の一部屋を借りることとした。
経験して初めて知ったが、他府県での高校受験については中学にも学習塾にもあまりサポート体制がない。けっきょく親があれこれ手配するしかなく、普通以上に手間の掛かるダブル受験+ダブル転居でテンヤワンヤしている最中に東日本大震災がきて、もう決定的に何もかも普通にはすすまなくなった。なんとか予定通り引越しはしたものの、新しい生活のペースをつかんだのは4月も終わる頃で、ブログの更新は大幅に滞った次第である。

さて、そんな中で気になるのは、続く余震と原発問題・・というわけで本書を手に取った。

著者の広瀬隆氏は「東京に原発を!」以来、一貫して反原発を主張してきた。ロスチャイルド財閥の歴史を解いた「赤い盾」(読んだが、とてもレビューできないので本ブログには未掲載)や、日本の財閥系図を明かす「持丸長者」など、膨大な資料から事実を取り出すことで、見えなかった世界を可視化する労作が多い。本書も、多数の資料や図版つきで丹念に我々が置かれた状況を明らかにしてくれます。以下メモ。

・・・

・地球は生きており、内部のマントル対流によって地面を乗せたプレートが動いている。世界中で地震が発生するのは、主要なプレートの境目である。

・日本列島は、ユーラシア、フィリピン海、北米、太平洋の4つのプレートが重なり合う場所にあり定期的な地震の発生は既定事項。

・静岡県御前崎の浜岡原発は、世界で唯一、3つのプレートが重なり合うポイントの真上に建てられている。

・巨大な「東海地震」と、セットで発生する「南海地震」は100〜250年周期で定期的に発生している。直近では、1944年の東南海地震と、1946年の昭和南海地震。東海地震が、やがて来ることを疑う人は電力会社にもいない。

・日本の地層は、激しいプレート活動によって海底から隆起したり沈んだりしながら造成された。
6500万〜4500万年前ごろ日本を縦に走る大断層「中央構造線」ができたが、この頃はまだ大陸の一部で、日本海もできていない。ようやく列島らしい姿になったのが200万〜80万年前頃で、大陸から完全に離れたのが1万年前。もちろん、日本列島は現在も激しく動いている。
しかも縄文時代(3000年前)には現在より海面が高く、いま原発が建っている海岸沿いはほとんどが海の中だった。日本には真に強固な地盤というものは存在しない。ちなみに、ヨーロッパの地層は5〜20億年前のもの。

・原発は、原子炉で発生した熱で蒸気を作りタービンを回す。蒸気は冷却され、原子炉建屋に戻って原子炉を冷却する。つまり構造上、原子炉とタービン間には配管が必要。原子炉そのものは頑丈に作ってあるが、配管・配電が巨大地震の揺れに耐えられるとは思えない。配管が切れれば放射能が漏れるし、配電が途絶えれば制御室は機能しなくなる。(いずれも、残念なことに今回の震災で実証済み)

・日本では米国の後押しとエネルギー資源の少なさという国内事情があいまって、国策として原発を推進した(やがて利権のカタマリとなった)。耐震基準や地震・津波の想定は、「原発をいかに作るか」が前提であり、真に「安全」を目指したものではない。

・通常、原子炉ではウランを燃やす。高速増殖炉が成功しなければプルトニウムの使い道はないが、世界中で高速増殖炉は失敗した。日本でも「もんじゅ」がナトリウム火災で失敗した。

・六ヶ所村の再処理工場(使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、高レベル放射性廃棄物をガラス固化する)は、溶融炉が詰まってしまい稼動不能となった。ガラス固化できない高レベル放射性廃液が240立方メートルも溜まってしまっている。(ちなみに、これが1立方メートルでも漏れれば、東北地方北部と北海道南部の住民は避難が必要)。
また、使用済み核燃料(長期間の保管と冷却が必要)を保管しておくプールを維持しなくてはならないため閉鎖できない。

・使用済み燃料を保管する日本中のプールはいっぱいで、原発ではサイト内のプールに一時保管しているが、どのサイトでも10年以内にプールは受け入れ限度に達し、原発の運転続行は不能になる。

・再処理工場が稼動していた間に(もし日本が核武装する意図がないのであれば)使い道のないプルトニウムが大量にできた(※プルトニウムを使う高速増殖炉は失敗している)。
それでも用途があるように見せかけるため、ウランと混ぜてMOX燃料を作り、ウラン用の原子炉で燃やすプルサーマルが行われているが、使用済み燃料の放射能を飛躍的に高めるデメリットに比して、燃料の節約や再利用というメリットは(政府の宣伝に反して)ないに等しい。

・再処理も高速増殖炉も失敗しているが、つじつま合わせで場当たり的にメリットのないプルサーマルへ邁進している。14年も死んでいた「もんじゅ」も無理やり再稼動した。

・地下300mに高濃度放射性廃棄物を埋めるという最終処分場は、受け入れる自治体がなく(当たり前だ)いまだ決まっていない。

・日本の原子力行政は袋小路に落ち込んでいうえに、待ってくれない大地震は、ほぼ100%やってくる。日本列島に人が住めなくなる可能性すら充分にある。

・・・

本書で初めて知って最大限にげんなりした事は、2010年6月に福島第一原発で電源喪失事故が起こっていた事実でした(当時ワールドカップ一色だったマスコミはどこも報道していない)。

外部からの電源が4つとも途絶え、原子炉は緊急停止したものの内部では沸騰が続いて冷却水が減り、炉心溶融寸前で停まったとの事。しかも事故原因は特定できていない。
また、2007年中越地震の際、柏崎刈羽原発で外部電源を取り入れる変圧器が火災を起こし、炉心は停止したものの、その後の冷却ができずに、かろうじて生きていた電源で危機回避したとの事(しかし非常用ディーゼル発電機の燃料まわりが地震で陥没した)。

これだけの事態を経験していながら、東日本大震災後の対応を見ると、教訓が活かされていない実態が理解できます。
安易に東京電力を批判する気はありませんし、今も現場で必死に事態収拾に当たっている人々には感謝と応援の気持ちを持っていますが、不測の事態をトコトン想定しきる思考力と、危急の際のリーダーシップが、どうも日本人は弱いのではないか?科学技術の問題ではなく、危機管理能力の問題で、これらの人々は原発を運転する水準ではないのでは?と疑われます。

また、静岡の浜岡原発を地図で見れば、半径20k圏内を東名高速道路と東海道新幹線が走っています。非常時には東京〜名古屋間の移動は途絶するのではないでしょうか?浜岡原発はまず停めるべきと思います。
(追記:その後、管首相の「英断」で浜岡原発は停められましたが、これは横須賀基地の放射能汚染を危惧した米軍から要請があったため、という説があります)

地球と地震の仕組みから原子力発電のイロハ、日本の原子力行政や我々の置かれた状況まで幅広く把握できる一冊です。今読むべきでしょう。

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 17:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。