2017年07月25日

怒らない技術 嶋津良智

実は嶋津さんとは何度か会ったことがある。
本人を知っているから尚更かもしれないが、文中で「自分は小心でビビリ」だとか「いつまでたっても自信がない」などと(傍目には非の打ち所ない成功者であるにも関わらず)弱い部分も開示しているのが実に好印象で、正直なのは良いことだなと思う。

本書の内容は、いくらか心の仕組みについて学んだ人なら知っていることばかりであるが、それが意味するところはつまり「ビジネスパーソンとしては、この程度の基本的なニンゲンの構造は知っていましょうね」という事だと思います。以下メモ。
・・・

●3つのルール
・命と時間を大切にする(怒っても結果は同じ・怒るだけ時間の無駄)
・人生は思い通りにいかない(と受け入れる=イライラしない)
・苦悩と喜びはパッケージ(苦労や失敗で磨かれ、それが成功の基礎になる)

●出来事に意味はない
自分の前に起こる出来事には意味はついていない。意味をつけるのはそれを受け取る自分。

出来事はただ起こる。雨が降るのに良いも悪いも意味はない。しかし、雨で営業に出かけるのが嫌だなと思うか、他の営業が出渋る今がチャンスだと考えるかは自分次第である。受け止め方・考え方は選択できる → 受け止め方次第で意味は180°変わり、怒りにも喜びにもなる。
つまり、感情も出来事の受け止め方、その選択次第でコントロールできる。多くの成功者は、感情コントロールの達人である。

●人生の成果も選択次第
上記のようなモノゴトの見方・考え方が根っこ/知識・技術・スキルが幹/行動・態度・姿勢が枝葉/果実が成果・結果

※考え方が行動を決め、行動が結果を導くのは理解できますが、考え方の根っこには、その人の「在りよう」が存在していると思います。そのためか、著者も、「何のために生きるか、哲学が重要」としています。

●人を動かそうとしない
他人は変えられない。動いてほしければ、人が動きたくなるような環境を作る。

●他人の責任にしない
日々の多くの選択の結果がいまの自分である。他責にしない。

●怒り、イライラと無縁になる25の習慣(面白かったものを抜粋)
・迷ったら決断しない 無理にしなくても、本当に大切なことはいずれ「よし」と思う時が来る
・目標は低く 達成できる事を積み重ねる。成功体験の積み重ねがやる気と自信を生む。
・三合主義 助け合い、分かち合い、譲り合い
・ささいな事で自分を褒める

●怒り、イライラが消える11の特効薬(抜粋)
・これは神様が自分を試しているに違いない(と考える)
・これはちょうどよい!と言ってみる(「解決社長」ゲームと同じ)
・感情のコントロールが難しい時にはちょっと逃げる。気分を変える。席を外す。散歩する。
・不愉快はマメに吐き出す。溜めない。
・まあいいか!と(諦めるのではなく)見極める。

・・・

まずまず悪くない内容です。出来事に意味はなく、その解釈によって初めて意味付けがなされ、それが怒りやイライラを生んでいるという構造も納得できます。

ただ、解釈を変えることによって意味付け〜感情を変えようとする手法には限界も感じます。意味の付いていない出来事=事実を、なぜ人間は解釈(という事実ではないフィルター)に掛けてしまうのか?そのあたりの心理の深みまでは掘り下げていません。
本来は、「最初から解釈自体が起こらない」「ただ事実とのみ在リのままに居る」状態まで持ってゆければ、怒り・イライラを含むあらゆる悩みから開放されると思うのですが、それは書物、しかも新書で語れる内容ではないでしょうから、ビジネスパーソン向け実用版「怒らない技術」としては、ひとまずこれで良いでしょう。

読むべし!




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2017年06月25日

GRIT(グリット) ー やり抜く力 アンジェラ・ダックワース

成功に必要なのは才能だけでなく努力と継続だ。

「継続は力なり」「石の上にも三年」〜日本ではこのような表現で伝わっている教えです。本書では、その力を「GRIT」=やり抜く力、と呼びます。
著者は、米国で「天才賞」と呼ばれるマッカーサー賞を受賞したペンシルベニア大学の心理学教授とのこと。以下メモ。
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●才能か努力か
多くの人は努力より才能の方を重視し、神格化さえしている。しかし、才能があっても努力しなければスキルは身につかず、さらに身につけたスキルを使って粘り強く継続しなければ成功は難しい。

ものすごく頑張る、いま必死にやる・・はGRITではない。
粘り強く続ける、明日も継続する、失敗してもまたトライするのがGRIT。

●継続するには動機の持続性が大事
そのためには哲学(世界観と言っても良い)が必要・・自分にとっての究極の関心事・今日やることの上位に、そのさらに上位に位置する最上位の目標は何か?
遠い目標に連なる手前の目標が、最終目的を支えるピラミッド構造だと良い。(究極の目標と、今日の目標がリンクしていないような構造は望ましくない)

例えば、歴史に残る大聖堂を作って神の栄光を讃えるためレンガを積むのか、明日の食料を買うために賃仕事としてレンガを積むのか。

●成功者の条件
・遠くの目標が視野に入っている
・いったん取り組んだことを簡単にやめない、目新しいことに気まぐれに飛びつかない
・粘り強く、根気がある

メガ成功者は、他者・利他・人々のため・世界のため・この仕事は意義があるか・役に立っているか?を最終目標にしている。

●GRITを育てる
・その人が育つ時代の社会的、文化的背景も影響する(家庭環境も?)
・遺伝と経験の両方が影響するが、GRITに影響する遺伝子は複数ある
・年齢とともに成熟するとGRITが強くなる傾向がある
・興味が大事で、好きになれることは継続できる(親は子供の興味に注目すべき)
・練習を続けること、目的を持つこと、希望を持つこと

●子育て・人材育成
・子供には高い期待と関心、併せて惜しみない支援を与えること
・大変だが楽しい、やりがいのある事を経験させる(大変だけ、楽しいだけ、はダメ)
・最低でも2年以上、何らかの「課外活動」をさせる
・偉大なチーム、GRITの強い集団に加わる(やがて集団の価値観が個人の信念になる)

GRITは人生に最も大切なことではない。履歴書に書く長所より追悼文に書く長所(善良さ、道徳心、思いやりなど)を伸ばすべき。ただし、GRITの強い人ほど、人生における幸福感や健康に恵まれている場合が多い。
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努力と継続。

「7つの習慣」を読んだ時にも思ったのですが、日本ではわりと当たり前・・ここまで言葉化、理論化、科学的エビデンス付きになっていないけど昔からみんな知っている事ではないのか。
むろん、知っていることと出来ていること(更には「なっている」こと)には遥かな距離があるので、本書のように「やり抜く力」の構成要素や育て方まで体系的にまとめて貰えたのはありがたいと思います。

特に感銘をうけたのは第4章で、努力を継続するための意味付け=哲学が大事としている部分です。
「世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう:奥山真司著」でも、世界観・価値観がトップにあって、それを実現するために戦略→戦術→技術が階層構造で存在すると説いていますが、GRITな人であるためにも、やはり頂点に「究極の目標」を置くべきとしています。
人は、人生のいずれかの時点で「自分にとっての究極の目標は何か」「自分にとっての最高の価値は何か」について、答えを出しておくべきであると思います。

読むべし!



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2017年06月16日

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」 草薙龍瞬

著者は仏教者であるが、特定の宗派に属さない独立派≠フ出家僧・・とのことで、書籍や講演を通じ、宗教としてではなく「現実の問題解決に役立つ合理的な方法」として仏教を紹介している。

本書は、人生における苦悩の原因が「心の無駄な反応」から起こる事を示し、反応しない方法・合理的な考え方を身に着けることで、苦痛から解放された有意義な生き方ができると説きます。以下メモ。

・・・
●認める・正しく理解する

人生に苦悩はある。無くそうとしないで「ある」と認めてしまう。そのうえで、苦を減らす・無くす方法を実践する。

苦悩の正体は、心の自動的な反応である。心は様々な欲求(食欲・性欲・睡眠欲・・・承認欲求など)を求め、できごとに常に勝手に反応し、無用なストレスや「妄想」を生産しつづける。したがって、心の無駄な反応を消すことができれば、苦悩は減ってゆく。

そのために、心の仕組みを理解し、反応せず、正しく合理的な考え方をする。例えば、次のような方法がある。

1)ラベリング
心の状態を言葉で言う。言うことで曖昧な心の状態を明確化する。正しく理解する。
例:わたしは怒っているな。わたしは悲しいな。これは承認欲求が満たされない不満だな・・など。そして、例えば承認欲求だったら「他人に承認されたとして、それに何の意味があるのか?」と考えてみる。

2)身体感覚に目を向ける
身体の快適な状態を作る、意識して呼吸する、一歩一歩確認しながら散歩するなど・・・苦悩の正体は、心の反応が作り出す妄想(実体のないもの)なので、身体という実体のあるものに意識を向けると反応が消えてゆく。

3)分類する
反応は、概ね次の3つに分けられる。ラベリングと似た手法。
・貪欲(「とんよく」欲しい欲しいという貪る心。手に入れたい、失いたくない・・・しかし、けして望むようにはいかない=「苦」のもと)
・怒り(思い通りにならない、期待通りに行かない物事への反応・・・しかし、そもそも人生は思い通りにならない=「苦」のもと ※悲しみも怒りの一種)
・妄想(人と比較して優れている・劣っているなどと考える評価・判断など)

●判断しない
良し悪し、好き嫌いを考えない。ありのままに見る、受け入れる。
1)あ、いま判断した、と気づく
2)自分は自分と考える
3)素直になる

他人と比較しない。
欲求のうちで、特に承認(認められたい、自分もひとかどのものであると自負したい)欲求は強く、人と競ったり、自己否定に走ったり、さまざまな苦悩の種になる。
比較も判断であり妄想。自分は自分。自分のものごとに集中する。

他人と比べるのではなく、自分の道を見つけ、自分のものごとに集中して、納得と満足のある人生を生きるべき。勝ち負けではなく、いかに貢献できるか(お役に立てればよし、の心)に注力すべき。

どんなときも自分を否定しない。「わたしはわたしを肯定する」

●反応の源泉を断つ
困った人とは縁を切る、距離を置く。

●自分の道を歩く
そのために道の基礎・自分の哲学を持つ。慈悲喜捨で生きる。
慈:人にやさしくする
悲:他者の悲しみをともに悲しみ
喜:他者の喜びをともに喜ぶ
捨:無駄な反応を捨てる

今できることをする・集中する。
人生を信頼し、最高の納得をめざす。
・・・

他人と優劣を比べたり、欲望に反応して苦しむ生き方を手放し、自分のすべきこと、今できることに集中して、満足や納得のある人生を目指しましょう、と説きます。たしかに、仏事だの法要だのとは違う、生活に根ざした、より良い人生を生きるための、きわめて実用的で技術的な内容です。

様々な哲学書や、あるいはビジネス書でも、「世のため」「人のため」「貢献」を最終目標に据えるものは多いです。人間は、自分の欲求を満たすためだけに生きても、人生に於ける高度な意義や満足は得られないのかもしれません。
じっさい、年齢とともに肉体の活動が衰えてくると、自分の欲求自体が減ってきますし、その段階で生きる意味や情熱を維持するためには、最終目的を自分を超えた場所に置くべきだというのは納得します。まあそれも、究極の「自己満足」だと言えるかもしれませんが。

良書です。こころのエクササイズができます。

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2012年08月24日

世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう 奥山真司

著者は、地政学・戦略学の専門家。英国で地政学を学び、日本に批判地政学そのものを紹介した研究者の一人。
当然ながら軍事・戦略・地政学関係の著作が多いですが、本書はそれを「個人の人生戦略」に落とし込むかたちで書かれた異色作です。以下メモ。

・・・
欧米の社会は牧畜や奴隷制の経験から、管理(マネージメント)ノウハウの蓄積が厚く、発想として、状況を変えよう、環境の方をコントロールしようとする。日本人は状況を受け入れよう、環境に何とか合わせようとする。(例:打ち水や葦簾で夏の暑さを凌ぐ工夫をする vs 気温自体をコントロールしようとしてエアコンを発明する)

その結果、欧米は自分が常に優位に立てるように枠組みを構築しルールを変更するのに長けている。日本はその視点がないので、変更されたルールの枠内で努力するが、勝ちそうになるとまたルールを変更される。
(管理人:ルールを作り出す側に回らないとダメ。特に今後は国際社会の中での枠組みの整備に関与すべき。ただしそれには戦略が要る。また、どんな世界を構築すべきかの世界観や哲学が要る。日本人にはこれが昔から足りない。)

「戦略」には階層がある。日本人が得意な「技術」は、戦略学では最下層。その上に戦術や戦略、国家の意思である政策などがあり、最上位に置かれるのは「世界観」。上位ほど抽象度が上がり、「目の前のこと」から「遠い目標」に向かう。

欧米は自国(自分)の世界観・アイデンティティーを確立してから、それを実現(表現)するために戦略を練る。最上位から落としてくるため強い。
企業であれば社長の人格やビジョンが成否を決める。(Appleが世界最高の企業になったのもS.ジョブスの卓越したビジョンによるところが大きい)

世界観という最上位に位置する概念がなく、状況に対応するだけの「戦術」で応じていると勝てない。

世界観は、ビジョンやミッションと言い換えても良い。国家で言えば神話であり、個人であれば「私は何者か」というアイデンティティー。
これは個人の思想・宗教観・歴史観からでてくる抽象的な思考。延々と神学論争で戦ってきた欧米人は強い。個人の中にそれを培うことなく「お上の言うとおり」でやってきた日本人には核となるアイデンティティや歴史観がなく脆弱。日本人でもクリスチャンは例外的に強い。

このせいか、日本人は目標を立てるのがヘタ。立てても「技術」レベル(TOEICで000点を目指すなど)で、それが達成されてもまた次の目標が必要になるばかりか、環境が変われば達成したものが無効化する。
例えばTOEICに代わるもっと別の仕組みを作るとか、自分が英語を話すのではなく英語の達者な人間を雇ってビジネスを回す・・というような「そもそも論」の発想がない。もっと自分の仕事やポジションの戦略階層を上げるべきで、そのためには今まで培ってきた「武器」を一旦捨ててしまう発想が必要。
例えば技術という(新興国が追い付きやすい)武器を必死に磨くのではなく、「ブランド化」という一段上のステージに上がるなど。

ただし日本には高度に抽象化された世界観を表現する方法論もある。俳句など、きわめて短い言葉の中に情景や世界を映し出している。日本人に抽象化の能力がないわけではない。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」の「死生観」は、「世界観」を超えるさらに上位の概念かもしれない。「死ぬこと」「死に方」を定めて、そこから落としてきた戦略や戦術は最強の方法論になりうる。

勝利に到達するためには2つの戦略がある。
・順次戦略 (目標とイメージ) 目標を定めイメージを明確にし、目標までの距離や時間を見える化して漸次進める。すごろく式。
・累積戦略 (環境と習慣) 見えない目標に向かって日々努力を継続する。ある時点で創発的、突破的な効果が劇的に出現する。臨界点に達すると一気にコマがひっくり返るオセロ式。

順次戦略は、最近の成功本などに多い「目標を明確にして紙に書く」「多くの人に公言する」など「見える化」する手法。
累積戦略は、いわゆる「陰徳を積む」行為。見えないところで日々継続する。祈りでも、掃除でも、ボランティアでも良い。本人にとっての宗教行為に近いもの。
どちらもバランスよく並行して進めることが肝要。ただし、まず累積型で地力や自信を培った人が順次戦略を取った方が高い効果が出る。

冷静であれ、柔軟であれ、選択肢を多く持て。
・・・

「日本には技術がある」「技術を生かしたものづくりを」と言われます。
もちろんそれは結構なことなのですが、「戦略の階層」という視点から見ると、それだけでは勝てないのが明確です。卑近な例では、世界最初の携帯音楽プレーヤーだったウォークマンも、音楽流通の仕組み自体を変えるiPhoneの戦略に敗れました。
その差は、突き詰めると「世界観」「哲学」に行き着く・・ これは一朝一夕で解決しない問題です。

日本を日本たらしめる原理を再発見した佐藤優氏の「日本国家の神髄」が参考になると思われます。

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2011年01月10日

哲学者とオオカミ ― 愛・死・幸福についてのレッスン マーク・ローランズ

「最も大切なあなたとは、幸運が尽きてしまった時に残されたあなただ」

本書は、大学で哲学の教鞭をとる著者が、仔オオカミを手に入れ、片時も離れず暮らし、やがて死を看取るまでの、およそ10年間の学びを記したものです。

哲学者の書いた本ではありますが、けして難解ではありません。狼のブレニンと過ごした日々の多彩なエピソードを交え、平易な語り口でつづります。ただし内容は深いです。

著者は、「オオカミ」と兄弟のように暮らすうち、対比によって「ニンゲン」とはどのような存在か?を考察する事になります。そして、人間の持つ、ある傾向のメタファーとして「サル」を見出しますが、この「サル」は、まことにもって不愉快な生き物です。以下メモ。

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サルは世界を自分の役に立つものかどうかで測る。世界を資源、つまり自分の目的の為に使うことのできるものの集合とみなす。モノだけでなく他者も、ついには自分自身の価値さえもその尺度で見る。

サルは他者を観察し、利用する機会を狙い、騙し、欺き、弱みを見つけ出して攻撃する。サルには友達はおらず、共謀者がいる。この謀略性ゆえに、サルは高い知能を発達させた。陰謀と騙しは、類人猿やその他のサルが持つ社会的知能の核をなしている。類人猿の王、ホモ・サピエンスにおいて、このような形の知能は最高点に達した。

何らかの理由で、オオカミはこの道を進まなかった。オオカミの群れには陰謀や騙しはほとんどない。人間が狼(野生)に美しさを見出すのは、サルになる以前に持っていた純粋性を垣間見るからではないか。

全ての動物が弱いものを攻撃するが、人間だけが弱さをつくりだす。オオカミをイヌに、バッファローをウシに変える。私たちは物を弱くして、使えるようにする。

オオカミは瞬間という時間を強く捉えるが、サルは瞬間を透かして前後につづく一本の道として時間を見る。私たちが今と見なすものは、すべて過去からの投影と未来への予測からできている。つまり私たちに今という時間はなく、今という瞬間をそれ自体として楽しむ事はない。

人生に意味はないが価値を持つ事はできる。幸せは感情ではなく存在のあり方だ。

・・・

私たちはおそらく、「今」という時間に100%意識をフォーカスできていない、と思います。
いま目の前に見ているものごとも、過去の記憶からの影響を受けた評価や判断が混じっていて、本当にただただ「あるまま」を見てはいない。いま目の前にいる人と、真に人生を分かち合っているという体験は滅多にない。

合気道の昇段審査に、多人数掛けというものがあります。
数人が一人へ掛かるのを次々に投げてゆくのですが、数分もつづければ息も切れ、手足も重く、それでも休みなく掛かってくるのを投げて投げて投げ続けるうち、なにかを突破する瞬間がきます。けして楽しくもなく、幸せな気分でもないのですが、違う時間の中に生きているような、ただ目の前にあることと一体になって生きているような瞬間です。このような特別な時間にのみ、ニンゲンは「今」を100%生きられるのかもしれません。

「私たちの誰もが、オオカミ的というよりサル的であると思う。
サルの知恵はあなたを裏切り、サルの幸運は尽き果てるはずだ。そうなってやっと、人生にとって一番大切なことをあなたは発見するだろう。そしてこれをもたらしたものは、策略や智恵や幸運ではない。」


まさに、「愛・死・幸福についてのレッスン」という副題の意味を考えさせてくれる一文です。

「人生にとって重要なのは、これらがあなたを見捨ててしまった後に残るものなのだ。一番大切なあなたというのは、策略をめぐらせ、自分の狡猾さに喜ぶあなたではなく、策略がうまくいかず、狡猾さがあなたを見捨てた後に残るあなただ。
最も大切なあなたというのは、自分の好運に乗っているときのあなたではなく、幸運が尽きてしまったときに残されたあなただ。」


私たちは、人生の意義を「幸せになること」と考えますが、「幸せ」とは、あたたかで喜ばしい感情や気分とは限らず、「命をどのように使ったか」「人生という時間と、どれほど本当に一緒にいたか」なのかもしれません。

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2010年10月02日

テルマエ・ロマエ ヤマザキマリ

今回はマンガなど取り上げてみましょうか。

作者のヤマザキさんは14歳のときドイツ・フランスを一人で旅し、17歳から11年間イタリアに住んでイタリア人男性と結婚。その後、中東やポルトガルを経て現在はシカゴ在住。

本書は、2010年マンガ大賞と手塚治虫文化賞を同時受賞。タイトルの「テルマエ・ロマエ」とは、ローマの風呂という意味だそうです。

物語の舞台はハドリアヌス帝時代の古代ローマ。主人公は浴場の設計技師ルシウス。生真面目で実直で、融通が利かないほどに誠実で、簡単に信念を曲げない、実によい男です。

そんなルシウスですが、古代ローマの浴場と現代日本の風呂(または温泉・銭湯など)をタイムスリップしつつ行き来するという奇妙な能力を身に付けてしまいます。
いや、本人の意思と無関係にそれは起こるので、能力とは言えません。風呂限定での時空間ワープが、彼の身にたびたび起こる・・そして、新しい浴場の設計に悩むルシウスは、現代日本の風呂文化に驚愕し、感銘を受け、新たな創作のヒントを学んでローマに帰る・・というのが物語の基本設定です。

大爆笑や大感動はないのですが、なんだか可笑しく楽しい。その面白さのポイントは、次の二点に絞られるように思います。

1)我々にとってはあまりに日常的な風景が、古代のローマ人という「外」の視点から描かれることで見えてくるおかしさ。「はあ〜そういうところに驚くかね。なるほど〜」みたいな。
これはおそらく、作者の海外在住暦の賜物でしょう。

2)偉大なるローマ文明に誇りを持つルシウスが、我らが日本文明・温泉文化に素直に感動し賞賛してくれる嬉しさ。
銭湯で飲んだフルーツ牛乳に「美味いッ!・・この世のものなのか!?」と驚き、露天風呂に入って「このような風光明媚な場所に浴場を設けるとは・・ギリシャ人にも劣らぬ美的感覚・・」と感心したり。。日本人としては「そ、そうかな?判ってくれるかな(嬉)」と、くすぐられる気分になります。

湯船にゆったり浸かる・・という習慣は、他国にあまり見かけないもので、そもそも水が豊富でなければ望むべくもない。日本のように豊かな森や水に恵まれた環境と、ケガレをきらい身辺をつねに清め払う神道的な感性がなければ育たなかった文化なのでしょう。
古代ローマと日本に、おもいがけない共通性があったわけですが、その後、ヨーロッパではキリスト教文明が席巻する事によって裸体を恥じるようになり、テルメ(温泉浴場)文化は失われていったようです。

ほのぼのと楽しめる物語です。
共に風呂文化を愛するルシウスを、あなたもきっと好きになりますよ。

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2010年04月14日

超訳 ニーチェの言葉 白取春彦 (翻訳)

ニーチェなど読んだ事もないのに、書店に平積みになっている姿が美しくて手に取った。
そう、この本は装丁が美しいです。けして豪華な仕立てではないけれど、上品なグレーの地に、渋いシルバーの文字で「ニーチェの言葉」。紙の質感もよく、分厚いのに軽い。なんというか・・品のよさ、というものを感じる一冊です。図書館で借りて読まないで蔵書するのに良いと思わせる・・これはよく計算された作品ですね。ウマイなあ。

で、まんまと手に乗せられて買ってきたのですが内容も中々よろしい。
1ページ一言づつの箴言集となっていて、どこから読んでも良いので、そういう意味でも、これはやはり手元に置いて、気が向いたらパラパラ読む・・という(ニーチェを真面目に勉強した人には怒られそうな)読み方が相応しいでしょう。

詳しくは知らないけれどニーチェというのは、もっとこう・・ニヒリスティックで重たく暗い言葉を残した人じゃないのか・・と思っていたら、物凄く裏切られます。
明るいです。時に軽快ですらあります。真面目で誠実です。愛があります。

「超訳」ですから、「本物のニーチェは違う!」のかも知れませんが、手強い専門の哲学書に挑戦する・・という時間も余裕もない人が、気軽にニーチェ(の一端)にアクセスできるよう編集した、というのはひとつの功績ではないでしょうか。

今回は箴言集なので、メモを取ってしまうと意味がない。とはいえ、一端を垣間見れるよう、特に気に入った言葉を以下に。

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職業がくれる一つのめぐみ

自分の職業に専念することは、よけいな事柄を考えないようにさせてくれるものだ。その意味で、職業を持っていることは、一つの大きな恵みとなる。
<中略>
苦しいなら、逃げてもかまわないのだ。戦い続けて苦しんだからといって、それに見合うように事情が好転するとは限らない。自分の心をいじめすぎてはいけない。自分に与えられた職業に没頭することで心配事から逃げているうちに、きっと何かが変わってくる。
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勝利に偶然はない

勝利した者はもれなく、偶然などというものを信じていない。
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繁栄のヒント

古代ギリシャがあれほど高度な文明を保ち、長い間にわたって繁栄したのは、外国の文化と教養をすべて吸収したあげく、さらに発展させたからだ。
その土台は、豊かな学習だった。<中略>抜け目のない利潤追求のみの経済活動だけが繁栄と発展への道ではないのだ。
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新入学や、新社会人への贈り物とかにも、いいかもしれません。

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2009年11月15日

50イングリッシュ サム・パク

この「50の基本文」を死ぬ気で暗記せよ!

というサブタイトルが面白くて買った英語学習の本。
最近ずっと空き時間をこの本に費やしているので、あまり他の本を読めていない。

本書は、韓国で話題を呼んだベストセラー・・との事で、「若い人だけでなく、中高年、主婦が続々と話せるようになり、この勉強法が注目を浴びた」と紹介されている。

TOEIC630点の自分の課題は、英会話において「考え・考え・喋る」状態を「口から自然に英語が出てくる」状態に持って行きたい・・というもので、そのためには今までのように頭で覚える学習には限界があって、やはり英語圏で生活しないと難しいのかな〜・・・と思っていたところで出会った。

英会話のほとんどは、この本にある「50の基本文」のバリエーションでカバーできる・・というのが著者の主張。この学習法を実践すると3〜6ヶ月以内に2時間程度の講義が英語でできるようになるという。

「英語は習慣である」「習慣化するには反復練習」というわけで、やり方は・・

1)まず50の基本文を覚える。基本文の英訳和訳が相互にできるよう暗記する。文自体は特別に難しくはないので、少し時間をとれば大丈夫。

2)次に、著者が編み出した独自の記憶法に沿って基本文を0番から49番まで順番通り暗誦できるようにする。50文を順番通り覚えるのは難しそうだが、この記憶法はとても良くできており、簡単に覚えられた。

3)そして、覚えた文章を暇があるときにブツブツと暗誦する。駅で電車を待っている時や、歩いている時、トイレの中など、どこでも良い。(著者によれば平均的な人間の生活には毎日3時間程度の「細切れの空き時間」があるという。)

これを続けると、だんだん「口が慣れて」英語が出てくるようになるという。そして

4)基本文からバリエーションを作って応用する。
基本文 How many apples did you eat today ?
応用文 How many ****** did you eat yesterday ?

・・・といった具合。

まだ現在は50文を暗記して3)の「ヒマを見つけては暗誦する」を始めたところなので効果の程を保証できる段階ではないが、確かに手ごたえを感じる。
武道でも、最初に型を覚える時には何がなんだか理解できていなくても、反復練習を繰り返すうちに「身に入って」使えるものになるし、赤ん坊が音真似をしながら会話を覚えてゆく過程に近い・・と考えると納得できます。

コツコツとした英語学習に行き詰まりを感じている人や、「とにかく話せるようになりたい」という実用重視の人にオススメです。

読むべし!

◆この本について紹介している他のブログ
死ぬ気で暗記せよ!!50イングリッシュ ファン



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2009年09月09日

ダイアネティックス ― 明確な思考を取りもどせ!  L.ロン ハバード

本書は、米国の作家 L・ロン・ハバードが創始した心理療法の理論&カウンセリング技術の体系「ダイアネティックス」について解説したもので、1950年に米国で出版された後、50以上の言語に翻訳され合計2,000万部以上の大ベストセラーとなった。

まず最初に「存在の目的は生存である」とキッパリ割りきっているところが気持ちよい。人生の目的は「愛」だの「夢」だのとキレイゴトを言わない。(愛や夢を否定しているわけではありません)

その上で、人間は「生存の可能性」が高まると心地よく・快感を感じ・元気になるが、可能性が低くなると元気を失い・イライラして攻撃的になり・鬱になり・死ぬ、とする。

●生存の可能性が高まる → 褒められたり、仕事がうまく行ったり、仲間に認められたりして、未来における安全や生存の見込みが向上する状態

●生存の可能性が低くなる → 上司に怒られたり、社会的な失態を演じたり、戦争が起こったりして、先行きに希望が持てない状態

人間の生命力は、この「最高・無敵(ほぼ永遠に生きられる)」〜「生存の可能性ゼロ(死)」までの間を上下する、と説く。

また、人間には、無意識状態で知覚した出来事の記憶「エングラム」が多数存在し、心理の深層から影響を及ぼして非理性的で逸脱した行為を引き起こす。このエングラムを「オーディティング」と呼ばれるカウンセリング手法で探し出して消去する事で心身のパフォーマンスが向上する、という。全てのエングラムを取り去った人間は「クリアー」となり、健康で生産的で高い知性(最低でもIQ.135を超える)を発揮する。

「エングラム」は次のようなメカニズムによって発生する。

・人間は生涯において知覚する全てを「標準記憶バンク」に保存しており、この記憶は(普段は意識していなくても静思すれば)呼び出すことが出来る
・事故などで意識不明の状態にある間も知覚は働いており、音や会話、周囲に放出された感情などを記録するが、この記憶は「エングラムバンク」と呼ばれる場所に格納され「標準記憶バンク」の中に見つけられない(記憶がない)
・エングラムバンクに保存された無意識時の記憶が「エングラム」であり、そのままでは何も問題はないが、何かの刺激によって「キーイン」すると、人間に様々な逸脱をもたらす

【例】交通事故にあって昏倒した人間に「動かすな!」と言う声が聞こえる。その言葉がエングラムバンクに保存され、何かのきっかけでキーインすると、本来の意味である「救急車が来るまで動かすな」とは全く無関係な心理的拘束となる。例えば部屋が散らかっていても物を片付けられない(動かすな!)といった逸脱を引き起こしたりする。本人は、片付けができない理由がわからず、色々と見当違いな理由を考え出す。
※したがって、無意識状態にある人間の近くで、不用意な言葉を発してはならない。

・事故や精神的ショックなどの他、人間は、胎児の時代にちょっとした要因で「無意識」に陥る。エングラムは「細胞に刻み付けられた記憶」であるため、感覚器官が未発達な胎児でもエングラムを受け取る。普通の人間でも数百のエングラムは珍しくない。
・最も初期のエングラム(「ベーシックベーシック」と呼ばれる)を探し出し、消去することがオーディター(オーディティングを行うカウンセラー)の目標である。

・・・

まだ視覚も聴覚もない胎児の段階で聴いた「言葉」がエングラムとなって後の人生に影響を及ぼす・・という件は簡単に信じ難いですが、本全体は非常に面白い視点で人間を分析していると思います。

しかし残念ながら、本書を読んでも「セルフ・オーディティング」はできません。「クリアー」になるためには必ずオーディターからオーディティングを受けねばならないが、どのくらいの時間が必要かは見積もれない、としており(平均300時間くらいらしい)本書が発売されてから60年ほど経過しているわりに、ダイアネティックスが広く普及していないのも無理はないと思われます。

また、オーディティングの技術はサイエントロジー教会というところが提供しているが、この協会は一部の国でカルトと認定されたりもしているようなので気軽に飛び込んでみるのは躊躇われます。(発明された技術は素晴らしいと思うのですが)

・・というわけで、とても興味深くまた有用性がありそうな内容ですが、本を読んだだけでは何ら役に立たず、かといって少々危険な風評もあるサイエントロジー教会に出向き300時間(その間に相当の費用も発生するであろう)掛けて「クリアー」を目指すというのも「・・・」なので、心理分野に強い興味のある方や、知的好奇心を満たすために読むという余裕のある方にお勧めします。
600ページを超える分量で、人間の心理構造に関する理論が独自の用語を伴って論じられるため読了には少々時間が掛かかります。

【追記】読了後に知ったのですが、ダイアネティックス理論と実践法を紹介したDVDがあるので、こちらも良いかもしれません。自分も近々入手してみようと思います。


posted by 武道JAPAN at 23:05 | Comment(3) | TrackBack(0) | 読書記録(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月27日

裸でも生きる−25歳女性起業家の号泣戦記 山口絵理子 【武道家の書いた本】

武道家の書いた本?という事でもうひとつ。

著者の山口さんは、途上国でその国の素材と技術を使ったバッグやサイフを作り、援助ではなくフェアトレードによって貧しい国に未来を切り開こうと奮闘している女性起業家だ。
わずか25歳で単身バングラディッシュに渡り、まさに無手勝流で事業を始め、何度も裏切りや挫折にあいながら、遂に「マザーハウス」というブランドを成功させる。その過程を綴ったのが本書である。

最近はメディアに登場することも多く、どこにあのエネルギーと情熱が隠れているのか不思議なほど、ほっそりとした美貌の女性(書籍の帯についている写真は良くないですね。実物はもっと綺麗な方です)であるが、中学時代は不良だった、と書いてあり意外。

小学校でイジメに合い、中学で不良化してケンカに明け暮れた末に柔道部に入り、たちまち夢中になって高校進学時には柔道の強い学校を選ぶが、なんとそこには男子柔道部しかなく、ゴツイ男子に混じって稽古をしたというから普通ではない。
高校3年で、全日本ジュニアオリンピック全国7位の実績を残して引退するまで脇目もふらず柔道一直線。そこからハタと気づいて猛然と受験勉強を始め、慶応に合格したというのもスゴイ。大学4年の春に途上国の開発援助を行う国際機関のインターンに選ばれてワシントンへ渡り、そこから途上国支援の道に踏み込んで行くわけだが、とにかく尋常でない行動力と集中力!諦めない!

このバイタリティは柔道によって培われた・・のかは結論できないが、とにかくスゴイ人である。ほとんどの日本人が「ぬるい」現実に文句を言いながらも、ぬくぬくと生きているのに較べて「この人は何なんだあ!」と唸らせる。

「社長TV」のインタビューも一見の価値がある。
http://www.shachotv.jp/president/channel.php?president_id=124

今回は本の詳細は書かない。書いても仕方がないと思う。読んでほしい。

最後に一言。

この人は「全力で生きている!」


posted by 武道JAPAN at 07:14 | Comment(1) | TrackBack(0) | 読書記録(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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