2017年07月06日

世界を変えた10冊の本 池上彰

皆さんご存知の池上彰氏が「現代社会に顕著な影響を与えた本」というテーマで雑誌CREAに連載したものをまとめた一冊。やはり宗教と経済のふたつが影響力大と見えて、この分野に関する書籍が10冊中7冊を占める。

特に面白かったのは、最初にアンネの日記〜聖書〜コーランと続けて取り上げることで、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教を横断的に解説する部分。イスラエル、中東、パレスチナ問題、イスラム教原理主義など、世界を揺るがす課題の中心にこの3つの一神教がある。2011年出版の本であるが、もう少し後で連載されれば新興国の台頭に関する本も入ったかもしれない。以下メモ。

・・・

●アンネの日記(ユダヤ教)
ナチスの蛮行を告発し、イスラエルに対する反発の防波堤となった本。ただしアラブ世界では知られていない。

●聖書
旧約は、天地創造を始め、モーセの十戒・出エジプト記など、神話上の出来事を綴ったものが多い。新約は、イエスの死後、彼の言行録を「福音書」としてまとめたもの。
ちなみに、旧約・新約は契「約」の事で翻「訳」ではない。イエスの死により、神と人とに新しい契約が結ばれたと考え、従来の聖書を「旧約」とし、新しい契約の書として「新約」と呼んだ。

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教は、同じ経典に拠っているが最重要とするものは違う。
ユダヤ教=旧約聖書(ただし「旧約」はキリスト教徒からの呼び名で、ユダヤ教徒はそう呼ばない)特に「律法(トゥーラー)」。
キリスト教(主にプロテスタント)=新約聖書(旧約聖書も使う)
イスラム教=コーラン+新約・旧約聖書

●コーラン
キリスト教では主イエスは神の子だが、イスラム教ではムハンマドを始めとする多くの預言者の一人。(ちなみに「預言」は神の言葉を預かる事で、未来を言い当てる「予言」ではない)

新約・旧約聖書で伝えられた神の言葉を、堕落した人間は守れず、最終でもっとも偉大な預言者ムハンマドによって新たな神の言葉(コーランの内容)がもたらされたと考える。

イスラム教徒が守るべき「五行」を説く。五行とは信仰告白・礼拝(サラート)・喜捨(ザカート)・断食(サウム)・巡礼(ハッジ)。本来は穏やかな宗教である。

●プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 マックス・ウェーバー
19世紀カトリック教会が支配的であったヨーロッパにおいて資本主義は牧歌的であった。人は食べるに十分なお金があれば、それ以上は働かない。ところがプロテスタンティズムの国(特にアメリカ)では、勤労を「神の栄光を示すための行為」「終末の日の救いを得るための行い」として捉え、寸暇を惜しんでひたすらお金儲けに励んだ。これが資本主義と結びついて発展し、やがて際限のない利益追求、資本主義のゲームが止まらずリーマンショックの遠因になったとする。

●資本論 カール・マルクス
社会主義運動・共産主義革命の基になった一冊。
資本主義はやがて労働者の反抗から革命を引き起こし崩壊すると説くが、その後の来るべき世界像は描かれていない。

●イスラーム原理主義の「道しるべ」 サイイド・クトゥブ
イスラム原理主義過激派のバイブルとなった本。
著者は留学時にアメリカの物質文明に失望し、ムスリム同胞団を敵視する米英人を知ることで却って同胞団を支持する様になったという。
主権は人になく神のみにあると考え、民主主義を否定し 、神の言葉を伝えたコーランに基づく社会を実現すべきと説く。

●沈黙の春 レイチェル・カーソン
放射能、農薬など、環境汚染・複合汚染という概念を世界に提示した最初の書。

●種の起源 チャールズ・ダーウィン
現代では常識となった「進化論」を初めて問うた書。
旧約聖書の「神は自身の姿に似せて人を創った」とする概念を否定するため、発表当時は議論を巻き起こし、現代でも(特に米国に)進化論を学校で教えようとしない地域がある。

●雇用、利子および貨幣の一般理論 ジョン・M・ケインズ
不況になったら政府が財政支出をすることで消費・雇用を促進し、景気が加熱したら金利を上下することで景気をコントロールする・・という、現代資本主義社会における景気操作の基本的な処方箋を提供している本。

面白かった概念:利子率と利潤率〜投資することで得られる利潤率が借金の利子率を上回ると考えれば、経営者は金を借りてでも事業をする。

●資本主義と自由 ミルトン・フリードマン
「自由」「市場主義」「小さな政府」を良しとし、変動相場制、夜警国家、教育バウチャー(学校選択の自由)などを主張。本書では「過激な強者の論理」として批判的であるが、論旨は一貫しており傾聴に値する価値はあると思われる。

・・・

だいぶメモを端折りました。300ページに満たない薄い文庫本の割に内容は充実しています。オトナとして最低限押さえておきたい常識を、また世界共通語としての教養を(本来は原書を読むべきとしても)ざっと頭に入れるのに有用と思われます。

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 17:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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