「継続は力なり」「石の上にも三年」〜日本ではこのような表現で伝わっている教えです。本書では、その力を「GRIT」=やり抜く力、と呼びます。
著者は、米国で「天才賞」と呼ばれるマッカーサー賞を受賞したペンシルベニア大学の心理学教授とのこと。以下メモ。
・・・
●才能か努力か
多くの人は努力より才能の方を重視し、神格化さえしている。しかし、才能があっても努力しなければスキルは身につかず、さらに身につけたスキルを使って粘り強く継続しなければ成功は難しい。
ものすごく頑張る、いま必死にやる・・はGRITではない。
粘り強く続ける、明日も継続する、失敗してもまたトライするのがGRIT。
●継続するには動機の持続性が大事
そのためには哲学(世界観と言っても良い)が必要・・自分にとっての究極の関心事・今日やることの上位に、そのさらに上位に位置する最上位の目標は何か?
遠い目標に連なる手前の目標が、最終目的を支えるピラミッド構造だと良い。(究極の目標と、今日の目標がリンクしていないような構造は望ましくない)
例えば、歴史に残る大聖堂を作って神の栄光を讃えるためレンガを積むのか、明日の食料を買うために賃仕事としてレンガを積むのか。
●成功者の条件
・遠くの目標が視野に入っている
・いったん取り組んだことを簡単にやめない、目新しいことに気まぐれに飛びつかない
・粘り強く、根気がある
メガ成功者は、他者・利他・人々のため・世界のため・この仕事は意義があるか・役に立っているか?を最終目標にしている。
●GRITを育てる
・その人が育つ時代の社会的、文化的背景も影響する(家庭環境も?)
・遺伝と経験の両方が影響するが、GRITに影響する遺伝子は複数ある
・年齢とともに成熟するとGRITが強くなる傾向がある
・興味が大事で、好きになれることは継続できる(親は子供の興味に注目すべき)
・練習を続けること、目的を持つこと、希望を持つこと
●子育て・人材育成
・子供には高い期待と関心、併せて惜しみない支援を与えること
・大変だが楽しい、やりがいのある事を経験させる(大変だけ、楽しいだけ、はダメ)
・最低でも2年以上、何らかの「課外活動」をさせる
・偉大なチーム、GRITの強い集団に加わる(やがて集団の価値観が個人の信念になる)
GRITは人生に最も大切なことではない。履歴書に書く長所より追悼文に書く長所(善良さ、道徳心、思いやりなど)を伸ばすべき。ただし、GRITの強い人ほど、人生における幸福感や健康に恵まれている場合が多い。
・・・
努力と継続。
「7つの習慣」を読んだ時にも思ったのですが、日本ではわりと当たり前・・ここまで言葉化、理論化、科学的エビデンス付きになっていないけど昔からみんな知っている事ではないのか。
むろん、知っていることと出来ていること(更には「なっている」こと)には遥かな距離があるので、本書のように「やり抜く力」の構成要素や育て方まで体系的にまとめて貰えたのはありがたいと思います。
特に感銘をうけたのは第4章で、努力を継続するための意味付け=哲学が大事としている部分です。
「世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう:奥山真司著」でも、世界観・価値観がトップにあって、それを実現するために戦略→戦術→技術が階層構造で存在すると説いていますが、GRITな人であるためにも、やはり頂点に「究極の目標」を置くべきとしています。
人は、人生のいずれかの時点で「自分にとっての究極の目標は何か」「自分にとっての最高の価値は何か」について、答えを出しておくべきであると思います。
読むべし!