本書は、人生における苦悩の原因が「心の無駄な反応」から起こる事を示し、反応しない方法・合理的な考え方を身に着けることで、苦痛から解放された有意義な生き方ができると説きます。以下メモ。
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●認める・正しく理解する
人生に苦悩はある。無くそうとしないで「ある」と認めてしまう。そのうえで、苦を減らす・無くす方法を実践する。
苦悩の正体は、心の自動的な反応である。心は様々な欲求(食欲・性欲・睡眠欲・・・承認欲求など)を求め、できごとに常に勝手に反応し、無用なストレスや「妄想」を生産しつづける。したがって、心の無駄な反応を消すことができれば、苦悩は減ってゆく。
そのために、心の仕組みを理解し、反応せず、正しく合理的な考え方をする。例えば、次のような方法がある。
1)ラベリング
心の状態を言葉で言う。言うことで曖昧な心の状態を明確化する。正しく理解する。
例:わたしは怒っているな。わたしは悲しいな。これは承認欲求が満たされない不満だな・・など。そして、例えば承認欲求だったら「他人に承認されたとして、それに何の意味があるのか?」と考えてみる。
2)身体感覚に目を向ける
身体の快適な状態を作る、意識して呼吸する、一歩一歩確認しながら散歩するなど・・・苦悩の正体は、心の反応が作り出す妄想(実体のないもの)なので、身体という実体のあるものに意識を向けると反応が消えてゆく。
3)分類する
反応は、概ね次の3つに分けられる。ラベリングと似た手法。
・貪欲(「とんよく」欲しい欲しいという貪る心。手に入れたい、失いたくない・・・しかし、けして望むようにはいかない=「苦」のもと)
・怒り(思い通りにならない、期待通りに行かない物事への反応・・・しかし、そもそも人生は思い通りにならない=「苦」のもと ※悲しみも怒りの一種)
・妄想(人と比較して優れている・劣っているなどと考える評価・判断など)
●判断しない
良し悪し、好き嫌いを考えない。ありのままに見る、受け入れる。
1)あ、いま判断した、と気づく
2)自分は自分と考える
3)素直になる
他人と比較しない。
欲求のうちで、特に承認(認められたい、自分もひとかどのものであると自負したい)欲求は強く、人と競ったり、自己否定に走ったり、さまざまな苦悩の種になる。
比較も判断であり妄想。自分は自分。自分のものごとに集中する。
他人と比べるのではなく、自分の道を見つけ、自分のものごとに集中して、納得と満足のある人生を生きるべき。勝ち負けではなく、いかに貢献できるか(お役に立てればよし、の心)に注力すべき。
どんなときも自分を否定しない。「わたしはわたしを肯定する」
●反応の源泉を断つ
困った人とは縁を切る、距離を置く。
●自分の道を歩く
そのために道の基礎・自分の哲学を持つ。慈悲喜捨で生きる。
慈:人にやさしくする
悲:他者の悲しみをともに悲しみ
喜:他者の喜びをともに喜ぶ
捨:無駄な反応を捨てる
今できることをする・集中する。
人生を信頼し、最高の納得をめざす。
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他人と優劣を比べたり、欲望に反応して苦しむ生き方を手放し、自分のすべきこと、今できることに集中して、満足や納得のある人生を目指しましょう、と説きます。たしかに、仏事だの法要だのとは違う、生活に根ざした、より良い人生を生きるための、きわめて実用的で技術的な内容です。
様々な哲学書や、あるいはビジネス書でも、「世のため」「人のため」「貢献」を最終目標に据えるものは多いです。人間は、自分の欲求を満たすためだけに生きても、人生に於ける高度な意義や満足は得られないのかもしれません。
じっさい、年齢とともに肉体の活動が衰えてくると、自分の欲求自体が減ってきますし、その段階で生きる意味や情熱を維持するためには、最終目的を自分を超えた場所に置くべきだというのは納得します。まあそれも、究極の「自己満足」だと言えるかもしれませんが。
良書です。こころのエクササイズができます。
読むべし!