2012年12月02日

静かなる大恐慌 柴山桂太

著者は京都大学経済学部卒。滋賀大学経済学部社会システム学科准教授。専門は政治・社会思想史、現代社会論、リスク社会論。

本書を読むまでは、「グローバリズムは止まらないものだから、その中で如何に身を処すべきか」と考えていました。
しかし、この著者は「グローバル化は歴史上何度も起こっては崩壊した」と説きます。特に前回のそれが二度の世界大戦という結末に行きついて終焉した事実を明らかにし、ごく近い未来に、反グローバリズムの動きが出てくる可能性を指摘しています。
相当に現状認識を変えてくれた内容であり、まさに今、読むべき一冊と言えます。以下メモ。

・・・

世界はすでに「静かなる大恐慌」に突入した。1930年代のような混乱に陥らないのは、各国政府が過去に学んで対処のための知恵を保有していたからであり、実体としては「大恐慌」と呼ぶにふさわしい状態。

グローバル化は歴史上何度も起きては崩れた。今回が初めてでも、歴史の必然でも、永遠に続くものでもない。

経済が好調に拡大している時期はグローバル化も歓迎される。各国は相互貿易から恩恵を多く受ける。
しかし資本主義は消費も生産も借金を基にして拡大する仕組みであり、必然的にバブルを生む。バブルは必ず終焉するので、経済の後退局面は断続的に訪れるし、甚だしいバブルの後は恐慌となる。
こうなると、各国は自国の利益を最優先せざるをえなくなり、国家間の軋轢を生む。また、行きすぎたグローバル化は国内に格差を生む。新興国に雇用を奪われた労働者層は社会保障を求め、国内は不安定化する。このような経緯をたどってグローバリズムはある時点で反転し、保護主義や大きな政府への要求を連れてくる。

新興国の台頭も地政学的な不安定要因になる。前回のグローバル化時代には、恐慌後のブロック経済から締め出された新興国(日本やドイツ)が戦争の引き金を引いた。今回は経済発展した中国が軍備を増強し、周辺国に脅威を与え始めている。この局面で経済が崩壊すれば何が起こるか?
現代で戦争という帰結に結びつくことは考えにくいが、前回も「グローバル化は各国の経済的結びつきをより強固にし、戦争の可能性を低減する」と、同じように考えられていた。しかし戦争は起こった。

現在はWTOなどの機構もあり、あからさまな保護主義は取りにくい。各国も、保護主義が世界の安定にとって危険であるのは理解している。しかし現代の保護主義はより巧妙になっている。関税障壁をかけなくても、相手国製品の検査に時間を掛けたり、反ダンピング法のような新手が生み出されている。通貨安への誘導によって自国を有利に導くことも行われている。

グローバル化・国家主権・民主政治のうち、同時に実行できるのは二つだけ。

国家なしに節度のある資本主義は機能しない。

どこかで反グローバリズムの巻き返しが起こる可能性に備えよ。日本企業は世界に飛び出していくが、各国で国内産業の保護や外国資本の締め出し、政府による財産接収など、極端な事態が起こりうることを想定すべき。
中国での反日暴動など、繁栄から取り残された民衆による政府への抗議行動が直接的な日本企業への攻撃に出るケースだけでなく、民主的なデモや選挙によって政府への圧力が高まり、海外企業の締め出しが起こる場合すらある。
特に、日本はGDPに占める輸出依存度が上がってきており、海外のショックから影響を受けやすい。これが日本経済の脆弱性要因になっている。

各国が内需を拡大し、国民資本を充実させる事。輸出競争や通貨戦争によって他国の利益を奪い合えば、最終的には世界は不安定化する。しかし当面はグローバリズムは止められない。知恵の結集が求められる。

「資本」という概念を金銭以外にも拡大すべきではないか。共同体の人間関係や組織の信頼感、長年蓄積されてきた技術や知識の伝統など、現在の経済学がうまく扱えずに捨象している概念を取り込んだ新しい社会経済の在り方が必要。

・・・

・・と、新書でこの内容充実度はあり得ないほどすごいです。
グローバル化の進展による世界システムの不安定化という現在の世界が直面する問題をガバッと包含しています。これを読めば、リーマンショック後の不況も、ジャスミン革命も、尖閣問題も、すべてが同じ根を持つ「ひとつながり」の事象と見えてきます。

特に我が国においては、企業もエコノミストも、「今後も世界経済の一体化は直線的に進むし、縮小する国内を見限って発展著しい新興国に打って出るしかない」という論調が一般的で、想定外のリスクを検討していないようです。
しかし、もし本書の視点が正しければ(十分に確からしいと思われます)、今後グローバル化への強い反動が巻き起こる可能性は否定できません。我々はいたずらに国外に戦線を拡大すべきではなく、国内にもっと目を向けて、金銭に換算できない資本・・社会の安定性や国民の忍耐強さなど・・をより高め、国民を幸せにする社会、我々日本人が本当に望む社会の実現に注力すべきかもしれません。昨年のベストセラーに借りて言えば「これからの日本の話をしよう」です。

運命の選挙直前!

読むべし!読むべし!





posted by 武道JAPAN at 12:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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