2012年08月24日

世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう 奥山真司

著者は、地政学・戦略学の専門家。英国で地政学を学び、日本に批判地政学そのものを紹介した研究者の一人。
当然ながら軍事・戦略・地政学関係の著作が多いですが、本書はそれを「個人の人生戦略」に落とし込むかたちで書かれた異色作です。以下メモ。

・・・
欧米の社会は牧畜や奴隷制の経験から、管理(マネージメント)ノウハウの蓄積が厚く、発想として、状況を変えよう、環境の方をコントロールしようとする。日本人は状況を受け入れよう、環境に何とか合わせようとする。(例:打ち水や葦簾で夏の暑さを凌ぐ工夫をする vs 気温自体をコントロールしようとしてエアコンを発明する)

その結果、欧米は自分が常に優位に立てるように枠組みを構築しルールを変更するのに長けている。日本はその視点がないので、変更されたルールの枠内で努力するが、勝ちそうになるとまたルールを変更される。
(管理人:ルールを作り出す側に回らないとダメ。特に今後は国際社会の中での枠組みの整備に関与すべき。ただしそれには戦略が要る。また、どんな世界を構築すべきかの世界観や哲学が要る。日本人にはこれが昔から足りない。)

「戦略」には階層がある。日本人が得意な「技術」は、戦略学では最下層。その上に戦術や戦略、国家の意思である政策などがあり、最上位に置かれるのは「世界観」。上位ほど抽象度が上がり、「目の前のこと」から「遠い目標」に向かう。

欧米は自国(自分)の世界観・アイデンティティーを確立してから、それを実現(表現)するために戦略を練る。最上位から落としてくるため強い。
企業であれば社長の人格やビジョンが成否を決める。(Appleが世界最高の企業になったのもS.ジョブスの卓越したビジョンによるところが大きい)

世界観という最上位に位置する概念がなく、状況に対応するだけの「戦術」で応じていると勝てない。

世界観は、ビジョンやミッションと言い換えても良い。国家で言えば神話であり、個人であれば「私は何者か」というアイデンティティー。
これは個人の思想・宗教観・歴史観からでてくる抽象的な思考。延々と神学論争で戦ってきた欧米人は強い。個人の中にそれを培うことなく「お上の言うとおり」でやってきた日本人には核となるアイデンティティや歴史観がなく脆弱。日本人でもクリスチャンは例外的に強い。

このせいか、日本人は目標を立てるのがヘタ。立てても「技術」レベル(TOEICで000点を目指すなど)で、それが達成されてもまた次の目標が必要になるばかりか、環境が変われば達成したものが無効化する。
例えばTOEICに代わるもっと別の仕組みを作るとか、自分が英語を話すのではなく英語の達者な人間を雇ってビジネスを回す・・というような「そもそも論」の発想がない。もっと自分の仕事やポジションの戦略階層を上げるべきで、そのためには今まで培ってきた「武器」を一旦捨ててしまう発想が必要。
例えば技術という(新興国が追い付きやすい)武器を必死に磨くのではなく、「ブランド化」という一段上のステージに上がるなど。

ただし日本には高度に抽象化された世界観を表現する方法論もある。俳句など、きわめて短い言葉の中に情景や世界を映し出している。日本人に抽象化の能力がないわけではない。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」の「死生観」は、「世界観」を超えるさらに上位の概念かもしれない。「死ぬこと」「死に方」を定めて、そこから落としてきた戦略や戦術は最強の方法論になりうる。

勝利に到達するためには2つの戦略がある。
・順次戦略 (目標とイメージ) 目標を定めイメージを明確にし、目標までの距離や時間を見える化して漸次進める。すごろく式。
・累積戦略 (環境と習慣) 見えない目標に向かって日々努力を継続する。ある時点で創発的、突破的な効果が劇的に出現する。臨界点に達すると一気にコマがひっくり返るオセロ式。

順次戦略は、最近の成功本などに多い「目標を明確にして紙に書く」「多くの人に公言する」など「見える化」する手法。
累積戦略は、いわゆる「陰徳を積む」行為。見えないところで日々継続する。祈りでも、掃除でも、ボランティアでも良い。本人にとっての宗教行為に近いもの。
どちらもバランスよく並行して進めることが肝要。ただし、まず累積型で地力や自信を培った人が順次戦略を取った方が高い効果が出る。

冷静であれ、柔軟であれ、選択肢を多く持て。
・・・

「日本には技術がある」「技術を生かしたものづくりを」と言われます。
もちろんそれは結構なことなのですが、「戦略の階層」という視点から見ると、それだけでは勝てないのが明確です。卑近な例では、世界最初の携帯音楽プレーヤーだったウォークマンも、音楽流通の仕組み自体を変えるiPhoneの戦略に敗れました。
その差は、突き詰めると「世界観」「哲学」に行き着く・・ これは一朝一夕で解決しない問題です。

日本を日本たらしめる原理を再発見した佐藤優氏の「日本国家の神髄」が参考になると思われます。

読むべし!





posted by 武道JAPAN at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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