2011年08月20日

われ日本海の橋とならん 加藤 嘉一

著者は、英フィナンシャルタイムズ中国版コラムニスト、北京大学研究員、慶応義塾大学SFC研究所上席所員、香港フェニックステレビコメンテーター。

少年の頃から「日本を飛び出したい」と英語を猛勉強していた彼だったが、とある縁で北京大学に招かれる。19歳で単身中国に渡った彼は、大学在学中に反日暴動を目撃。それがきっかけでTV番組に出演しインタビューを受けたことから取材が殺到し、中国に「加藤現象」を巻き起こした。いまや年間300以上の取材を受け、200本以上のコラムを書き、ブログやツイッターで多くの読者を持つ「中国でもっとも有名な日本人」。

「内から見た中国、外から見た日本」という副題がついていますが、現地に入り込んで現地の言葉で実際に生活してみないと分からない中国の姿を紹介。「中国に自由はあるのか?」「人々は民主化を求めているのか?」など、日本人が持つ数多くの疑問に答えます。また180度視点を変え、外に出てみて初めて明確になる日本の姿も描きます。以下面白かった点をメモ。

・・・

・中国人は民主化を求めているか?
今のままで続けられるとは、上も下も思っていない。ただ、自分や自分の家族が豊かで幸せでありさえすれば他のことはどうでも良い、という実利的な傾向が強く、それを邪魔されない(サポートしてくれる)なら、政治体制がどうでもこだわらない。

・意外に言論の自由はある
「天安門」などのタブーワードに触れない限り、言論は自由。人々の政治意識は高く、学生でもタクシー運転手でも、驚くほどさかんに政治や外交について議論する。
むしろ日本のほうが「空気」としてのタブーが多く、言論空間が狭いのではないか?日本では政治を熱く語る学生などは「ウザい」と敬遠される。
インターネットは普及しており、カフェで無料のネット接続は当たり前。日本より便利。学生や農民工も、TVは持たずともPCは保有し、食いつくように最新情報を集めるのに必死。

・中国政府の最重要懸案事項は、「統一の維持・分裂の回避」
尖閣諸島などで対外的に強硬に出る動機も、多くはこれ。13億人の巨大国家を統治するのは至難の業。歴史的にも「分裂・戦乱」と「皇帝による一極統治」の繰り返し。今は皇帝ではなく共産党が何とか統治しているが、常に分裂の危険と隣り合わせ。

・日本だけがもつチャイナリスク「反日感情」
中国共産党の建国神話として、軍国日本と戦い人民を解放した・・というストーリーがあるため、ことさら「反日」を強調せず愛国教育を志向しても、容易に反日と結びついてしまう。日本だけが抱えるチャイナリスク。

・反日はじつは「反・自分」
うまくいかない事が多いと、反日デモに名を借りた「反・自分」行動が出る。これはすぐ反体制、反政府に転化するため、中国政府が最も警戒する。日本にとってのチャイナリスクは、中国政府にとってのジャパンリスクで、これは表裏一体。
日本が中国に対して強硬に出ると、中国国内の不安定化を促すことになる。ここの理解は重要。時には外交カードに切ってもよい。

・日中の利害は一致する
今後のアジアにおいて、中国とは付き合わないでおこう・・という選択肢はあり得ない。中国から見ても、日本と敵対して良いことなど一つもない。実は両国の利害は一致している。

「東アジアの将来の平和と幸福は、日中両国が共に生き、共に進む道を見つける事に掛かっている。」(→文明の衝突と21世紀の日本/サミュエル・ハンチントン

「日本と中国は、しばしば永遠の敵対関係と見られがちだが実際にはアジアの政治経済にとって車の両輪である。」
(→「三つの帝国」の時代―アメリカ・EU・中国のどこが世界を制覇するか/パラグ・カンナ

・・・

その他、著者独自の視点として、ほとんど仕事をしないで昼間から公園で将棋などをしている「暇人」に注目しています。これはよく取り上げられる「農民工」とは違い、出稼ぎでない労働者(半失業者?)ですが、筆者の推計ではおよそ3億人。中国世論を動かす陰の存在と見ています。
また、貨幣のように流通する「面子」の話など、中国人理解に参考になる情報が詰まっています。

「中国でもっとも有名な日本人」を目指したわけではないはずの彼が、時代に選ばれて時代を駆け抜けている疾走感が伝わってきて心地よいです。1984年生まれというから、まだ27歳だ。素晴らしい!龍馬が脱藩したのも27歳だった。関係ないけど。

最終章では、同年代の日本の若者に、日本を飛び出し世界を見よ!と熱いエールを投げています。いま日本は大胆に変化すべき時。日本は震災で時計の針が10年進んだ。猶予はない、と。

読むべし!読むべし!






posted by 武道JAPAN at 14:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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