2011年07月24日

この国の「問題点」 〜続・上杉隆の40字で答えなさい〜 上杉 隆

先月(?)の「朝まで生テレビ」に出演していた著者の、醒めた、しかし適確な物言いが面白くて本書を買ってみた。

著者の上杉氏は、NHK記者→鳩山邦夫の秘書→NYタイムス日本支社を経てフリーとなり、自由報道協会を設立。ツイッターやネットメディアでの発信が多い。

タイトル通り、フリージャーナリストである著者が、この国(および若干、世界)の「問題点」に一問一答形式で答えてゆく。なぜ40字なのかは不明だが、一見ややこしいヨノナカの問題を短くまとめてズバリ言い切るところは痛快。思わず笑う回答もあります。

さまざまな「問題点」を取り上げていますが、特に記者クラブに対して強い批判を展開します。

・大企業や政府・官公庁の記者会見に必ず参加できるのは大手マスコミで構成される記者クラブに限定される。これは日本にしかない特殊な慣行。原発事故などの重要な政府広報も独占し、フリージャーナリストや海外メディアを排除する。

・だがその記者クラブは、情報の発信側(大企業や官僚組織)との癒着が強く(公的機関が光熱費持ちで記者室を提供したり、記者を接待したりする)不都合な記事は書かない。書くとクラブからはずされる。またサラリーマンであるゆえに所属する会社の意向に沿わない記事は書けない。

・つまり本来のジャーナリズムからは掛け離れた、権力側の単なる広報機関に成りさがっているのが実態。しかし日頃TVや新聞というメジャーなメディアから流れるのはこういった「大本営発表」のような情報ばかり。記者クラブ制度、およびそれに代表される「健全な現場の若い声を、老朽化した組織システムが阻害してしまう」仕組みが、この国の根源的な「問題点」。

また、NYタイムスの記者であった経験からか、他国で流通しているニュースと日本のそれに格差を見いだしています。

ロシア政経ジャーナル」の北野氏によると、世界にはいくつかの情報ピラミッド(米英・欧州・クレムリン・イスラム・中国情報ピラミッド)があり、日本は英米ピラミッドの末端に位置しているとのこと。なるほど例えば次のような上杉氏の指摘と符合します。

・日本(と米国)では、アルジャジーラはイスラムテロ組織のプロパガンダ機関のように思われているが、世界では最もフリーで公平な報道機関のひとつと見られており、中東のCNNとも呼ばれている。

・ウィキリークスも日本(と米国)では批判的に見られるが、世界では創始者のジュリアン・アサンジをノーベル賞に推す動きもある。

・格付け機関は米国の一私企業に過ぎず、格付けの基準は概ね恣意的なもの。マジレスするのは日本だけ。

・今後、世界は水資源をめぐる激烈な競争に突入するが、日本は森林と水に恵まれており政府も市民も気づいてない。気づいていないうちに外国資本が森林を買い占めている。

それから、国家を運営する「予算」がいかに組み立てられるのか、なぜ「政治主導」が機能しないのか・・・についても、40字の簡潔な説明から、様々な問題が解けてきます。

・予算はタワーを建てるように各省庁でボトムアップ式に作られる。役所は、自分たちに必要な予算を積上げるため、規模は年々大きくなる。
1年がかりで編成された予算が閣議に上がってくる段階では、もはや本当に必要かどうかを判断する機会はない。「事業仕分け」で多少切ってみても枝葉のこと(ただし役人を公開の場に引き出すことは意味がある)。予算編成権(および人事権)を政治の手に戻さないと本質は変えられない。

・政策もボトムアップ式にあがってくる。その過程で調整を経て、事務次官会議(役所のトップ同士の話し合い)で決定され、閣議では承認されるだけ。つまり、政府ではなく役人が作り、役人が決めている。
民主党は、いったんは事務次官会議を廃止し、あがってきた政策に政治家が注文を付ける「政治主導」を行おうとしたが、手間隙かけて調整した内容がオシャカになるため役人が抵抗し、けっきょく元に戻されてしまった。

・・と、日本では議院内閣制の仕組みが正しく運用されず、議論の場であるはずの国会が、役人の作った法案を承認する儀式と化している実態を指摘します。

本来は、国民によって選ばれた政治家が政策を立案し、法案を作って審議し、そこで決まったものを役人が手足となって実行する・・この役割が逆転しています。これでは、国民のための政治が行われるはずはない。役人のための、役人に都合の良い政治が行われて当然です。「日本の統治構造」の著者、飯尾潤氏は、これを「官僚内閣制」と呼んで批判しています。


たくさんある話題の中からごく一部を取り上げましたが、簡潔に読めるわりに本質を突いた指摘が多く面白いです。政財界と癒着してしまい、ジャーナリズム本来の切れ味を発揮できない大手マスコミ以外の視点として参考にしておいて良いと思います。

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 11:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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