2011年07月16日

いまアメリカで起きている本当のこと 日高義樹

著者は米国在住のジャーナリスト。テレビ東京系「日高義樹のワシントン・リポート」が有名。NHKニューヨーク支局長を経て、ハドソン研究所首席研究員。

保守系シンクタンクとして知られるハドソン研究所にいるだけあって、立場は共和党寄り。歴代の民主党政権は失敗ばかりと批判。ブッシュのイラク戦を正当化し、オバマのアフガン戦は意味不明とするなど、あきらかな偏りは見られるものの、「米国の保守派から見えるアメリカと世界」という視点を知るには良い一冊です。日本国内では流通しないリアルな情報も詰まっています。

民主党の社会主義的なバラマキ政策が批判されてオバマは中間選挙で大敗し議会はねじれ現象、しかし保守陣営もこれといった有力候補者が見当たらないようです・・なんか日本とそっくりじゃない?と笑います。以下メモ。

・・・
●米中衝突
米国内ではオバマの失政に不満が高まり、保守派の力が台頭している。オバマも再選に向けて保守的な傾向を強めてはいるが、今後の選挙で民主党が勝てる見込みは小さい。
オバマ政権の2年間は中国に対して宥和的で、甘やかしたために増長を招いた。中国人は黒人を一段低く見るため、オバマ大統領を軽んじた。今後は米中対立の方向が出てくる。中国に進出した企業はダメージを蒙る可能性がある。日本も米中衝突のはざまで、いかに生き残るかを考えなくてはならない。

●日米関係
日本の民主党政権は米国との関係を徹底的に悪くした。内向きの理屈が世界に通用すると勘違いし、安全保障面を大幅に依存している米国と「対等」の関係を求め、中国に擦り寄った。現下の世界においては、現実的に国家が存在と存続の単位である。その国家の安全保障について何の構想も戦略も持たない政権を米国は信用できない。
前原誠司前外相が新幹線を売り込みに行っても「国家間の約束事(核持込の機密暴露・基地問題)をひっくり返した政党が何をしに来たんだ」という扱い(当たり前)。

●オフショア戦略
中国の軍事力増強に対する新たな戦略は「オフショア」。機動力や遠隔コントロール技術の向上により、紛争地域の近くに基地を置く必要が消えた。グアムあたりに引き、中国のミサイルが届かない遠隔地から中国本土を叩く。アフガンで実証された無人偵察機の能力も向上している。(管理人:ということは沖縄に基地がある必然性は無いはず。多額のお金を払ってでも沖縄に米軍がいてほしいのは日本の事情。中国や北朝鮮を牽制するため)

●ドル離れ
米国内においてもドルに対する信任が失われつつある。もともと米国人は、それほどドルを妄信していないし、中央銀行のことも信じていない。「ドル離れ」の裏で、州独自の地域通貨実験や、金本位制への動きもある。
大統領によりドルの無効化が宣言され、世界一の金保有を背景に、ゴールドに裏付けられた新しい通貨に切り替えられる可能性もある。(管理人:金・ドルの兌換停止も突然だったわけだし、あり得るのか)

●エネルギー政策の変更
地下2000mのオイルシェールを天然ガス化する技術を完成した(シェールガス革命)。オイルシェールの埋蔵量は原油の2〜3倍。米国だけでなくブラジルなどの地下に大量に眠っている。向こう数十年はエネルギーに困らない。これにより、今まで推進してきた原子力をどうするか迷いはじめた。(管理人:GEと結んだ日立、ウェスティングハウスを買収した東芝の運命は?)

●中国のアフリカ進出
中国は1960年代からアフリカに進出。タンザニア・ザンビア鉄道の建設など積極的に援助してきた。欧州の植民地でしかなかったアフリカに初めて産業の芽が生まれた。
いっぽう、三狭ダムで追い出された数百万の農民をアフリカに送ったため、土地を奪われたアフリカの人々が反対運動を始めている。かつての帝国主義型植民地侵略と同じ構図が起こっている。

●人民解放軍の増長
中国の一般民衆が腐敗した共産党に見切りをつけ軍人に期待を持ち始めているため、共産党が軍を抑えきれなくなってきている。2.26事件〜戦争へと進んでいった、かつての日本と似た状況になっている。
ただし中国の軍事力は張子の虎。核兵器を除けば、通常の陸・海・空軍では日本の自衛隊にも勝てない。まして米軍に追いつくのは、はるか先。中国の長距離ミサイルでは、防御・攻撃機能を備えた米空母を攻撃できない。ただし、サイバー戦争には注意が必要。

●イノベーションの力
米国パワーの源泉は大学発の技術開発力。柔軟な発想で新しいコンセプト、技術、仕組みを生み出し、困難を切り抜けてゆく。中国は模倣はできてもイノベーションの力は弱い。両者の逆転は簡単に起こらない。
・・・

と、安直な米国衰退論を退けます。

中国はまだ成長するでしょうが、今後も当分の間、世界でもっとも精強な国はアメリカであり続けるでしょう。目先の「米国衰退」「中国台頭」論に惑わされて、日米関係をおろそかにし中国につこうと軽挙妄動すれば共産党政府の思うつぼです。

とはいえ、米国も(他の全ての国と同様)自国の国益を最優先に動きます。損得を超えた友情というものは個人間にしか成立しないので、このあたりを混同してはなりません。
本書には、米国が冷戦時代と違い極東地域の安全保障をアメリカ一国が負う必要はないと考え始めている、とも書かれています。シェールガス革命によってエネルギー資源を手に入れ、食料は自国でふんだんに生産できる米国が、いつまで警察としてアジアにいる必要があるでしょうか?日本は日本として、何が自分たちにとって最善なのか・・をよく議論し見極める必要があります。そのためにも、本書のようにリアルな情報を知りましょう。

米国の保守派、という観点が色濃く出た論調ですが、長年ワシントンに拠点を持って活動する著者ならではの手応えある一冊です。日本のマスコミから流れてくる低レベルで薄味の情報とは較べものになりません。

読むべし!






posted by 武道JAPAN at 15:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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