2011年05月02日

原子炉時限爆弾 広瀬 隆

私事ではあるが、この春は子供たちの高校・大学ダブル受験だった。で、その機に横浜から郷里の愛知県に転居し、自分のためには都内に仕事用の一部屋を借りることとした。
経験して初めて知ったが、他府県での高校受験については中学にも学習塾にもあまりサポート体制がない。けっきょく親があれこれ手配するしかなく、普通以上に手間の掛かるダブル受験+ダブル転居でテンヤワンヤしている最中に東日本大震災がきて、もう決定的に何もかも普通にはすすまなくなった。なんとか予定通り引越しはしたものの、新しい生活のペースをつかんだのは4月も終わる頃で、ブログの更新は大幅に滞った次第である。

さて、そんな中で気になるのは、続く余震と原発問題・・というわけで本書を手に取った。

著者の広瀬隆氏は「東京に原発を!」以来、一貫して反原発を主張してきた。ロスチャイルド財閥の歴史を解いた「赤い盾」(読んだが、とてもレビューできないので本ブログには未掲載)や、日本の財閥系図を明かす「持丸長者」など、膨大な資料から事実を取り出すことで、見えなかった世界を可視化する労作が多い。本書も、多数の資料や図版つきで丹念に我々が置かれた状況を明らかにしてくれます。以下メモ。

・・・

・地球は生きており、内部のマントル対流によって地面を乗せたプレートが動いている。世界中で地震が発生するのは、主要なプレートの境目である。

・日本列島は、ユーラシア、フィリピン海、北米、太平洋の4つのプレートが重なり合う場所にあり定期的な地震の発生は既定事項。

・静岡県御前崎の浜岡原発は、世界で唯一、3つのプレートが重なり合うポイントの真上に建てられている。

・巨大な「東海地震」と、セットで発生する「南海地震」は100〜250年周期で定期的に発生している。直近では、1944年の東南海地震と、1946年の昭和南海地震。東海地震が、やがて来ることを疑う人は電力会社にもいない。

・日本の地層は、激しいプレート活動によって海底から隆起したり沈んだりしながら造成された。
6500万〜4500万年前ごろ日本を縦に走る大断層「中央構造線」ができたが、この頃はまだ大陸の一部で、日本海もできていない。ようやく列島らしい姿になったのが200万〜80万年前頃で、大陸から完全に離れたのが1万年前。もちろん、日本列島は現在も激しく動いている。
しかも縄文時代(3000年前)には現在より海面が高く、いま原発が建っている海岸沿いはほとんどが海の中だった。日本には真に強固な地盤というものは存在しない。ちなみに、ヨーロッパの地層は5〜20億年前のもの。

・原発は、原子炉で発生した熱で蒸気を作りタービンを回す。蒸気は冷却され、原子炉建屋に戻って原子炉を冷却する。つまり構造上、原子炉とタービン間には配管が必要。原子炉そのものは頑丈に作ってあるが、配管・配電が巨大地震の揺れに耐えられるとは思えない。配管が切れれば放射能が漏れるし、配電が途絶えれば制御室は機能しなくなる。(いずれも、残念なことに今回の震災で実証済み)

・日本では米国の後押しとエネルギー資源の少なさという国内事情があいまって、国策として原発を推進した(やがて利権のカタマリとなった)。耐震基準や地震・津波の想定は、「原発をいかに作るか」が前提であり、真に「安全」を目指したものではない。

・通常、原子炉ではウランを燃やす。高速増殖炉が成功しなければプルトニウムの使い道はないが、世界中で高速増殖炉は失敗した。日本でも「もんじゅ」がナトリウム火災で失敗した。

・六ヶ所村の再処理工場(使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、高レベル放射性廃棄物をガラス固化する)は、溶融炉が詰まってしまい稼動不能となった。ガラス固化できない高レベル放射性廃液が240立方メートルも溜まってしまっている。(ちなみに、これが1立方メートルでも漏れれば、東北地方北部と北海道南部の住民は避難が必要)。
また、使用済み核燃料(長期間の保管と冷却が必要)を保管しておくプールを維持しなくてはならないため閉鎖できない。

・使用済み燃料を保管する日本中のプールはいっぱいで、原発ではサイト内のプールに一時保管しているが、どのサイトでも10年以内にプールは受け入れ限度に達し、原発の運転続行は不能になる。

・再処理工場が稼動していた間に(もし日本が核武装する意図がないのであれば)使い道のないプルトニウムが大量にできた(※プルトニウムを使う高速増殖炉は失敗している)。
それでも用途があるように見せかけるため、ウランと混ぜてMOX燃料を作り、ウラン用の原子炉で燃やすプルサーマルが行われているが、使用済み燃料の放射能を飛躍的に高めるデメリットに比して、燃料の節約や再利用というメリットは(政府の宣伝に反して)ないに等しい。

・再処理も高速増殖炉も失敗しているが、つじつま合わせで場当たり的にメリットのないプルサーマルへ邁進している。14年も死んでいた「もんじゅ」も無理やり再稼動した。

・地下300mに高濃度放射性廃棄物を埋めるという最終処分場は、受け入れる自治体がなく(当たり前だ)いまだ決まっていない。

・日本の原子力行政は袋小路に落ち込んでいうえに、待ってくれない大地震は、ほぼ100%やってくる。日本列島に人が住めなくなる可能性すら充分にある。

・・・

本書で初めて知って最大限にげんなりした事は、2010年6月に福島第一原発で電源喪失事故が起こっていた事実でした(当時ワールドカップ一色だったマスコミはどこも報道していない)。

外部からの電源が4つとも途絶え、原子炉は緊急停止したものの内部では沸騰が続いて冷却水が減り、炉心溶融寸前で停まったとの事。しかも事故原因は特定できていない。
また、2007年中越地震の際、柏崎刈羽原発で外部電源を取り入れる変圧器が火災を起こし、炉心は停止したものの、その後の冷却ができずに、かろうじて生きていた電源で危機回避したとの事(しかし非常用ディーゼル発電機の燃料まわりが地震で陥没した)。

これだけの事態を経験していながら、東日本大震災後の対応を見ると、教訓が活かされていない実態が理解できます。
安易に東京電力を批判する気はありませんし、今も現場で必死に事態収拾に当たっている人々には感謝と応援の気持ちを持っていますが、不測の事態をトコトン想定しきる思考力と、危急の際のリーダーシップが、どうも日本人は弱いのではないか?科学技術の問題ではなく、危機管理能力の問題で、これらの人々は原発を運転する水準ではないのでは?と疑われます。

また、静岡の浜岡原発を地図で見れば、半径20k圏内を東名高速道路と東海道新幹線が走っています。非常時には東京〜名古屋間の移動は途絶するのではないでしょうか?浜岡原発はまず停めるべきと思います。
(追記:その後、管首相の「英断」で浜岡原発は停められましたが、これは横須賀基地の放射能汚染を危惧した米軍から要請があったため、という説があります)

地球と地震の仕組みから原子力発電のイロハ、日本の原子力行政や我々の置かれた状況まで幅広く把握できる一冊です。今読むべきでしょう。

読むべし!






posted by 武道JAPAN at 17:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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