2010年09月19日

国家の気概 北野 幸伯

著者の北野さんはモスクワ国際関係大学卒業でロシア在住。愛読している殿堂入りメルマガ「ロシア政経ジャーナル」の発行人。
本書は電子書籍なので、携帯かパソコンにダウンロードして読みます。

北野さんの本やメルマガでは、「国家のライフサイクル」理論が有名ですが、本書ではさらにスケールを拡げ、歴史を貫く大潮流を見据えています。
いつもの事ながら、キレイゴトや特定の立場に偏った解釈はせず、「事実として」起こっている事と、近現代〜近未来の国際情勢を見事に分析しており、歴史と世界情勢の流れが「流れ」としてキレイに頭に入ってきます。中高生にも読んで欲しいくらい判りやすいです。以下メモ。

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●歴史の向かうところ

世界は「自由」「平等」「統合」に向かっており、この潮流を推し進めたいくつかの「選ばれし国」がある。ただし「選ばれし国」=「善なる国」ではなく、ダークサイドも有る。

ポルトガルやスペインが航海に乗り出した事で世界は統合に進んだが、アステカ文明は大虐殺にあって滅亡した。米国の独立宣言によって世界は自由に一歩進んだが、北米原住民は殺され、黒人は奴隷にされた。

日本は非白人国家が近代化できる事を証明し植民地化されていた各国に平等の希望を与えたが、自らも周辺国を植民地化した。(西郷隆盛は江華島事件を「天理に恥ずべき行為」と嘆いた)

このように、歴史上に大きな動きをした国は、負の側面も残しつつ、結果的に「自由」「平等」「統合」を進めている。

日本は、第2次大戦に敗れたが、結果的に欧米列強の植民地を解体させて「自由」を推し進めたし、戦後の驚異的な復興により世界経済の中心を欧米中心からアジアにも引き寄せて「平等」を進めた。

ドラッカーはこう言っている。
「しかし、結局のところ、最後に勝ったのは、日本だった。日本のとった道、つまり自らの主権のもとに、近代化すなわち西洋化をはかるという道が、結局西洋を打ち負かした。日本は、西洋を取り込むことによって、西洋の支配を免れた。軍事的には、日本は第二次大戦において、歴史上もっとも決定的な敗北を喫した。
自ら植民地大国たらんとする政治的な野望は達せられなかった。しかし、その後の推移では、政治的に敗北したのは、西洋だった。
日本は、西洋をアジアから追い出し、西洋の植民地勢力の権威を失墜させることに成功した。
その結果西洋は、アジア、ついてアフリカの西洋化された非西洋世界に対する支配権を放棄せざるをえなかった」(P・F・ドラッカー著『新しい現実』)

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●中国の「小日本省」

米国べったりの自民党が政権交代し、「これで日本も自立した国家に?」と期待されたが、民主党政権は新しい依存先を中国に求め、「日本の小日本省化」を進めている。

日本が「中国の小日本省」になれば、人民解放軍が駐留し、標準語は北京語となり、日本独立を訴える者は投獄処刑され、天皇陛下は米国に亡命する事になる。

(管理人注:昨日発表された新内閣では、対米追従派の前原誠司が外相になりましたので、現時点では中国→米国へのゆり戻しがあるように見えます。ただし、これは日本の自立を促す動きではなく、あくまで「対米追従」でしょう)

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●ライフサイクルから見る近未来

世界の主要国でライフサイクルが成長期にあるのは中国だけ。これが現在一人勝ちの理由。2020年頃までは成長が続く。

しかし、ライフサイクルを超える力(=歴史の大潮流「自由・平等・統合」へ向かう流れ)には逆らえない。政治は独裁で経済は資本主義という矛盾を抱えたままでの未来は不可能。今後、中国が辿るシナリオは以下3つ。

1.民主主義に代わる新しい体制を発明する。が、かなり難しいので、持ち出すとしたら中華思想になる。しかしこれでは、アーリア人優越を主張したナチスと同じなので、世界中から反発を受ける。

2.自主的に民主化する。これは可能性が有る。そうなると「日本唯一の仮想敵」がいなくなって万々歳。

3.慢心し、独善的になる。この場合、欧米諸国は封じ込めに入る。露を誘い、インドを引き入れて包囲網を作る。

日本は「アメリカから離れて中国につこう!」と軽挙せず、この大潮流を見て進路を違えないようにすべし。

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「国家のライフサイクル」から見ると、世界で起こっている出来事が本当に手に取るように理解できます。冷戦後のアメリカ一極世界の舞台裏で起こっていた世界の動きも完全に理解できますし、これから起こる出来事も見通せますから、投資や経営をする方にはぜひとも読んで欲しい内容です。

「なんとなくアメリカも弱ってきたし、これからは中国かな。経済も中国が頼りだし・・」という考えの人も多いかもしれませんが、本書では、忘れてならない中国のダークサイドをしっかりと紹介しています。
それを踏まえ、短期的(国家の趨勢なので10年〜単位ですが)な勝ち組に見える中国に乗って良いのか、よく考えて欲しいと思います。

日本がかつて世界と戦ったとき、

・日英同盟を背景に日露戦争(勝利)
・英米側に立って第一次大戦(勝利)
・日英同盟破棄、国際連盟脱退して日独伊で第二次大戦(大敗北)
・日米同盟(冷戦下西側)で戦後の経済復興(勝利)

と考えると、「勝ち組」側にいることがいかに重要か、また、頼りになる同盟をいかに大事にしなければならないか・・が判るでしょう。

日本は「国家のライフサイクル」から言えば衰退期ですが、案ずる事はありません。ペリーが来た頃も衰退期で「究極の平和ボケ」だったのに、一部の気概を持つ志士達が立ち上がり奇跡の歴史を作りました。(=全日本人が目覚める必要はない)
衰退期の後には、混乱を経て再び成長が始まります。我々も、変化を怖れず立ち向かいましょう!

勇気がもりもり湧いてくる一冊です。

読むべし!!!

→ ロシア政治経済ジャーナル

→ 国家の気概【完全版】




posted by 武道JAPAN at 19:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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