2010年07月25日

ベルカ、吠えないのか? 古川日出男

「ベルカ」とは、ソ連の宇宙船スプートニクで地球軌道を周回して戻った犬の名前。本書は、4頭の軍用犬から始まる犬たちの系譜を、20世紀戦争の歴史に織り込んだ壮大な物語です。

第二次大戦中の1943年、日本軍が撤退したアリューシャン列島のキスカに4頭の軍用犬が残される。
ある犬の血統は米軍に収容され、軍用犬としてアジアに運ばれて朝鮮戦争・ベトナム戦争を戦い、他の犬の血統は北極圏でソリ犬として使役され、狼と交配し、生き延びるために南を目指す。
犬たちは、中国へ、アフガンへ、ソ連へと拡散し、海をわたり、あるものは麻薬取引を仕切るマフィアの一族に飼われ、あるものはソ連の特殊軍用犬部隊に編成されてゆく。

この物語に特定の主人公は居らず、登場する犬たちに固有の名前はあっても彼らが人間のように考え、話したりはしない。歴史という巨大な流れを、犬たちの血脈に沿わせて俯瞰した大きな流れと、その中で生きる様々な立場のイヌと人間たちがある。
一見すると、人間たちの都合に犬たちの運命は翻弄されているようであるが、人間たちも歴史と運命に翻弄されている。そして、犬も人間も、目の前に現れた所与の条件を最善に生き延びてゆくしかないのである。

読み手を選ぶかもしれませんが、他に類の見当たらない独特な構造、語り口と、読後感はとても印象的です。

ただし、ひどく世界史オンチな人は、読む前に第二次大戦〜朝鮮戦争・ベトナム・アフガンの事をさらっと理解しておきましょう。
本書を読んで、アメリカの泥沼がベトナム戦争なら、ソ連の泥沼がアフガン戦争であり、どちらも同じような泥沼化をたどった・・という視点にナルホドと思いました。

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 08:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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