2010年05月09日

天地明察 沖方丁

戦乱から泰平へと移行しつつある江戸初期。侍の役割も、社会が目指す方向も変わっていくこの時代に、22年の歳月をかけて改暦という一大事業に取り組んだ男がいた。

これは、彼の”幸福な人生”の物語です。

当時、800年前から使われていた「宣明暦」が誤差を生じ改暦の必要があったが、これを行うべき朝廷はすでに天文や算術のテクノロジーを失っていた。そこで、江戸幕府碁方(碁を指南することで幕府に仕える家)出身でありながら、算術・暦法・神道にも通じた若き渋川晴海が抜擢される。
陰の事業発起人は、二代将軍・徳川秀忠の御落胤にして初代会津藩藩主・保科正之。春海を支援するのは、のちの黄門様こと水戸光圀や、江戸幕府大老・酒井忠清をはじめ、和算の開祖であり算術の天才・関孝和、異端の神道家・山崎闇斎などなど。
多彩な登場人物たちとの心震える交流が、渋川春海の人生を賭けた事業と、彼の人間的成長を後押ししてゆきます。

以下に、小説とは知りつつ気付きになった事をメモ。

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歴史が証明している。日本のあらゆる諸勢力が天皇を滅ぼさせない。滅ぶのは逆賊のほう。
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社会システムを大きく変えるようなものは、適用された時の影響を吟味した上で導入しなくてはならない。
・・外国人参政権とか?
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「武というものは、のさばらせれば国を喰らう」(秀吉の朝鮮出兵が、武士に仕事を与え国内の需給ギャップを埋める戦争経済ゆえであることを喝破した保科正之の言)
・・軍需産業が米国を常に新しい戦いに駆り立てるようなものか。
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『「嫁に来てくれないか。いや、まずは気持ちを伝えようと」「婚礼の儀に、気持ちも何もないでしょう」これが武家の常識であった。』
・・かつては、「個」というものが社会においても本人の意識においても現代のようには顕在しておらず、人生が、より大きな社会や家・役割といったもの中に組み込まれていたのだろうなあ。
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「天照大神が世をお治めたもうた要領は以下の3つ。
・己を治め、私をなくす事(為政者の滅私)
・仁恵を重んじて民に施し、民を安んずる事(民生の安定)
・多くを好んで問い、世情を詳しく知ること(世情の把握)」

・・・滅私の政治家って、いまは誰かな?民衆の声は、いま政治に届いているかな?
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吾を欺かざる
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座相は、日々の修練の賜物。座った姿勢に品格や人徳が出る。
・・判る!判るなあ。。道場で相対すれば一目瞭然です。
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戦国の世=侵略阻止・領土拡大・領内治安
太平の世=民の生活向上
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「この国には、実は正しく民を統べる権威が存在せず、いつまた覆るかもしれない」「権威の欠如が真の自由闊達を意味せず、本当に”何もない”のだとしたら?」
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江戸幕府が生まれたとき、人々は過去から未来を包括する新しい世界観を欲し、朱子学がそれに応えた。
・・21世紀の新しい多極化世界で、日本は何を支柱とするのか?まさか”武士道”をそのまま持ち出してくる訳にもいかない。
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天地に真剣勝負を挑んだ渋川春海と、彼を取り巻く様々な人間たちが魅力たっぷりに描かれます。彼らの喜怒哀楽、生きがい、情熱、恋、死別、友情、そして人生を賭けた大勝負!

泣きます、興奮します、引き込まれます、ほのぼのします、そして唸ります。470ページをあっという間に駆け抜けます。一流のエンターテイメント小説です。

本屋大賞2010年、第一位。納得です。

読むべし!

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posted by 武道JAPAN at 23:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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