2010年04月21日

北朝鮮・中国はどれだけ恐いか(朝日新書) 田岡 俊次

著者は朝日新聞出身の軍事ジャーナリスト。
2007年出版なので、各国(特に中国)の軍事力データがやや旧聞に属するのと、著者の姿勢に若干の偏りを感じる点を除けば、幅広い軍事知識を駆使して有益な視点を与えてくれる一冊。以下メモ。

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・北朝鮮の核
数発〜十発程度の核を保有し、日本に落とす能力はあると見るべき。米国本土には届かないし、本気で米国に攻撃されれば破滅しかないので理性があれば撃てない。撃つとしたら自暴自棄になった時で、その場合は核抑止は効かない。つまり日本にとっては脅威で、米国にとっては脅威ではない。

・北朝鮮の崩壊
韓国にとって脅威。難民流入で、東ドイツを吸収した西ドイツ以上の経済負担となる。中国も、国境内部に朝鮮民族が多数いるため、自由で豊かになった統一朝鮮と国境を接したくない。

・核ミサイルへの対処
- MD(ミサイル防衛)は無意味。多数の囮で偽装されたミサイル群が飛来すれば全数撃破できない。ないよりはまし。
- 核武装はNPT体制の崩壊につながるため米国との深刻な対立を招く。
- 先制攻撃論も非現実的。相手が撃ちそうになったら攻撃すると言うが、偵察衛星は一日に数度しかミサイル基地の上を通過せず常時監視はできない。また、弾道ミサイルはまず垂直に上昇し、その時点ではどこを狙っているか判らない。核を搭載しているかも判らない。日本が攻撃した後に「衛星だった」と主張されても抗弁不能。
- 地下防空壕への避難が効果的。被害を1/4に減らせる。

・どの国も国益優先
ベトナムがクメールルージュの虐殺を見かねてカンボジアに侵攻した際、米中はベトナムを非難した。当時、米中はソ連と対立しており、ソ連に接近したベトナムを敵視し「敵の敵は味方」というだけの理由で極左のポル・ポトを支援した。この3者の関係にどのような正当性があるか?
「価値観」「イデオロギー」といった抽象概念は外交の現実においては意味が薄い。国家は意外なほど目先の利益で変り身をする。

・台湾独立はない
中台双方が現状維持を願っており、日米韓など周辺国の利害にも合致する。

・中国の軍拡
18年連続2ケタ増は誤り。96年以降、03年をのぞいて実質10%の伸びが正しい。
軍事費増加の主因は経済成長(日本でも高度経済成長時代には同様な軍事費の伸びがあった)とインフレ(近代兵器の調達コストは年々上がっている)。
空母建造が話題になったが、米・英・仏・ロ・伊・西に加えて印・タイ・ブラジルや、実質的には韓国日本も持っているため、騒ぐのはおかしい。

・中国を敵に仕立ててはいけない
中国脅威論は、ソ連崩壊後「次の敵」が必要になった米軍による作為。一時は「次の敵」候補として日本が核武装するという日本脅威論も展開された。テロとの戦いという「次の敵」を見つけた米国は中国との融和に切り替えた。
日本に脅威論が流布されるのは、日中接近が過ぎると米国の国益に背くため。冷戦思考を引きずって「米国は日本の味方、中国の敵」と単純に見てはならない。日米は経済・防衛のパートナーであるが、中国市場を狙うライバルでもある。

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・・と、無用な対立を助長する右寄りの言論を諌める姿勢です。
たしかに、ここまで世界経済が一体化した時代において武力で何事かを決着するのは現実的でないでしょうし、中台がミサイルを撃ち合って冨とインフラが集中している沿海部を戦火に巻き込めば資本は逃げ出し双方大損・・という見方には説得力があります。

とはいえ、中国軍が急速に近代化を成し遂げ、米軍の干渉を退ける行動を見せ始めているのも事実で、本書でも対艦ミサイルを搭載した中国の潜水艦が探知されずに米空母キティホークの至近距離に浮上した事件などに触れています。(ただ、その後、「しかし対艦ミサイルは使い勝手が良くない兵器だ」などと一般論へとスルーしており、良書だと思うのですが若干の”腑に落ちなさ”が残ります)

善隣友好は進めつつも、武士の心得の如く侮りを受けぬ準備は常に油断なく進めておくべきでしょう。
軍備は勿論の事、同盟国や諸外国との関係強化・スパイ防止法の策定・土地の取得に国籍制限を設けるなど(諸外国は外国人の土地取得にきちんと制限をかけているが、日本は法が整備されていない)、核武装などを考える前にすべき事は山ほどあります。

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 23:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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