2010年04月10日

日本力 松岡正剛、エバレット・ブラウン

Amazonの紹介文に「ベストセラーを連発する“知の巨人”松岡正剛と、“現代のフェノロサ”エバレット・ブラウン。ふたりが照らし出す本当の日本の豊かさ。」とあり、二人の対談とエバレットの写真を収録した本書を、とてもうまく表現しています。
「日本の教養人」と「日本を良く知る異人」は対話によって、廃れかかった日本社会に埋もれている文化の堆積を掘り起こしていきます。以下メモ。

・・・

日本人の知が衰退している。
ひとつの原因は60年代安保以降、国民の考える力を削減する目的で導入された偏差値教育。一部のエリートだけを残し、一般の国民からは自ら考えたり議論したりする能力を削いで、与えられた正解を受容して○×で答えるだけの技術者を作るという政策を、意図的に行っている。それも20世紀工業社会では有効に機能したが、21世紀には新しいOSが要る。

身体意識も変わった。ハラを中心にした丹田の感覚が消えた。「腹が立つ」が「頭にくる」に登り、「キレる」という身体のどこだか判らない感覚になった。

日本は火山国のためか熱がこもっていて暖かい。水蒸気も多く、中国のように月や星がくっきりと見えず霞んだりする。曖昧さがある。山や川で区切られ少し移動すると次々と風景が変わる。大陸のようにズーッと砂漠・・というような環境が無い。多種多様なものが詰まっている。三河と尾張で文化が違ってよい。その範囲が「クニ」であり、かつては藩や村が共同体意識の中心だった。明治になって初めて国家という概念を権力者が作り、戦争まで引っ張っていって敗戦以降は国家観が解体した。
今もう一度共同体意識を呼び戻すために憲法に愛国心などを入れてもダメ。氏神を奉る範囲の、郷土愛を復活させる事が有効だろう。

下地となる文化・ホームポジションをしっかりと持っていて初めて、その上に異文化や新知識を取り入れて吸収できる。いま日本人には自らの文化伝統に根ざした「下地」がないため、インターネットが普及しても情報の海に溺れる人がいる。海外に出なくても国内を旅行したりして、自分達の足元=文化の深層を見直し自らのバックボーンを探すと良い。

日本人は、ヨーロッパ人のようなスローライフが本当は得意なはず。

日本の神は遠いところから来て、また去る。遠方より訪れるマレビトを歓待する風習がある。古代の日本人は遠くにあるものを感ずる能力を大切にした。例えばネズミが災害を予知する能力を信じてネズミが移動する方向へ移住したり船の進路を取ったらしい。

30年使える漆器や磁器は高価であるが、それを作る技術が途絶えれば蓄積してきた膨大な時間という価値を失う。

子供に影響を与えるのは親や環境よりも社会で出会う「変な人」。今は異質なものを排除しすぎて異人に会う機会が少ない。

日本は無宗教というが、かつては神仏習合で煩いくらい神様も仏様も身近に居た。
明治になって国家をまとめるため廃仏毀釈し、天皇を現人神とする国家神道を作った挙句、敗戦で天皇が人間宣言したため「神も仏も天皇も、もういいや」となった。そういった人々が経済的繁栄に新たな夢を託し、美しい国土や伝統を破壊して顧みない世代となった。

戦後半世紀以上が過ぎた現在、宮崎駿の映画や古神道の世界観を素直に受け取れる若い世代が復活している。

ネットの中に「座」(コミュニティ)が発生している。次のステップはネットの中から出て現場に行くと良い。

コスプレは現代の祭り。非日常空間である祭りが現代社会から消えてしまっているため若者が自主的に作り出そうとしている。禁止してはダメ。

日本には重厚な文化の堆積がある。しかし現代日本人はそれから切り離され外国人に近い。日本は根の無い大木のよう。しかし、発掘しようとする人々がたくさんいる。
文化財として遠ざけられた伝統を生活の中に取り戻し、前衛的で創造的で遊び心にあふれた文化を再興すべし。

西洋ではデカルト以来、個人や自我といったものが確かに存在すると思われているが、それは幻想で、世界の実相〜小さな我(われ)を消して世界の中に開放されるという感覚〜は、日本文明の方が本質を捉えている。

・・・

若い世代が国外に出て行こうとせず、内向きに籠もっている・・という批判が最近聞かれますが、本書で指摘されているように、世界の変化期にあたっては自らの基盤となるホームポジションの確認がまず必須と思われます。しかし、不幸な事に我々はストレートにわが国の文化を継承できていません。我々の社会には一朝一夕にはとうてい掘り起こせない分厚い文化遺産があり、若い世代がその発掘に注力しているのだとしたら、まさに正しい行動を起こしているのだと思われます。その可能性を信じてよいのではないでしょうか?

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 10:23 | Comment(1) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Posted by 日本写真家協会 中道順詩 at 2011年02月17日 14:17
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