2010年04月06日

新しい神の国 古田博司

著者は慶應大学院(東洋史)を出て、ソウル大学大学院で学び、延世大学、漢陽大学などで日本語講師を務め、国費留学生として6年間韓国で研究し、現在は日韓歴史共同研究のメンバーでもある。30年近く北朝鮮の「労働新聞」を読み続け、韓国大統領来日の折には専門家として宮中晩餐会に招かれたという筋金入りの朝鮮研究者。

本書は、安っぽい嫌韓流などではなく、日本と東アジアは別の文明圏であるとする「別亜」論を中心に、ひろく一般に流布する「アジアはひとつ」的な勘違いを正します。といっても、けっして右に傾いた言説ではなく「武士道なんぞという狭い道徳は自分の家だけでやっていただき」とスルーして、等身大のアジアと別文明圏の立場から虚妄抜きで向き合おうと呼びかけます。

面白かったのは、左翼思想の過去と現在を俯瞰した第2章「マルクスどもが夢のあと」。実は正直に告白すると、なぜマスコミや政治の世界に日本嫌いの日本人が多数存在するのか今まで理解できていなかったのです。
自分は安保闘争の時代にはまだ子供で、高度経済成長の70年代を学生として過ごし、バブルの80年代に社会に出て、つまり資本主義以外の選択肢などあり得ない時代を生きてきたので、かつて資本主義と社会主義が同等に選択肢として扱われ、むしろ「インテリ」といわれる人々の多くが社会主義革命を本気で信じていた・・という事をイメージできていなかったのですね。本書で初めて「そういう事だったのかあ」と腑に落ちました。

以下メモ・・・

・1991年(ソ連崩壊)まで、日本には2つの近代化の道があると信じられていた。米国のように自由な資本主義の国になるか、ソ連のような階級の無い計画経済の社会主義国になるか。その中で、インテリとされる人々の多くは、社会主義が資本主義に勝るものと考えた。
しかし戦後、民主主義と自由経済が発展した日本(と続く韓国)で人々の生活は豊かになった。この間、文化大革命などで近代化への失敗を繰り返した 中国は貧しいままに留められ、ケ小平による路線転換からようやく発展を始めた。取り残された北朝鮮は未だ膨大な餓死者を出している。
やがてソ連が崩壊し、社会主義革命は壮大な虚構であったと明らかになったが、進歩的文化人や良心的知識人が推し進めてきた社会主義の幻想/反資本主義的慣性がなかなか止まらず、「反日的日本人」や「愛国しない心」を排出している。

・愛国しない人々の3類型

- 明治以来の西欧コンプレックス型 舶来礼賛 日本人劣等イメージ
- 社会主義革命を本気で夢見た人たち 天皇を戴く君主制を前時代の遺物として嫌う
- マルクスの残留思念としてのカルスタポスコロ 国家など権力者の作り出した幻想だ!とのたまう若者

その他、私は自由で国家なんか嫌いだ!という地球市民派や、アメリカの属国なんて!という反米パラサイト

・先の大戦は「英米の民主主義 vs 日本の天皇制ファシズム」と見る構図はいかがなものか。ファシズムは経済体制を含む概念であるから、正しい構図は「英米の資本主義 vs 日独伊の統制経済体制」ではないか。その後に「英米の資本主義 vs 中ソ東欧の国家独占型経済(社会主義)」の冷戦があったと見るべき。

・近代随一の課題は国民国家の建設であった。共通語を定め、国民教育を施し、法と官僚制度を整備して常備軍を持つ。そのために日本は天皇を核とする立憲君主制を選んだ。天皇は近代国民国家創設の触媒となったが、その後、一神教的な現人神に祭り上げられてしまった。時代がポスト近代になった今、天皇は日本国民の象徴で良いし、宮中晩餐会などに出席すると全てが実に自然でわざとらしいものがなく、よくぞこのように美しい伝統が残ったものだと感心する。

・日本でアジア主義を唱える人は、右であれ左であれ本当のアジアの姿を知ろうとせず、独善的で一方通行な関わり方をしてきた。戦前の軍国主義者は侵略し、戦後の進歩的知識人は贖罪意識に取り付かれた。
その基盤には、同一文明圏であるという誤った思い込みがある。日本は、中華/儒教文明とは別の文明圏であり、「脱亜」などする必要は無く、はじめから「別亜」。

・東アジアの社会を読む上で重要なキーワードは「宗族」。自分達の血縁だけが重要であり、国益よりも血族の利益を優先する。その結果、特定の血族が国家を私物化する「王朝」支配が繰り返される。

・日本では罪人も死ねば仏になると考えるが、中韓の宗族社会で尊いのは自分達の先祖だけであり、他家には尊敬を払わない。敵の墓はダイナマイトで爆破する。

・アジアの人々は良い人達で話せば判るという思い込みは間違い。中韓から見ても日本人は話しても判らない理解できない人達。日本的「和を以て貴しとなす」は中華文明圏には通じない。

・西欧は現実主義/日本は写実主義/中国は虚構主義 頭の中で「かくあるべし」と思うことに現実のほうを当てはめる傾向がある。自分達の方が道徳的に優れている(中華思想)とか、戦ってもいない日本に勝った(抗日勝利)という偽史を作り上げる。

・2ちゃんねるに見られる「茶化し」は日本に伝統的な庶民の文化である。日本は他国の文化を積極的に吸収するが、換骨奪胎して結局は自分達に合ったものしか残さない。
アジアから輸入した儒教をモディファイし、科挙試験や学閥政治という硬直した体制を受け入れず、不気味な宦官制度からは目を背けた。西欧キリスト教の処女懐胎や復活などハナから嘘だと馬鹿にし、厳格なる法の支配も喧嘩両成敗の和の精神で緩和し、民主主義の多数決と合議制の全員一致を混在させる。

・北朝鮮は地上の楽園であり、拉致など存在しない、核開発などしていない・・といったあまりにも多くの嘘と、嘘とわかった後でも謝罪しようとしない左派の態度が、かえって若い世代を右傾化させている。

・中国では王朝交代時に戦乱があるが、それ以外は滔滔と太平楽が続く。日本では中世以来400年間武士の世になり国内は戦争だらけですぐキレる。他者に嫌われるといつ殺られるか判らないため、嫌われないように直裁的な言辞を避けて遠まわしに言い、感情を抑えて怒りを面に出さず、社交儀礼を絶対に手放さないで周囲に気を使うようになったのではないか。

・本来の仏教では、墓を作らない。遺体はガンジス川などに流す。位牌や墓を作るようになったのは、中国経由で儒教アレンジが加味された後。

・ヨーロッパ人は英米アングロサクソンを「全体の利益という仮面の下に自己中心的な国益を隠す名人」と見ている。

・・・

日本文明が中華文明とは別種という指摘は、ハンチントン教授が「文明の衝突」で既に述べていますが、本書でも「別亜」という判りやすいキーワードで説明されています。

自分自身、貿易の仕事を通じて、アメリカやカナダ、中国韓国台湾の人たちと付き合ってきた経験から「日本だけどうも特殊」というのが実感です。アジア人だから分かり合える・・などという事はなくて、むしろ平気で嘘をついたり契約でガチガチに縛ってなければ破っても平気というズルさはアメリカ人と中国人の方がセンスが近い・・と感じます。

反日暴動や毒ギョーザ事件などで、どうもこの人たちとは解り合いそうもない・・という実感が広く共有されてきたようですが、さてではどのようにお付き合いすればよいのか?「武道JAPAN」の理念でもある、「我々の社会が大切にしてきた価値を見直す」事が大事ではないかと思う次第です。

読むべし!





posted by 武道JAPAN at 11:13 | Comment(2) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつもつぶやきを楽しみにしています。

今回のエントリ、大変興味深く拝見しました。
最近の日本の混乱は、このマスコミや政治家に多い日本嫌いの世代が実権を握ってしまったことによる、という説を何となく感じていました。
世代論にすり替えるのは早計かも知れませんが、そう思いたくもなりますよね。
面白そうなので読んでみたいと思います。

以前のエントリの武田邦彦先生の環境問題については、最近完全に化けの皮が剥がれてきたようですが、民主党は全く気にする様子が
ないのが不思議ですね。
武田先生もブログをお持ちで、時々覗いています。なかなか楽しいですよ。

文明の衝突はなかなか衝撃的な内容でしたね。日本は友人を持てないような、しかし1つの文明圏として認めてもらったような不思議な感覚がありました。

しかし、孤立しているからこそ、他国との違いに気付かないとか、やたらと他国にすり寄るとか、排他的になるとか、世界でのつきあい方に慣れていないですね。
まるで転校生のようです。

ハンチントンは世界における文明の衝突なんかより、アメリカ国内でのエスニック増加の問題をより多く気にしていたとの説もあります。「地政学(奥山真司)」より。

「分裂するアメリカ」という著書もあるようですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BBP%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3

ま、だからどうこうってワケじゃないですが、、、。

ではまた。
Posted by じゃが〜 at 2010年04月06日 17:47
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Posted by 大絶画 at 2014年01月20日 21:24
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