氏は、作家としては経済や社会システムへの洞察が鋭いので、本書にもなかなか示唆に富んだ一言があるし、淡々とした語り口調も良い。ただ、あくまでエッセイなので専門書を読むような水準は期待せず、読むほうも淡々と読んだほうがよい。図書館で借りて読んだ。以下メモ。
・グローバリズムは思想ではなく潮流なので、拒否したり乗ろうとしたりしてもダメ。適応するしかない。
・決断というものは最優先事項が明確になっておれば難しくない。
・企画力や発想力を磨くには、長期間集中して考え抜く(つまり筋肉と同じように脳を鍛える)というミもフタもない方法しかない。
・夢や目標を持とうという言説には違和感を感じる。目標は人生に必須のものであり、目標を達成するには努力が要る。目標を持つのは浮かれた事でなく、基本的に憂鬱なことである。
・我々は消費者であり労働者である。消費者としては安く品質の良いサービスや製品を提供されて王様扱いをされるが、労働者としてはそれを支える為に競争にさらされ消耗させられる。
・語学や資格の習得は、人生を「やや」有利にするだけである。我々は、終身雇用と右肩上がり経済の名残で、「一生安泰」という幻想を欲しがるが、そんなものはない。
・「失敗から学べ」というが、それが有効なのは成功者がつまづく場合だけである。一般の労働者が失敗すれば準備不足や無能さを曝け出して批判や叱責の的になるだけである。
・・などなど。
「部下は掌握すべきなのか」という一説に「やる気やモチベーションのない人間は辞めてもらえばいい。自分はそうしている」とあるが、一般の日本企業でそんな事できれば苦労はないよと言われてしまいそうです。あくまで作家という仕事から見た論としてさらっと読むには良いでしょう。
自分は愛と幻想のファシズムが好きです。
「やる気やモチベーションのない人間は辞めてもらえばいい。」
この発言を会社の研修のグループワークで発言したら人でなしの扱いを受けました。
やる気やモチベーション上げる労力考えると、ベストな手段だと思ったんですけどね
能力低い方が全然ましです。