タイトルから察せられる通り、日銀批判の書。なぜ日本銀行は「信用できない」のか? 以下メモ。
・・・
・ほとんどの日銀総裁は何故か東大「法学部」卒業者である。他国の中央銀行のように、経済の専門家ではない。日銀は、他の多くの中央銀行が採用している正統的な経済理論を用いず、独自の「日銀流理論」で動いている。
・日銀は、インフレを極端に恐れ、物価の上昇率をゼロに抑えようとしている。このため日本ではデフレ不況が起こり易くなり、過度の円高と産業の海外移転や空洞化、地方の疲弊をもたらしている。
・著者の考えでは、「良いデフレ」というものはない。1%のデフレは3%のインフレと同じくらいか、それ以上に悪い。2%程度のインフレが経済の成長にとって必要かつ適切。(つまりインフレターゲットを設定せよ、という)
・インフレターゲット採用国ではインフレの抑制とGDP成長率の両方を達成している。
・日本では、過去の統計からインフレ率を2%程度にすると、失業率を最も低く抑えられるが、1%程度のわずかなデフレでも、失業率は急激に上昇する。
・最近の経済学では、不況の理由は急激な通貨流通量の減少であるという意見が主流。リーマンショックのような危機に際して、有効な手を打てるのは政府と中央銀行しかないにも関わらず、危機後の各国の通貨増加量を比較すると、日銀は危機対応に最も消極的な中央銀行である。
・新日銀法は、@金融政策の目標設定 A目標達成の手法、の両方を政府のコントロールから切り離してしまった。他の主要先進国では、数値目標を伴った目標を政府が策定し中央銀行には手段のみを任せている。つまり日銀は、誰にも義務を負うことのない目標を勝手に策定し、その達成手法も自由裁量である。これはガバナンスの効かない状態であり、是正されるべきである。
・・・
著者は、クルーグマンやバーナンキと同じく、インフレターゲット支持の立場と見えます。
インフレターゲットとは、景気を良くし経済成長を持続させるため、中央銀行が2%程度のインフレ(物価上昇)を意図的に目指す政策です。
方法としては、金利を下げるなどして市中に出回るお金の量を増やしたり、「2%程度のインフレを目標とする」と言明する事で、人々が安心して経済活動に邁進するのを促す・・など。
ただ、インフレターゲットには反対論もあり、本書を読んだだけで是非が判断できるほど簡単ではありません(専門書をもっと読めばさらに判らなくなるかも・・なにしろ経済の専門家同士でも意見が分かれ、論争があるのですから)。
本書は、全体としてかなり判りやすく書かれているのですが、中央銀行がインフレ目標を明言すれば、人々は物価が下がらないような施策がなされるだろうと信頼して景気は悪化しない・・という点は何度読み直してもストンと得心は出来ませんでした。
しかし、本書で指摘されているように、日銀には官僚的な「責任回避の体質」が漂っているような気がします。その意味で、著者の指摘通り、「金融政策の目標設定」を政府の手に取り戻し、日銀に目標達成の責任を与えるべきではないかと思います。
読むべし!