2010年01月03日

日本辺境論 内田樹 【武道家の書いた本】

著者は、1950(昭和25)年東京都生まれ。東京大学文学部卒。神戸女学院大学教授。
合気道六段、居合道三段、杖道三段。神戸女学院大学合気道部顧問。(※2010年01月03日時点)

日本ほど日本人論が盛んな国はないという。他国では、自分達について「我々は何者か?」という議論は、あまりなされないらしい。では、なぜ日本では日本人論が盛んなのか?そして「決定版日本人論」が存在せず、なぜ何度も同じ問いが繰り返されるのか?

著者によると、「最初にお断りしておきますけど、本書のコンテンツにはあまり(というかほとんど)新味はありません。でも、新味があろうとなかろうと、繰り返し確認しておくことが必要な命題というのはあります。私たちはどういう固有の文化をもち、どのような思考や行動上の「民族誌的奇習」をもち、それが私たちの眼に映じる世界像にどのようなバイアスをかけているのか。それを確認する仕事に「もう、これで十分」ということはありません。朝起きたら顔を洗って歯を磨くようなものです。一昨日洗ったからもういいよというわけにはゆきません。」との事で、丸山眞男や梅棹忠夫によって既に分析されてきた日本人論を、あらためて理解しなおす・・という内容になっています。

そして、スムーズな理解のために「辺境」という地政学的補助線を引きます。

以下要約。

●日本人はきょろきょろする

客観的には、日本文明は世界有数の歴史と水準の高さを持つにも関わらず、我々の意識の底辺には、「自分のところはなんとなく劣っており、本物の文化は他所で作られる」という気持ちがある。
常に外を向いて何か新しい事はないか?他国と較べて自分達はどうだろうか?と気にしている。その理由は地政学的な歴史にある。

日本が国家としてまとまりを見せ始めたとき、アジアには既に中国という文明の中心があった。その中華文明は「我こそ世界の中心の国(=中国)」であり、周辺国を「北狄・東夷・南蛮・西戒」と呼んで文明の及ばぬ野蛮な「辺境」と見なした。

そのコスモロジー(世界観)の中に生まれた日本は、自らを周辺辺境国の、さらに海を隔てた遠い国と認識して出発した。

軍事的にも文明的にも強大な大国が海の向こうにあり、そことどのように関係を取るかが死活的に重要であったため、外部の先進文明に対して敏感で好奇心旺盛で、学習意欲が強く、実際、驚くほど柔軟かつ効率的に新知識を学びながらも自分たちに都合の良い部分のみを吸収して応用するという民族を育てた。
江戸末期に、アジアで唯一西洋文明をいちはやく吸収し明治維新を可能にしたのも、この民族性による。

この「新しい常識に対する変わり身の早さ」「病的なまでの落ち着きのなさ」が日本人の気質となっている。

●日本人にはオバマ演説はできない

日本は国家創世の成り立ちに特定の理念を持っていない。日本国は、この列島に暮らす人々によって自然に作られた。
「国家の目指すべき目標」や「我らの原点たる理念」を持たないため、政治家もそういった類の演説ができない。
日本を語るときには、他国との比較でしかものを考えられない。

●空気で戦争する

自他の区別があいまいで、集団のためには個人の利益や欲望を忘却する渾然とした「和」の世界に暮らす日本人は、論理的な議論を重ねて意思決定するよりも「その場の空気」で物事を決定する。戦争すら、そのような集団の意思決定にゆだねられ、事後には「反対できる空気ではなかった」といった説明がなされる。

●日本人の特性

日本人のメンタリティはフォロワー(追随者)であり、受身で被害者意識が強い。運命を変える出来事はいつも海の「向こうから」やってくる。相手がどう出るかで、こちらの打ち手が変わる。自分から戦略性をもって働きかける事がない。
先行した成功者を模倣する事には驚くほど卓越しているのに、自分が先導して世界を導く番になると思考停止する。

・・・

念のため申し上げておきますと、著者は、「だから日本人はダメ」と言っている訳ではありません。
こんな変わった国は歴史上他に類を見ないし、その国が生き延びてきている以上なんらかの召命があるのだろうから、とことん「辺境人」で行こう、と提案しています。その方が、我々にとっても世界にとっても有意義でしょう・・と。

その他、辺境人としてのメンタリティから発する学びの意識が創る「道」の話や、振り下ろされる白刃の下に生まれる「機」の時間感覚など、新書250ページという手軽さながら、興味深くまた納得できる話が満載で、ベストセラーになるのも頷けます。

自信を持ってオススメします。読むべし!




posted by 武道JAPAN at 18:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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