本書でも、政府や金融機関が公表している一次資料に基づいて冷静に日本のバランスシートを分析し、根拠無き悲観論を叫ぶマスコミや似非エコノミストを「日本破綻原理主義者」と呼んで痛快に撃破しています。目からウロコです。以下メモ。
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・「日本の債務は国民一人当たり○○円!」は嘘。日本国債を買っているのは国内金融機関であり、その原資は国民の預貯金。つまり国民は「債権者」(金を貸している立場)である。
・政府の債務増大は問題ではない。全ての先進国で増大している。企業でも、事業規模が大きくなれば借入れ(運転資金)が増える。日本の問題は、借入れが増えたのに事業規模(GDP)が伸びない‐つまり経済の効率が悪い事。
・そもそも政府が借金を返す必要はない。貸している金融機関も返して欲しいと思っていない。期限が来たら繰り延べすれば良い。紙幣を発行しても良い。
・国家がデフォルトするのは海外からの借金が返せないから。日本は世界最大の対外債権国であり、円建てで発行した国債は、国内の潤沢な預貯金によって国内で消化されている。国家破産はありえない。
(もっとも、国債の発行額が増加すれば予算に占める利払い費の割合が増加するし、国債の引受け原資である国民の預貯金や保険が減っている状況で、いつまでも国債を発行できるはずはないと思いますが、この点は不明です)
・日本の成長は世界で2番目の巨大な内需がポイント。GDPの6割は個人消費。
◆2006年度 日本のGDP内訳
民間最終消費支出 56.9%
政府最終消費支出 17.6%
総固定資本形成 23.6%
在庫品増加 0.5%
純輸出 1.4%
(輸出対GDP比(GDPに対する輸出の割合)を見ても、ドイツや中国、韓国が40%近くであるのに対し、日本は20%に満たない。)
・「公共事業は悪」か?
景気後退時は民間に支出を求めるのは(民主主義国である限り)不可能なので、政府が支出を増やすのは当然。無用なハコモノは論外としても公共事業=悪という考えは短絡。
・「公務員は削減すべし」か?
公務員の給与はGDPの「政府最終消費支出」に含まれる。公務員数または公務員給与が経れば、「政府支出」が減ることになってGDPを押し下げるが、それで良いか?
・不況期は低金利であるため、長期の巨額投資が必要になるデフレビジネス(鉄道や空港、港湾の整備など)が盛んになる。この分野に圧倒的強みを持つ日本に有利。
・2009年4月のIMF発表によると、日米欧の不良債権規模は次の通り
アメリカ 2.7兆ドル
欧州 1.19兆ドル
日本 0.15兆ドル(日本の被害はぬきんでて軽微)
・オバマ政権の景気対策の8割は教育、医療、交通インフラの整備等。グリーンニューディールには実は1%強程度。
・日本の強みは、東京というメガロポリス−治安が保たれ、交通網が完備されている事で周縁に裾野が広がり世界最大規模の人口を有する都市となっている。
政府の経済対策(09年度補正予算)で、リニア新幹線の実験が前倒しされた。東京−中京圏を40分で結ぶリニア線が開通すれば東京−名古屋−大阪を結んで人口5000万を越す世界最大のメガロポリスが完成する。
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民族感情的な「日本最強」論ではなく、データのドライな分析から導いた結論として書かれているため説得力があります。
毒入り金融商品による被害が最も軽微で/国内にまばゆいばかりの純粋なマネー備蓄があり/デフレビジネスに強い技術や企業が存在する日本には、繁栄するための人、モノ、金、技術の全てが揃っている・・と、心強いばかりの評価です。
「足りないのは、国民の情報リテラシーだけで、これは日本人自らが勉強するしかない」と結論付けており、大いに共感します。読むべし!
■本書について書いている他のブログ
廣宮孝信の反「国家破産」論 ブログ
リアル読書ブログ