2009年09月09日

ダイアネティックス ― 明確な思考を取りもどせ!  L.ロン ハバード

本書は、米国の作家 L・ロン・ハバードが創始した心理療法の理論&カウンセリング技術の体系「ダイアネティックス」について解説したもので、1950年に米国で出版された後、50以上の言語に翻訳され合計2,000万部以上の大ベストセラーとなった。

まず最初に「存在の目的は生存である」とキッパリ割りきっているところが気持ちよい。人生の目的は「愛」だの「夢」だのとキレイゴトを言わない。(愛や夢を否定しているわけではありません)

その上で、人間は「生存の可能性」が高まると心地よく・快感を感じ・元気になるが、可能性が低くなると元気を失い・イライラして攻撃的になり・鬱になり・死ぬ、とする。

●生存の可能性が高まる → 褒められたり、仕事がうまく行ったり、仲間に認められたりして、未来における安全や生存の見込みが向上する状態

●生存の可能性が低くなる → 上司に怒られたり、社会的な失態を演じたり、戦争が起こったりして、先行きに希望が持てない状態

人間の生命力は、この「最高・無敵(ほぼ永遠に生きられる)」〜「生存の可能性ゼロ(死)」までの間を上下する、と説く。

また、人間には、無意識状態で知覚した出来事の記憶「エングラム」が多数存在し、心理の深層から影響を及ぼして非理性的で逸脱した行為を引き起こす。このエングラムを「オーディティング」と呼ばれるカウンセリング手法で探し出して消去する事で心身のパフォーマンスが向上する、という。全てのエングラムを取り去った人間は「クリアー」となり、健康で生産的で高い知性(最低でもIQ.135を超える)を発揮する。

「エングラム」は次のようなメカニズムによって発生する。

・人間は生涯において知覚する全てを「標準記憶バンク」に保存しており、この記憶は(普段は意識していなくても静思すれば)呼び出すことが出来る
・事故などで意識不明の状態にある間も知覚は働いており、音や会話、周囲に放出された感情などを記録するが、この記憶は「エングラムバンク」と呼ばれる場所に格納され「標準記憶バンク」の中に見つけられない(記憶がない)
・エングラムバンクに保存された無意識時の記憶が「エングラム」であり、そのままでは何も問題はないが、何かの刺激によって「キーイン」すると、人間に様々な逸脱をもたらす

【例】交通事故にあって昏倒した人間に「動かすな!」と言う声が聞こえる。その言葉がエングラムバンクに保存され、何かのきっかけでキーインすると、本来の意味である「救急車が来るまで動かすな」とは全く無関係な心理的拘束となる。例えば部屋が散らかっていても物を片付けられない(動かすな!)といった逸脱を引き起こしたりする。本人は、片付けができない理由がわからず、色々と見当違いな理由を考え出す。
※したがって、無意識状態にある人間の近くで、不用意な言葉を発してはならない。

・事故や精神的ショックなどの他、人間は、胎児の時代にちょっとした要因で「無意識」に陥る。エングラムは「細胞に刻み付けられた記憶」であるため、感覚器官が未発達な胎児でもエングラムを受け取る。普通の人間でも数百のエングラムは珍しくない。
・最も初期のエングラム(「ベーシックベーシック」と呼ばれる)を探し出し、消去することがオーディター(オーディティングを行うカウンセラー)の目標である。

・・・

まだ視覚も聴覚もない胎児の段階で聴いた「言葉」がエングラムとなって後の人生に影響を及ぼす・・という件は簡単に信じ難いですが、本全体は非常に面白い視点で人間を分析していると思います。

しかし残念ながら、本書を読んでも「セルフ・オーディティング」はできません。「クリアー」になるためには必ずオーディターからオーディティングを受けねばならないが、どのくらいの時間が必要かは見積もれない、としており(平均300時間くらいらしい)本書が発売されてから60年ほど経過しているわりに、ダイアネティックスが広く普及していないのも無理はないと思われます。

また、オーディティングの技術はサイエントロジー教会というところが提供しているが、この協会は一部の国でカルトと認定されたりもしているようなので気軽に飛び込んでみるのは躊躇われます。(発明された技術は素晴らしいと思うのですが)

・・というわけで、とても興味深くまた有用性がありそうな内容ですが、本を読んだだけでは何ら役に立たず、かといって少々危険な風評もあるサイエントロジー教会に出向き300時間(その間に相当の費用も発生するであろう)掛けて「クリアー」を目指すというのも「・・・」なので、心理分野に強い興味のある方や、知的好奇心を満たすために読むという余裕のある方にお勧めします。
600ページを超える分量で、人間の心理構造に関する理論が独自の用語を伴って論じられるため読了には少々時間が掛かかります。

【追記】読了後に知ったのですが、ダイアネティックス理論と実践法を紹介したDVDがあるので、こちらも良いかもしれません。自分も近々入手してみようと思います。




posted by 武道JAPAN at 23:05 | Comment(3) | TrackBack(0) | 読書記録(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ダイアネティックスをちゃんと読み込んでいますね。理解力の高い人なんでしょう。たまたま、検索で見つけたのでお邪魔しました・・。
Posted by さとし at 2010年11月21日 10:57
わあ〜 こんな本も読まれてるんですね!

私先日、偶然ダイアネティックス赤坂に行ってきたんです。
「心のコントロールが簡単にできる方法を無料公開」
ということで、勧誘されるだろうなーと思いながらも飛び込んできました。されましたけど(笑)

でも話は興味深かったので、本を読んでみようかと思いレビューを探していたら、なんと、こちらに…!

しかし、やはり本は厚いし…用語も難しそう。
レビューを見て、DVDにしてみようと思いました。
素晴らしいレビューありがとうございます!!
Posted by きいです(^^) at 2011年04月15日 01:22
むむ知り合いが検索からたどり着くとは・・さすがに100冊以上書いているとこんな事もあるか。
それにしても相変わらずの怖れを知らぬ行動力はスゴイ!今度お互いの認識を相互シェアしましょう。

Posted by 武道JAPAN管理人 at 2011年05月13日 06:11
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