2009年08月05日

なぜ世界で紛争が無くならないのか 増田弘(監修)

世界の代表的な地域紛争を取り上げ、その背景を説明したもの。
取り上げられているのは、以下の7つ。

アラブとイスラエル/米国とイラク戦争/朝鮮半島危機/台湾海峡危機/日中危機/アフリカ(特にルワンダ)/東ティモール

大学の市民講座を基にまとめたもので、判り易く各々の歴史的、政治的背景を理解できますが、テーマごとに書き手が違うため、中には「?」な項もあります。

例えば「米国とイラク」の項では、米国の開戦の動機を「今でもはっきりわからない」とし、中東を民主化したいネオコン勢力が「簡単に勝てるだろう」と考えて戦争に踏み切ったのでは・・としていますが、大いに疑問です。イラクが石油売買にユーロ決済を導入し、米国のドル基軸体制に挑戦した点などには一切触れていません。

また、「朝鮮半島危機」の項では、北の核実験を受けて日本にも核武装論がある事に触れ、「もし北朝鮮が日本に核を打ち込んだとすれば強大なアメリカの核の傘は破れたことになり、日本単独での核武装は無意味」としていますが、そもそも核の傘の有効性そのものについては疑問をはさんでおらず、踏み込み不足な気がします。

とはいえ、世界の主要な紛争地域とその成り立ちを判りやすく概観するには非常に優れた内容と見ます。

世間によく聞かれる「宗教対立」や「民族紛争」はあとづけで、まず紛争(政治的な闘争)があり、それを戦う理由付けに宗教や歴史が持ち出されるのだ・・という現実を認識できます。

以前、ルワンダの虐殺を描いた映画「ホテルルワンダ」を見ましたが、大量虐殺に至る民族(というか部族?)対立が、そもそも欧州の植民地政策をルーツに生まれた。。などという事は映画では判りませんでした。以下メモ

・・・

◆アラブvsイスラエルの対立

・18〜19世紀ごろの欧州における「国民国家(ネーションステート)」成立に対し、それまで中東全域を支配したオスマン帝国の衰退がおこり、アラブ世界が「汎アラブ主義」を掲げて欧州勢力の脅威に対抗していこうという機運が生まれた。同時に、欧州の国民国家からはじき出されてしまったユダヤ人達の中から、ユダヤ人による国家建設を願う声が現れ(シオニズム運動)、これが現在のアラブとユダヤ(イスラエル)対立の基礎になった。

・アラブ諸国は概して人口が少なく、石油収入と一定以上の人口を持つ(=お金と人が揃っているため軍隊が持てる)国はイラクくらいしかなかったため、イスラエルに勝てるのはイラクだろうと期待されていた。

◆台湾海峡危機

・中国にとって台湾統一は妥協できない国家の目標。

・台湾の外省人(中国から渡ってきた漢民族)は人口の12%。この少数者が「大陸との対立」を作り出した。中国側も、台湾が民主化すれば統一が困難になるため、双方の利害が一致し、対立しながら馴れ合うという奇妙な関係が続いた。

・台湾は一人当たりGDPが1700ドルで中国の7倍。民主化され、成功している。自らを中国人と考える人は数パーセントで、中国人ではなく台湾人であると考える人が全人口の半数。自分より貧しい非民主化の国と統合される事は考え難い。

◆日中危機

・国家間で交流が深まると対立は解消されていくのが普通だが、日中間の場合は逆に摩擦が大きくなっている。国家間では国交を正常化しているが、国民レベルでは不信感が強い。

・中国の歴史観は100年に亘る欧日の侵略と屈辱を経て共産党による建国・・というストーリー。歴史認識のもつれに関して日本人は次の点をよく理解すべき。

1)日本では第二次大戦といえば圧倒的にアメリカとの戦争であり、主要舞台は太平洋であり、広島・長崎の原爆である。

2)中国でのそれは日本との戦い(抗日戦)であり、舞台は自国領土内であり、日本軍による侵略と殺戮である。

・日本は、侵略戦争に関して重要な節目で謝罪してきたのに中国国民に伝わっていない。先の大戦に関して国民レベルのコンセンサスができていないのが問題点。

・中国政府も反日教育をやめるべき。「日本が再び軍国主義化するのが心配か?」というアンケートに60%もの国民が「心配・わりと心配」と答えるような認識を作り出している。

・中国の「二分論」
日本人民と一部の軍国主義者を分けて考える論。先の大戦における間違いは、一部の軍国主義者が日本人と中国人民を不幸にしたものであり、日本人も被害者であるとする。
このような論で国交を正常化したため、戦犯を祀る靖国神社に国家の指導者が参拝すると、中国政府は国民に説明がつかなくなる。

・・・

そもそも本自体がかなり上手にまとまっているので、メモを取っていると一冊をまるごと書き写す羽目になりそうです。

一見複雑な世界情勢をかなり判り易く解説していて読み易くオススメです。読むべし!




posted by 武道JAPAN at 00:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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