京都までの出張時、新幹線の駅で買って読み始めたのだが人目のあるところで読む本ではなかった。涙をこらえられないのだ。
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終戦の60年後、自分達の祖父が特攻で死んだ事を知った姉弟が、当時の彼を知る人々を探して真実を追ってゆく。
凄腕の零戦パイロットだったのに、臆病なほど慎重で用心深く「命を無駄にするな」といつも言っていた。生まれたばかりの娘の写真を大切に持ち歩き、妻に「必ず生きて還ると約束した」彼が、なぜ特攻に向かったのか。。
カミカゼはテロリストと同じ・・と訳知り顔で批判する新聞記者に、「国民をあの戦争に駆り立てていったのはお前たちマスコミだ!」と怒鳴る元特攻隊員。
自分たちが参加するわけでもないのにデタラメな作戦をたてる参謀本部。国民に嘘八百を伝える大本営。
消耗品のように使い捨てられる兵たちの命。
フィクションだが実在の人名も多出する。戦争がどのように進行していったのか?なぜ日本は負けたのか?戦った人々はどのような思いを抱いて生き、死んだのか。。そういったものを学ぶ教科書としても優れている。
現代にも続く官僚の支配が、非人間的な作戦を生み出したのか?
日本のマスコミは、最近おかしくなったのではなく昔からマスゴミだったのか?
特攻の英雄を、戦後は一転して「戦争犯罪人」扱いする国民性とは何だ?
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小説としての出来栄えは必ずしも100点ではない。批評を加えることもできる。だが、そんな事をするよりも、グイグイと読ませる力に乗って一気に読んだほうがよい。
非論理的な作戦を立て、人間兵器を考案し、出口戦略のない戦争を遂行した極悪非道な軍の指導者達と、理不尽な運命を甘んじて受け入れ果敢に命を捨てていった兵隊達。。
国民は素晴らしいのに、無能な指導者が居座っているから、この国は人々を本当には幸せにしないのだろうか?
泣かずに読むことはできません。随所で泣いてしまいます。怒りで、悔しさで、人間に対する愛おしさで。。
読むべし!読むべし!