2009年06月23日

文明の衝突と21世紀の日本 サミュエル・ハンチントン

93年に発表されて世界的なベストセラーとなった「文明の衝突」から概要を抜粋し、98年に東京で行われた講演「21世紀日本の選択」の内容を収録した新書。
原本「文明の衝突」は500ページを超えるが、本書は手軽で読みやすいわりに「キモ」の部分はしっかりと入っている。読むべし!

以下メモ ・・・

●世界政治の構造
冷戦後の世界は政治やイデオロギーではなく、文化・文明同士の対決となる。また、二極体制(米ソ二超大国&他の国々)という構造から一極・多極(超大国アメリカ&他の国々)という構造に変化し、おそらく真の多極世界へと移行する。

●世界には以下の8つの文明がある
西欧・東方正教会・イスラム・ラテンアメリカ・仏教・ヒンドゥー・中華・日本(その他に、もしあるとすればアフリカ)

同じ文明に属する国同士は、他の文明に属する国同士より親近感を持ちやすい。また、同じ文明同士の国よりも、他文明の国同士は敵対しやすい。

現在支配的な西欧文明は、今後イスラムと中国という二つの文明圏からの挑戦を受ける。

●一極・多極世界には以下の4つの国家がある
1)唯一の超大国アメリカ
2)世界覇権は持たないが主要地域で支配的な役割を演ずる国(EU・ロシア・中国・潜在的に日本・インド・インドネシア・イラン・イスラエル・ブラジルなど)
3)ナンバー2の地域大国(イギリス・ウクライナ・中国に対する日本・日本に対する韓国・インドに対するパキスタン・インドネシアに対するオーストラリア・イランに対するサウジ・イスラエルに対するエジプト・ブラジルに対するアルゼンチンなど)
4)その他の国々

●日本について
日本は、他のいかなる文明とも違い、日本一国のみで孤立して一文明を形成している。最初に近代化した非西欧の国でありながら伝統的な文化を保持し西欧化しなかった。

その文明は高度に排他的であり、広く共感を得る宗教(キリスト教やイスラム教など)やイデオロギー(自由主義や共産主義など)を持たないため、それらを広めることによって他のどこかの国と親近感を共有することができない。他国に移民した日本人は、グループを形成するより他の文明に同化してしまう。

日本の危機に対して、文明的な親戚だからという理由で他の国が助けてくれることを期待できないし、他の国に対して義務を負ってもいない。

●東アジアの政治地図
東アジアには6つの文明(西欧・東方正教会・イスラム・仏教・中華・日本)が存在し、そのうち4文明の主要国(アメリカ・ロシア・中国・日本)が均衡するという状況を抱えている。

東アジアにおけるアメリカのプレゼンスが陰り、中国の台頭が明らかとなる場合、日本はこの二国との同盟を比較検討するだろう。(注:ハンチントンはアメリカの国際政治学者なので、その立場から見ている)

中国と日本とアメリカを結ぶバランスが東アジアの政治の核心であるが、日本と中国の文化の違いや相互不信は大きい。東アジアの将来の平和と幸福は、日中両国が共に生き、共に進む道を見つける事に掛かっている。

中国は、歴史・文化・伝統や自己イメージ・そして急激な経済発展により、2000年に渡って保持してきたのに最近100年ほど手放した、アジアにおける覇権を回復しようとするだろう。他の全ての強国(イギリスやフランス、ドイツや日本、アメリカとソ連)は、工業化と経済発展の後に強力な自己主張と領土拡張、帝国主義に走った。中国が経済力と軍事力を蓄えた後で、同じ事をしないと考える根拠はどこにもない。

中国の台頭は日本にとって難題であり、日米同盟の強化か、中国に順応するかの間で意見の統一ができず問題の先送りをするだろう。
日本は伝統的にバランシング(力による拮抗)よりもバンドワゴニング(強国との協調)政策を取り、道徳的に優れていると思われるものと協力する方針を採用してきたので、今後もそうなる可能性が高い。

以上 ・・・

本書は、世界に多大な影響与えた「必ず読んでおくべき一冊」であり予見の正しさは証明済みですが、この論文が発表されてから既に15年以上が経過した2009年現在においては新たな疑問も提示されるように思います。

例えば、グローバル経済という「共通言語」は各文明間の差異を際立たせるのか、縮めるのか?英語を共通言語とする「インターネット」という新しい文明は、今後どのような役割を果たしうるのか?など

また、果たして文明は必ず「衝突」するのか?
現在起こっている西欧とイスラムの衝突は、西欧文明と言うよりは唯一の超大国アメリカの傲慢に対する異議申し立てと見るべきでしょうし、それもオバマ政権への移行によって方針転換が期待されています。

世界は一極・多極構造から複数の地域大国が拮抗する「真の多極構造」に向かっているようです。
台頭して来た中国と、これからどんな関係を作っていくべきか?
政治の力、ひいては国民の意識レベルが必要とされる時代に差し掛かった今こそ、このような良書を読むべし!そして、我々日本人しか担い手の存在しない日本文明の「絶対に失ってはならない価値」を見つけ出そうではありませんか!




posted by 武道JAPAN at 00:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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