2009年06月18日

西洋と日本―比較文明史的考察 増田四郎 編

1970年出版の本。
著者の増田先生は一橋大学長、東京経済大理事長を勤めた歴史学者。専門は西洋史、西洋経済史。

大学での共同セミナーにおける増田先生はじめ4人の専門家の講演内容をまとめたもの。この中から、特にインド哲学者、仏教学者である中村元(はじめ)先生の「日本人の思惟方法」が面白かった。日本人の「(広い意味での)世界に対峙するあり方」が見事に描き出されているように思う。以下メモ。

・・・

日本人の思惟方法には大きく3つの特徴が認められる

1)与えられた現実の容認

日本の自然は世界では稀な部類に入る美しさ。そこで暮らす我々は、周囲の環境を好ましく受容し肯定して、世界は人間と対決するものではなく人間も自然の一部・・という融和的感覚で生きてきた。
熱帯や極寒、砂漠など、自然環境の厳しい場所(世界のほとんどはそういう場所)で生きる人々は、「ああ山が美しいな」などとぼ〜っと風景を見ることは無い。ボヤボヤしていると飢え死にするため、世界と「対決」し「戦う」感覚で生きている。

以下は日本人の「現実の容認」姿勢の類例。

・現象界における絶対者の把捉
例えば神のような「絶対者」を、この現象界(現実界)の外(遠い彼方)に設定しようとせず、現象界の内に認めようとする。(山や樹木や巨岩など、身近に見えるものを御神体として祭る、など)

・現世主義
今、今生がよければ良しとする。
古神道に未来観は無く、黄泉の国なども体系化された思想にはなっていない。未来に救いを求める仏教が伝来すると、その考え方に反発が起こり、すぐに救われる・生きながら仏になる・「即身成仏」などを生み出した。

・人間の自然の性情の容認
人間の持つ欲望や感情を認める。難しい戒律などで抑圧しない。

・人間に対する愛情の強調
慈悲の心を大切にする。愛語(優しい言葉を使う)。戦いが終わると敵の戦死者まで弔うという世界に類の無いセンス。

・寛容宥和の精神
異民族間の徹底的な虐殺を経て来なかった。戦乱はあったが、それは同じ民族の支配者同士が覇権をかけて戦ったもの。平安期以来、400年間死刑を行わなかった。キリシタン伝来で十字架像を見て磔を思いついた。

・文化の重層性と対決批判の精神の薄弱
ギリギリまで・・や、徹底的に・・をしない。悪人でも「まあいいや。この辺で許してやろう」と水に流してしまう。議論や追求をしない。

2)人倫重視的傾向

・人間関係を重視する
・位階的身分関係、主従関係などの「関係性」を重視する
・家の道徳を重んずる
・国家至上主義
・特定個人に対する絶対帰依
 例えば仏教でも、釈尊より宗派の開祖のほうを尊んで祀ったりする。
・帝王(天皇)崇拝
 インド等では国王を重んじない。国王と盗賊は、合法/非合法の違いだけで、どちらも「民衆から奪う存在」としか考えられていない。
・派閥主義、派閥の閉鎖性
・人倫における活動の強調
 お坊さんが「作務」(掃除や食事の支度など)をして働く。他の国では何もしないで施しを受けて修行するのが一般的。「一日なさざれば一日食わず」の精神。労働が尊いと考える。

3)非合理主義的傾向

・論理的にどこまでも追求しない
・情緒的、直感的に考える
・複雑さを廃し、単純化を好む
・面倒なことはご破算にして単純化し、それを百万遍でも繰り返す

・・・

と、「ですよね〜」と肯かざるを得ない分析が並ぶ。
40年近く前の出版だが、基本的に日本人は変わっていない。何千年もかけて培ったのだから簡単に変わるはずもない。

しかしグローバル化した世界で、共通ルールでしのぎを削る現在においては「論理的に考えない」「人間の関係性重視」「今が良ければいいや」という合理性や戦略性に欠ける態度では危ない。

こういった日本人の弱点は「操作しやすい国民」として内外の権力者には好都合だし、郵政選挙で小泉元首相のワンフレーズに踊らされた「深く考えず単純を好む」軽挙妄動な国民性を自覚し修正していかないと、最悪の場合は極端なナショナリズムや戦争への道・・という可能性も。
あまりある日本人の美徳はより高め、弱点は自覚して鍛えるべし。

既に絶版だが内容がすごく良い。復刻すべき名著と思う。探せば古書で手に入るので、今のうちに求めて読むべし!





posted by 武道JAPAN at 21:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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