ただ、全体として平易な言葉で判りやすく書いてあるので国際情勢の入門書としては良いでしょう。
・日本は平和ボケしているが、世界には戦争が満ち溢れている。武器を使う戦争以外にも諜報戦や経済戦争があり、日本も渦中にいる。
・80年代以降の日米経済摩擦も、日本では「経済摩擦」、米国では「経済戦争」と言われる。そのくらい意識に差がある。当時の大蔵省や経産省の持つ経済情報は世界でもトップで、米国はまずこれらの機関を潰しにきた。
・その経済戦争ではロバート・ルービンの指揮の元、ティモシー・ガイトナーやローレンス・サマーズ(みなユダヤ人)が手足となって日本に戦争を仕掛けた。オバマ政権にも同じような顔ぶれが並ぶ。彼らがどんな役割を担うのか徹底的に調べる情報戦が必要。
・国際社会では当たり前のことだが、同盟国であっても自国の利益を優先するので米国に安全保障を頼りきりの状態は危険。自国に都合の良い情報しかくれない。
・先進国で唯一、統一された情報機関がない(米国が作らせない)のが日本の重大問題。憲法で武力行使を禁止している日本は、紛争を回避するためにも情報活動は他国以上に必要。現在、内閣や警察・自衛隊等に分散している情報機関を統合する組織を持つべし。
・米国は北朝鮮より日本の核武装を警戒している。6カ国協議は、米国が日米同盟から手を引いた後の集団安全保障体制に移し変えられてゆく。「米露中朝という核保有国」&「中朝韓という反日国」の枠組みの中で、日本は困難な立場になる。
・北朝鮮とは国交回復を急げ。そのほうが拉致問題の解決も進展する。北朝鮮のウラン埋蔵量は潜在的には世界最大とも言われ、各国はこれを狙って投資を加速している。既に160カ国と国交があり、日本単体で経済制裁をしても無意味。かつて日本が把握する北朝鮮情報は世界一だったが万景峰号の入港を禁止したりして、さっぱり判らなくなった。
・オバマ政権ではアフガン派兵を要請されるが、なぜ日本がイスラムの人々を敵に回す必要があるのか。70年代のオイルショック時にイランは日本を助けてくれて人的交流が大いに進んだのに、今は米国の同盟国という理由で嫌われている。
・日米安保には、日本が攻撃された場合、米軍が日本を守るとは一言も書いてない。「アメリカが守ってくれる」という幻想は捨てよ。
・自由化、グローバリズムといった価値観の押し付けは日本の価値観解体戦略。国益に適わない。お金が全てではない。「一君万民」「和をもって尊しとなす」日本の価値観を大事にせよ。
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この著者には、中丸薫さんとの共著で「この国を支配/管理する者たち―諜報から見た闇の権力」(2006年発行)という対談がある。こちらに書かれていた小泉改革の舞台裏の話が面白かった。
・小泉改革は、自民党経世会を潰す戦いでもあった。郵政族のドンである野中広務の資金源を断つため、同和利権(野中氏も同和の人)で肥えた「食肉の帝王」浅田満のハンナングループを解体した。
・靖国参拝で中国との関係を悪化させ、江沢民以来の中国利権を独占していた経世会(竹下〜野中)を攻撃した。
・裏社会では稲川会(小泉、ハマコーら)と山口組(野中、亀井、古賀ら)の戦い。小泉は祖父の代から稲川会と関係があり、ハマコーも関係者。さらに稲川会はアメリカの裏社会(ブッシュファミリー)と関係がある、など。
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日本を取り巻く現状を、諜報の「現場」を踏んできたオヤジさんから教えて貰いたい!という人には最適です。読むべし!