2009年04月04日

中国の「核」が世界を制す 伊藤貫

「日米同盟を維持しつつ、必要最小限の核抑止力を整備しておくことは、21世紀における日本人の道徳的な義務である。」

・・・という結論で終わるこの本は、東大卒業後コーネル大に学び、20年以上米国ワシントンDCに住んで外交評論と金融分析を行ってきた伊藤貫氏によって書かれた。

多くの日本人にとって、意外で、受け入れ難いであろう「日本の核保有」について正面から論じた著作であるが、米国務省・国防総省・CIAのキャリア官僚・連邦議会メンバー・著名な国際政治学者たちと「核の傘」の有効性について長年にわたって議論し、米国の外交戦略の「本音」を知りぬいた上で書かれた内容には、きわめて高い説得力がある。久しぶりに「全日本人が一読すべき本」と感じた。

核武装の是非はともかくも、その議論すら封印されている状況は異常であり、多くの人の「外交」と「国際政治の現実」に関する認識のレベルを上げてくれるものと思う。米中や日本の一部の政治指導者にとっては「日本人には決して読んでほしくない本」であろう。

不思議なことに、Amazonでも出版元のPHP研究所でも「在庫なし」になっている。2006年に出版されたばかりなのだが?早く入手したほうが良い。

以下要点抜粋
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・21世紀の東アジアは、世界でもっとも危険な地域となる事を、多くの軍事学、国際政治学の専門家が指摘している

・日本は米中露の3大核保有国に包囲された「三覇構造」の中にいる(北朝鮮も核とミサイルを保有した)

・しかし日本では、国防に関するまともな議論がなされているとは言い難い。

・外交には「ウィルソニアン」型と「リアリスト」型の2つのパラダイムがある。

1)ウィルソニアン・パラダイム
米国大統領ウィルソンが唱えた、理想主義型パラダイム。国際法や国際機関の強化と、経済の相互依存が高まることで戦争がなくなるとする考え。日本政府が国民に外交方針を説明するときに良く使う。

2)リアリスト・パラダイム
現実主義的パラダイム。国際社会には、強制執行力を持つ世界政府も世界警察もないのだから、各国のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)を計って対処するのが現実的と考える。

・米国依存の「親米保守」や、自分が丸腰なら誰も撃たないというフィクションを唱える「反米左派・リベラル市民派」は、どちらもリアリストではない。

・日本では、この二つの極論が大勢を占めるが、世界各国の戦略思考はバリバリの「リアリスト」である。(ただし、公式発言は「ウィルソニアン」的な内容であることが多い。それら発言は全て戦略に基づく嘘)

・どの国も、自国の国益のみを追求しており、自国民を犠牲にしてまで他国を守ることはありえないため、米国の「核の傘」は有事には機能しない。日米同盟とは、日本に自主的な防衛力を持たせないための仕組みである。

・MD(ミサイル防衛システム)では日本を守れない。これを無効にする安価な技術が次々に開発されている。

・米国の政治家は、これらを十分承知しているが、日本を弱い国においたまま自国の覇権に都合良く利用する事が国益に適うため、「米国は日本を守る。MDがあれば安全」と言うだけ。

・キッシンジャーと周恩来は1972年2月に「日本が核を持つことを阻止する。日本に自主防衛能力を持たせない為に、米軍は日本駐留を続ける」との密約を作った。ブレジンスキーも2006年秋の公開シンポジウムで「米中間には日本にだけ核を持たせないという密約が存在する」と語っている。

・国際社会で、現実に真の発言力を持つのは核保有国のみである。

・「日本がその気になれば3週間で核開発可能」などという嘘を信じてはいけない。15年は掛かる。

・国家には、商人・軍人・哲人のバランスの取れた3要素が必要。
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1)中国の国家目標
2020年代に世界最大の経済大国になり、軍事費でも世界最大になる。アジア圏から米国の勢力を駆逐し、この地域の盟主としての地位を回復する。20世紀に奪われた領土は全て取り戻す。

2)米国共和党の戦略
日本には自主的な防衛能力を持たせず属国にしておく。中国との勢力均衡に利用できる範囲において親日的なバイアスが働く。

3)米国民主党の戦略
やはり日本には自主的な防衛能力を持たせず、米中で共同管理する。親中嫌日。中国共産党から多大な賄賂を受け取っている。

特にクリントン夫妻は、1980年代から繰り返し収賄している事で有名。中国人民解放軍が50%出資した「香港チャイナ銀行」から莫大な賄賂を受け取り、同銀行副頭取だったジョン・ホアン(人民解放軍の情報員)を米国商務省に入れた。ホアンは、CIAの機密リポートや財務省やペンタゴンの機密データを中国に流し続けた。
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ちなみに、著者が考える日本に必要な核武装は以下の通り

1)小型駆逐艦と小型潜水艦および、これに搭載する単弾頭巡航ミサイルが200〜300基。
2)コストは1兆円程度。GDPの1.2%。(世界各国のGDPに占める軍事予算平均の約半分)
3)先制攻撃や他国への侵略はしないのだから、米中露などが保有する多弾頭長距離弾道ミサイルなどは不要。
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実際に日本が核武装を準備するとなれば、米中は共謀して徹底的に反対するであろうし、まず何よりも国内世論が障壁になると思われる。

ただ、中国が軍事力を増強し続け、北朝鮮が核を開発しミサイル技術を向上させているにもかかわらず、国連も米国も有効な手を打てない状態が続けば、日本人が、自分や、自分の子供達の生命・安全・財産・権利を守るための自主的な防衛努力を考える事は、たしかに道徳的な義務であろうと思われる。




posted by 武道JAPAN at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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