2009年03月20日

テロリズムの罠<右巻>忍び寄るファシズムの魅力 佐藤優

グルジア戦争を機に見えたロシアの内在的論理を、ドイツの社会哲学者ユルゲン・ハーバーマスの国家論を引き合いに出して考察する章などは特に面白い!読むべし!読むべし!

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●世界情勢の不安定要因
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ロシアでは磐石に見えるプーチン20年政権の影でシロビキ(KGB軍団)との暗闘が始まっているが、2020年まではプーチン/メドベージェフの二重権力体制が続き、この間に国家イデオロギーが構築されるであろう。
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中国では、党規約に「科学的発展観」が盛り込まれた。中国のような大国家を運営するには国家統合のイデオロギーが必要であり、21世紀中国の新しい神話を創造する試みと言える。この背後には、自国民は優秀であり、優秀な民族が適者生存の原理に則って発展するという社会ダーウィニズム的発想が見られる。
同様のイデオロギーは北朝鮮の主体思想にも、より強く現れている。これらの状況に対応して生き延びるためには日本も粗相戦の準備が必要。
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大統領選でヒラリーが当選していれば、ブッシュ(父)〜ビル・クリントン〜ブッシュ(子)〜ヒラリー・クリントンと、二つの家族による米国支配が出現した。これでは金正日の北朝鮮と大きく違わない。オバマの勝利でこれは阻止されたが、このような「王朝化現象」が世界最強国で出てきたことには注意が必要。
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イスラムテロ組織は、世界に唯一のカリフ帝国を作ろうと本気で考えている。
米軍の執拗な掃討作戦にも関わらず、タリバンは地下にもぐり、いまやアフガンからパキスタンにまたがる一大イスラム帝国の出現があたぶまれる。
各国はムシャラフ政権を支える事でこれを食い止めようとしたが、2008年8月に大統領は辞任し、自体は混迷を極めている。
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北朝鮮からのシリア・イランへの各技術供与は深刻な戦乱の種となる。
イスラエルは、ユダヤ国家がなかったために第2次大戦時に数百万のユダヤ人が殺された事により、「同情されながら死に絶えるよりは世界を敵に回してでも生き延びる」事を国是としており、周辺の反イスラエル国による核武装を絶対に許容しない。

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●国民国家に未来はあるか
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国家は、歴史上普遍の存在ではない。国家をもたない人間社会は存在するが、社会を持たない国家はない。
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国民国家の将来として予測されるひとつの道は、資本主義のダイナミズムに対応できず意味を失くしてゆく方向である。世界的に連結された金融・労働力市場において企業は国家の垣根を越えて投資し、移動する。第三世界における大量で安価な労働力の供給により、自立救済不能なほどの貧困が第一世界にも出現する。国家は徴税を課す対象を失えば存続できないため国際競争力を増す優遇措置を企業に与えるが、同時に弱者のための福祉を切り捨てれば政治の放棄となる。このジレンマに効果的な答えはない。

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●経済恐慌とファシズムの足音
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資本主義を成立させる「纂奪の思想」には、人間と人間の連帯性を破壊する暴力が潜んでいる。勝ち組/負け組みの出現〜貧困の発生はこのメカニズムによる。
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労働者が団結し異議申し立てをしない限り資本は自己増殖のための搾取を強化する。搾取には限界があり、労働者が生活し、結婚して子供を作り、世代を再生産できるだけの物資を与えられなければ資本主義を支える労働者が消滅し、資本主義の存続も不可能になる。
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年収100万円台の若者が1000万人も居り、「夢は年収300万円になって結婚すること」という状況は格差ではなく貧困であり世代の再生産が不可能な事態。
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絶対的貧困は不安を生み、富める者への敵愾心と外国人への排外主義と結びつきやすい。また不安は、国家を強化する運動に自らを埋没させることで、不安を解消しようとするファシズムへの道へと人を追い立てる。
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「資本主義への異議申し立てとしてのファシズム」を食い止めるには、政党・宗教団体・労働組合などの中間団体が影響力を保持し社会民主主義的な仕組みを成立させなくてはならないが、全ての個人がアトム(原子)に分断された現下の社会情勢では、求心力を持つ中間団体が力を持ちにくい。
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新自由主義は、日本型経営や終身雇用制を非合理として破壊したが、その結果として分断された人々は、個人で世界に対峙しなくてはならなくなった。その不安定さの隙間にファシズムの忍び込む余地がある。いま、企業が貧困に対処するための何らかのアプローチが求められる。




posted by 武道JAPAN at 17:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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