2009年03月14日

幼児化する日本社会 ― 拝金主義と反知性主義 榊原英資

元大蔵官僚「ミスター円」こと榊原さんの本は判りやすく、なかなかうなずけるのだが、何となく物足りない。総花的に話題を拡げすぎたため、ひとつひとつを深く掘っていないのが惜しいのだろうと思う。

でも、間違った事は書いてないです。日本社会に警鐘を鳴らしています。後は具体的な処方箋が必要です。以下メモ

日本社会の幼児化
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何でも白黒・善悪・敵味方に判りやすく「ズバッと」やるテレビと、オール・オア・ナッシングで良いかダメと決め付ける満点主義が原因。現実の世界はグレーであり、物事には多様な見方がある。

日本は異質なものと出会う機会が少ない「箱庭社会」。異民族や宗教の違う者同士がダイナミックに交じり合う世界の中では特殊で脆弱。

家族形態
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農業社会(男女とも働く)→
戦後(よほど富裕な家庭の奥さま以外は女性も働く)→
高度成長期(専業主婦という形態が初めて出現)→
現代(ふたたび女性も働く)
・・というように「女性が社会で働かない専業主婦」というのは古い形態ではなく、比較的最近の数十年の現象。

ふたたび女性も働く時代が来たのだが、社会のシステムが専業主婦時代から変化できていないため、様々な弊害が出て家庭に於ける教育力が低下している。

事実婚の容認や、フィリピン等からナニー(ベビーシッター)を雇い入れる等の施策が有効では?

教育
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ゆとり教育は大失敗。日本の初頭・中等教育は先進諸外国からもお手本にされていたのに、壊してしまった。今は他国が、かつての日本のように充実した教育をしている。このままではポスト産業資本主義社会において日本の致命傷になる。

創造力を伸ばしたければ初等教育で暗記や詰込みが必要。新しいものを創造する力は、いかに多くのものを組合わせられるかで決まる。知識や経験がないと創造もない。

出来る子をどんどん伸ばす。悪平等で競争を否定してもダメ。

機会の平等を確保する事は必要だが、結果の平等はコントロールできない。出来る子、努力した子と、そうでない子に格差が出るのは当然。格差がなければ社会のダイナミズムも失われる。

世界史が必修で日本史が選択となっているのはおかしい。愛国心教育など画策する前に、そもそも自国の歴史をちゃんと教えよ。

企業倫理
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失われた10年は「再設計」の時期だった。なりふり構わず必死で生き延びたため、2000年代初頭から日本企業はタフになった。ただし、この間に企業倫理が失われてきたのではないか?社会に貢献するという企業本来の価値を作り出してゆくのはこれから。

企業はタフになったが、霞ヶ関は旧態依然。

マスメディア
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すごい影響力があるにも関わらず自制が足りない。抑制するカウンターパワーも存在しない。経団連は俗悪番組のスポンサーを止めよ。

専門家でもないコメンテーターやお笑い芸人が一言で「ズバッと」やれば爽快感はあるが事件や現象の背景や、本質的な問題を掘り下げて考える機会は失われる。

社会
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戦後、日本ではエリート潰しが行われ、知性や権威を否定して大衆化が進んだ。欧米、中韓ではエリート教育は大事にされている。
良い意味での「権威」は社会規範のために有効で、その頂点が天皇家。良質な権威が社会から失われると、おカネがすべての世の中になる。

規制緩和や地方分権は何でも良い事という風潮があるが、ただ現行システムを壊すだけで先にどんな仕組みを作るのか考えているか?開放して自由競争にさらせば貧しくなったり破綻する地方が出る。医療や教育を止めるわけにはいかない。その時のセーフティネットまで考えておかねばならない。

かつて地方財政は農業が支えていた。高度経済成長の時代に入り都市への一極集中が起こると、田中角栄の「列島改造論」で公共事業を与え農業から建設業へ転換して崩壊を防いだ。小泉改革で公共事業を止めたのは仕方がないが、地方の破綻をどう防ぐか。

農林水産業の活性化が鍵になるのではないか。農業の株式会社化・建設業を農業へ転換・農産物のブランド化など処方箋は考えられる。それを支える政策が必要。

今後のポスト産業資本主義社会では、おカネより知識や技術が産業の基になる。プロフェッショナルを育成する教育が重要で、社会人も学び続ける。

知の衰退を防ぐには
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1)解答は必ずしも「ない」と考える → 二分割思考に陥らない
  この世界に確実なものはない
  真実は立場や見方によって異なる
2)常識を疑え
3)部分的なもので全体を計るな

二分割思考と反知性主義によって大衆ポピュリズムが蔓延すると、簡単に操られ安易なファシズムに流れる危険が増す。

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と、いかにも官僚が書いたっぽい内容ですが、指摘は当たっています。むしろ正鵠を射ています。




posted by 武道JAPAN at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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