清国は、国の末期でもあり社会全体が腐敗していて活力を失い、街は汚く、インフラが壊れているのに対し、日本は隅々まで配慮が行き届き、清潔で、「蒸気機関を用いないで達することの出来る文明の最高水準」と褒めている。
ギリギリ最低の賃金しか要求しない船頭・ワイロを決して受け取ろうとしない税関の役人・椅子も机もベッドも不要な、シンプルで合理的な畳の住居と、花の咲いている美しい庭・ヨーロッパの製品に匹敵するかそれ以上の陶器や工芸品の数々・男女ともに平等に行き渡っている教育・・
シュリーマンが異文化、異文明に対して好奇心いっぱいに、かつ偏見の無い目線で書いているのが良く判る。しかも観察眼がするどい。浅草の観音寺を訪ねた後の感想などは笑いながら唸ってしまった!
-------
「私は、民衆の生活の中に真の宗教心は浸透しておらず、また上流階級はむしろ懐疑的であるという確信を得た。ここでは宗教儀式と寺と民衆の娯楽とが奇妙な具合に混じりあっているのである。」
-------
娼婦は社会の制度としても、心情的にも認められており、年季が明けたら普通に結婚することも当然であった。それどころか、人気のある花魁などは神格化さえされていた。
-------
銭湯は混浴であり、通りに向けて開け放たれており、シュリーマンが通ると皆が裸のまま出てきて取り巻いた。裸でいることが全くタブーではなかった。
-------
馬が藁のサンダル(?)を履いていた。などなど。
-------
豪華で贅沢なものは無いが、平和・行き渡った満足感・調和と秩序の中に暮らす、素朴で高潔な、愛すべき先祖達の暮らしぶりが実にイキイキと描写されていて楽しいです。