2017年07月25日

怒らない技術 嶋津良智

実は嶋津さんとは何度か会ったことがある。
本人を知っているから尚更かもしれないが、文中で「自分は小心でビビリ」だとか「いつまでたっても自信がない」などと(傍目には非の打ち所ない成功者であるにも関わらず)弱い部分も開示しているのが実に好印象で、正直なのは良いことだなと思う。

本書の内容は、いくらか心の仕組みについて学んだ人なら知っていることばかりであるが、それが意味するところはつまり「ビジネスパーソンとしては、この程度の基本的なニンゲンの構造は知っていましょうね」という事だと思います。以下メモ。
・・・

●3つのルール
・命と時間を大切にする(怒っても結果は同じ・怒るだけ時間の無駄)
・人生は思い通りにいかない(と受け入れる=イライラしない)
・苦悩と喜びはパッケージ(苦労や失敗で磨かれ、それが成功の基礎になる)

●出来事に意味はない
自分の前に起こる出来事には意味はついていない。意味をつけるのはそれを受け取る自分。

出来事はただ起こる。雨が降るのに良いも悪いも意味はない。しかし、雨で営業に出かけるのが嫌だなと思うか、他の営業が出渋る今がチャンスだと考えるかは自分次第である。受け止め方・考え方は選択できる → 受け止め方次第で意味は180°変わり、怒りにも喜びにもなる。
つまり、感情も出来事の受け止め方、その選択次第でコントロールできる。多くの成功者は、感情コントロールの達人である。

●人生の成果も選択次第
上記のようなモノゴトの見方・考え方が根っこ/知識・技術・スキルが幹/行動・態度・姿勢が枝葉/果実が成果・結果

※考え方が行動を決め、行動が結果を導くのは理解できますが、考え方の根っこには、その人の「在りよう」が存在していると思います。そのためか、著者も、「何のために生きるか、哲学が重要」としています。

●人を動かそうとしない
他人は変えられない。動いてほしければ、人が動きたくなるような環境を作る。

●他人の責任にしない
日々の多くの選択の結果がいまの自分である。他責にしない。

●怒り、イライラと無縁になる25の習慣(面白かったものを抜粋)
・迷ったら決断しない 無理にしなくても、本当に大切なことはいずれ「よし」と思う時が来る
・目標は低く 達成できる事を積み重ねる。成功体験の積み重ねがやる気と自信を生む。
・三合主義 助け合い、分かち合い、譲り合い
・ささいな事で自分を褒める

●怒り、イライラが消える11の特効薬(抜粋)
・これは神様が自分を試しているに違いない(と考える)
・これはちょうどよい!と言ってみる(「解決社長」ゲームと同じ)
・感情のコントロールが難しい時にはちょっと逃げる。気分を変える。席を外す。散歩する。
・不愉快はマメに吐き出す。溜めない。
・まあいいか!と(諦めるのではなく)見極める。

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まずまず悪くない内容です。出来事に意味はなく、その解釈によって初めて意味付けがなされ、それが怒りやイライラを生んでいるという構造も納得できます。

ただ、解釈を変えることによって意味付け〜感情を変えようとする手法には限界も感じます。意味の付いていない出来事=事実を、なぜ人間は解釈(という事実ではないフィルター)に掛けてしまうのか?そのあたりの心理の深みまでは掘り下げていません。
本来は、「最初から解釈自体が起こらない」「ただ事実とのみ在リのままに居る」状態まで持ってゆければ、怒り・イライラを含むあらゆる悩みから開放されると思うのですが、それは書物、しかも新書で語れる内容ではないでしょうから、ビジネスパーソン向け実用版「怒らない技術」としては、ひとまずこれで良いでしょう。

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 11:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月06日

世界を変えた10冊の本 池上彰

皆さんご存知の池上彰氏が「現代社会に顕著な影響を与えた本」というテーマで雑誌CREAに連載したものをまとめた一冊。やはり宗教と経済のふたつが影響力大と見えて、この分野に関する書籍が10冊中7冊を占める。

特に面白かったのは、最初にアンネの日記〜聖書〜コーランと続けて取り上げることで、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教を横断的に解説する部分。イスラエル、中東、パレスチナ問題、イスラム教原理主義など、世界を揺るがす課題の中心にこの3つの一神教がある。2011年出版の本であるが、もう少し後で連載されれば新興国の台頭に関する本も入ったかもしれない。以下メモ。

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●アンネの日記(ユダヤ教)
ナチスの蛮行を告発し、イスラエルに対する反発の防波堤となった本。ただしアラブ世界では知られていない。

●聖書
旧約は、天地創造を始め、モーセの十戒・出エジプト記など、神話上の出来事を綴ったものが多い。新約は、イエスの死後、彼の言行録を「福音書」としてまとめたもの。
ちなみに、旧約・新約は契「約」の事で翻「訳」ではない。イエスの死により、神と人とに新しい契約が結ばれたと考え、従来の聖書を「旧約」とし、新しい契約の書として「新約」と呼んだ。

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教は、同じ経典に拠っているが最重要とするものは違う。
ユダヤ教=旧約聖書(ただし「旧約」はキリスト教徒からの呼び名で、ユダヤ教徒はそう呼ばない)特に「律法(トゥーラー)」。
キリスト教(主にプロテスタント)=新約聖書(旧約聖書も使う)
イスラム教=コーラン+新約・旧約聖書

●コーラン
キリスト教では主イエスは神の子だが、イスラム教ではムハンマドを始めとする多くの預言者の一人。(ちなみに「預言」は神の言葉を預かる事で、未来を言い当てる「予言」ではない)

新約・旧約聖書で伝えられた神の言葉を、堕落した人間は守れず、最終でもっとも偉大な預言者ムハンマドによって新たな神の言葉(コーランの内容)がもたらされたと考える。

イスラム教徒が守るべき「五行」を説く。五行とは信仰告白・礼拝(サラート)・喜捨(ザカート)・断食(サウム)・巡礼(ハッジ)。本来は穏やかな宗教である。

●プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 マックス・ウェーバー
19世紀カトリック教会が支配的であったヨーロッパにおいて資本主義は牧歌的であった。人は食べるに十分なお金があれば、それ以上は働かない。ところがプロテスタンティズムの国(特にアメリカ)では、勤労を「神の栄光を示すための行為」「終末の日の救いを得るための行い」として捉え、寸暇を惜しんでひたすらお金儲けに励んだ。これが資本主義と結びついて発展し、やがて際限のない利益追求、資本主義のゲームが止まらずリーマンショックの遠因になったとする。

●資本論 カール・マルクス
社会主義運動・共産主義革命の基になった一冊。
資本主義はやがて労働者の反抗から革命を引き起こし崩壊すると説くが、その後の来るべき世界像は描かれていない。

●イスラーム原理主義の「道しるべ」 サイイド・クトゥブ
イスラム原理主義過激派のバイブルとなった本。
著者は留学時にアメリカの物質文明に失望し、ムスリム同胞団を敵視する米英人を知ることで却って同胞団を支持する様になったという。
主権は人になく神のみにあると考え、民主主義を否定し 、神の言葉を伝えたコーランに基づく社会を実現すべきと説く。

●沈黙の春 レイチェル・カーソン
放射能、農薬など、環境汚染・複合汚染という概念を世界に提示した最初の書。

●種の起源 チャールズ・ダーウィン
現代では常識となった「進化論」を初めて問うた書。
旧約聖書の「神は自身の姿に似せて人を創った」とする概念を否定するため、発表当時は議論を巻き起こし、現代でも(特に米国に)進化論を学校で教えようとしない地域がある。

●雇用、利子および貨幣の一般理論 ジョン・M・ケインズ
不況になったら政府が財政支出をすることで消費・雇用を促進し、景気が加熱したら金利を上下することで景気をコントロールする・・という、現代資本主義社会における景気操作の基本的な処方箋を提供している本。

面白かった概念:利子率と利潤率〜投資することで得られる利潤率が借金の利子率を上回ると考えれば、経営者は金を借りてでも事業をする。

●資本主義と自由 ミルトン・フリードマン
「自由」「市場主義」「小さな政府」を良しとし、変動相場制、夜警国家、教育バウチャー(学校選択の自由)などを主張。本書では「過激な強者の論理」として批判的であるが、論旨は一貫しており傾聴に値する価値はあると思われる。

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だいぶメモを端折りました。300ページに満たない薄い文庫本の割に内容は充実しています。オトナとして最低限押さえておきたい常識を、また世界共通語としての教養を(本来は原書を読むべきとしても)ざっと頭に入れるのに有用と思われます。

読むべし!


posted by 武道JAPAN at 17:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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