2012年02月12日

政治家の殺し方 中田 宏

著者は、元横浜市長。
週刊誌の暴露(いや捏造)記事で「ハレンチ市長」と叩かれ、「愛人」なる人物が横浜市役所で記者会見したりして騒動になった。

自分はその時期に横浜市民だったのですが、週刊誌など年に3冊くらいしか読まないし、TVのワイドショーも見ないので、実際のところ上記の騒動についてほとんど知りません。むしろ横浜競技場のネーミングライツ(命名権)を日産に売ったり、「G30」キャンペーンでゴミ削減に取り組んだりと、新しい施策をいろいろ実行していた市長・・という記憶が強いです。まあ結果として、暴露記事も愛人問題もひとつ残らず捏造だったようです。

本書では、なぜそういう根拠のないスキャンダルが現れてくるのか、その温床となっている利権や既得権益集団の仕組みと、政治家が改革を志向した場合に出てくる抵抗の実例を紹介しています。「バカ」「死ね」というメールが市役所職員から続々と届く(しかも部署名・実名を堂々とさらしたままで!)という実態に呆れ果てます。
辛口な点を申し上げれば、文章がやや稚拙な感は否めません。が、「体験者は語る」内容のおもしろさがそれを補うでしょう。

以下メモ。

・・・

政治家を殺すのに刃物はいらない。スキャンダルを捏造すればよい。事実無根のスキャンダルは、「ない」事を証明するのが難しいため解決に時間がかかる。その間に支援者の離反等で政治的パワーを削げば目的は達する。

政治家が改革を志すと、改革によって今現在手にしている利権を奪われる側は抵抗する。横浜市の場合、代表的な利権集団として、建設業界・公務員組織・風俗業界がらみの暴力団が挙げられる。

談合を禁ずれば建設業界から、定数削減や特殊手当の廃止を行えば公務員組織から憎まれる。風俗店の一掃に取り掛かれば暴力団が怒る。自分たちに理がない場合、スキャンダルをでっち上げてでも攻撃する。

マスコミのレベルは低劣。週刊誌の捏造記事をろくに調べもせず新聞がそのまま記事にしたりする。根拠薄弱な記事を1000行も載せておいて、訂正記事は10行ほど。報道されていることが真実だと無邪気に信じてはダメ。

行政の体質として、公表義務のある情報と、知らせたいことは発表するが、聞いてほしくない事は調査されて初めて最低限の情報をやっと出す。

公務員は法律で守られているため、明確な犯罪でも犯さない限りクビにならない。それを知っているため、市長に実名で「死ね」とメールを送ってくる者もいる。

ただし、大半の公務員は世の中が考えている以上に真面目に奉公しているし、横浜市政の改革に協力してくれた。”政治主導”という言葉は良いが、政治家一人では問題解決できない。政治家による「課題提起(イニシアチブ)」と「最終決定(ディシジョン)」、役人による「選択肢提供(オプション)」と「執行管理(オペレーション)」という役割分担と互いの責務の全うが大事。

政治家が現実を語らないことが日本の問題。増税でも将来展望でも、国民に本当のことを話し理解を求めるべき。

今後の日本では「不自然を改める」ことが大事。日本は破綻するとか、まだ大丈夫という議論があるが、税収より支出が多くて借金が膨れ上がり続けている状態は「不自然」であり改めるべき。

全国一律の規制を撤廃し、自由度を増して創意工夫の生まれる余地をつくるべきだし、自由と比例する責任を持たせるべき。つまりは、地方でも個人でも国自身も「自立」ということが大事。今の日本は依存社会。地方は国に、国はアメリカに依存している。よく言われる「平和ボケ」とはアメリカによる「保護ボケ」ではないか。

・・・

と、後半は中田氏の政治信条が語られていて、個人的にはスキャンダルの顛末よりこちらの方が共感できました。

大阪の橋本知事が市長選に立候補した際の異常なスキャンダル報道を見ても、現在ある既得権益構造を大きく改革しようとする政治家には、利権集団・役人・マスコミがグルになって攻撃を仕掛けます。

国民は、真実を見きわめる目と知性を養いましょう。本当は、それが民主主義を実現する基礎要件のはずです。

読むべし!





posted by 武道JAPAN at 14:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月05日

決断できない日本 ケビン・メア

著者は元・米国務省日本部長。
日本に19年間在住し日本人の妻を持つ国務省きっての日本通だったのだが、基地問題に絡み「沖縄はゆすりの名人」と発言したとの報道により更迭され職を辞した。

本書は、その問題発言の真相や、東日本大震災でのトモダチ作戦の舞台裏〜日本政府が機能不全に陥っていた実態、また日米同盟や日本の政権に対する米国側の見方など、「元外交官」のホンネが満載された楽しい一冊です。

「ゆすり発言」にもメア氏本人にも、さして興味はなかったので本書が売れているのは知っていても読んでみようとも思わず、古書店で100円だったのを何の気なしに買ったというのが本当のところです。その割には、よく言われる事でもあり判っている事でもあるが実際まあ確かにその通りだよね〜、と頷ける部分が多々あり、意外に楽しく読みました。

ちなみに、「ゆすり発言」問題自体は、共同通信の記者と、その背後にいる基地反対派の左翼弁護士による捏造記事・・というのが概ねの真相らしいですが、そんな事より更迭の真因は「憲法9条を改正すると米軍が日本の土地を自由に使えなくなるし、日本から召し上げている膨大なお金も手に入らなくなるので、改憲は米国の国益にならない」(要するに米国は日本を軍事的に自立できない状態に押さえ込んでおくことで延々と自国の国益=基地の保有と金=を吸い上げている)というホンネを漏らしたために国務省が慌てて事態の収拾を図ろうとした・・という事のようです。まあメア本人はこの本ではもっとキレイゴトを書いてますが。

・・

社会的コンセンサス(合意)を重視する「和をもって尊しとなす」は、本来は熟議の末に果敢に決断するものであるはずだが、最近の日本の政治家はコンセンサスが得られないことを理由に決断を先延ばしする悪しき習慣がある。

米国では失敗しても再チャレンジすればよいと考えるが、日本では一度でも失敗してはならないという風潮があり、失敗して責任を取らされることを恐れるあまり決断せず物事が進まない。

例えば、東日本大震災のとき、米国は提供できる支援物資のリストを日本政府に送ったが、長々とした質問が返ってきただけで、何を送ればよいのかいつまでも決まらなかった。

日本の官僚機構のお役所仕事は最低。付き合っていて本当に嫌になる。

震災後、東電は米軍に対し真水を運べる方法がないか打診してきた。日本政府自身は原発の状況について、ほとんど重要な情報を把握していなかったようだ。(このとき、日本という国家は機能していなかったと言えます・・)

沖縄には補助金づけという問題がある。基地が移転してしまえば補助金がもらえなくなる・・という事実が、基地の移転を阻害している。これは補助金システムという構造の問題であって、沖縄の人々の品行性情の問題ではない。

民主党の「政治主導」は理念としては立派だし、そうあるべきであるが、官僚機構を敵に回したのは失敗。どの国も、官僚組織の助けなしに国家の運営は出来ない。

・・・

日米同盟、世界の軍事バランス、中国の台頭・・などについて、プラグマティック(現実的、実利的)なアメリカ人の、良い意味での単純明快さが出ていて読みやすいです。瑣末な雑音を排して、物事の肝心な部分を見ればこんな感じ、というところでしょうか。

もちろん、米国は様々な影響力を行使して日本を陰に日向に操っていますが、そういう「ウラ」の部分をさて置いて、わかりやすく「オモテ」の議論をすればこんなところでしょう。陰謀論の好きな人にはもっと別の意見があるでしょうが、モノゴトの「ウラ」の部分が「オモテ」に比して、それほど膨大であるとは思えません。

さてこの機会に自分の見方を整理しておくとこうなりましょうか。

・今後も当分の間、日本にとって最も重要な国は米国である。また、米国は今後も、世界で最も有力な国のひとつであり続ける。

・中国は異文化国家だという事をよく認識し、適度な距離を保ちつつ関係を良くして行くべきであって「米国も落ち目だから中国につこう」などと妄動してはならない。

・ただし、米国も自国の国益を最優先に考えて動くので、日本から吸い取れるものは吸い取ろうとする。「トモダチ」も日本人が純真に考える個人間の友情とは訳が違うのだから、それを「ずるい」とか「汚い」とか「陰謀」とか言うのはナイーブ過ぎる。双方が利のある部分を出来るだけうまく取り合うのが大人の付き合い(外交)。

・米国にとっても日本は重要な国。米国のスーパーパワーの源泉のひとつは、世界の軍事費の半分近くを一国で消費する圧倒的な軍事力にあり、全地球に展開する米軍にとって、ちょうど地球の反対側で米国本土と同じくらいの武器弾薬を安心して置いておける同盟国など日本以外に見つからない。日本人はそのポジションをもっとよく認識したほうがよい。台頭する中国との対峙というテーマだけでも、日米同盟は重要性を増すばかりである。

・ありていに言えば日本は米国の属国か、よく言っても天領。でも、どこかの国の家来でいるなら米国が一番マシで、中国の支配下に置かれたら終わり(チベットとか、東トルキスタンとかを見れば明白)。
日本は独立自尊の国家に成熟すべきだが、あまりにも物を考えていなくて戦略性がないため、自立には程遠い。もっと国民が自分の頭で考えないとダメ。(参考:日本人はこうして奴隷になった 林秀彦

・日本にも無数の問題はあるが、日本の国柄と社会の安定度、人間の質は世界最高水準。(参考:私は日本のここが好き! ― 外国人54人が語る 加藤恭子
この点では、世界中が日本のようになればよい。ただ、繰り返すが国民がもっと世界の情報を知り、自分の頭で考え自立しないとダメ。

で、そのための一助となればいいな・・というのが、このブログの目的でもあるわけですね。

読むべし!


posted by 武道JAPAN at 12:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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