2011年05月21日

日本復興計画 大前研一

大前研一氏は言わずと知れた日本最強のコンサルタントですが、実はMITで原子力工学を専攻した原子炉の専門家。しかも理論だけの学者ではなく、博士号を取得したのち日立に入社して原子力プラントの設計をしていたとの事。

その実際的な知識を活かし、東日本大震災の2日後には「ビジネス・ブレークスルー 大前研一ライブ」 で早くも福島第一原発の状況を解説する映像を流し、後にYuotubeで180万回以上再生されました。

本書は、震災の2日後と1週間後に放送された「ビジネス・ブレークスルー 大前研一ライブ」 の内容を元にした第一章、二章と、日本復興のアイデアを提言する第三章からなる一冊です。
私を含め、「ビジネス・ブレークスルー」を見たり、日経BPの連載を読んでいる人には既知の内容が多いですが、大前氏は印税を一切受け取らず、売上げの12%は被災地支援に向けられる、という心意気が良いではないか・・というわけで購入。以下メモ。

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・日本は国策として原子力を推進してきた。理由は二つ。
1)石油危機に懲りて、OPEC依存を脱却したかった。
2)プルトニウムを保有し90日で核武装可能な状態にしておきたい。

・原子力立国はもう終わり。今後は新規原発を引き受ける自治体はない。米国でもスリーマイルのあと30年間建設できず、技術者は霧消した。どうしてもやるなら国が直轄事業としてやるしかない。そもそも原子力事故は民間会社の賠償能力を簡単に超える。東電はいったん潰し、送電会社として再出発するのが良いのではないか。

・かように危険な原発を、実は電力会社もやりたくない。国策だから進めてきたが、そのわりに原子力安全委員会も保安院も何もしてくれずいじめるだけ。原発建設を渋る地元との折衝や接待もすべて電力会社がやってきた。最終処分場の問題も「そのうち作ってやる」と言ったまま決着していない。

・何か事故があればすぐ社長の首が飛ぶため、電力会社内部でも原発部門は肩身が狭く、結果、東電の経営陣に原発畑からあがってきた人材がいなかったことも今回の対応の拙さにつながった。

・核のゴミの最終処分場問題は早く決着すべき課題。すでに出来てしまった廃棄物はどこかに処分しなくてはならない。ロシアと平和条約を結び、シベリアに共同で処分場を設けてはどうか?

・これ以上の国債発行は危険。日本国債のメルトダウンを防止するため、復興には期間限定・復興目的に限定した消費税が良い。大いに食べて、飲んで、復興しましょう。
(管理人:政府が約束を守ると信用できるならこの案に賛成なのですが、現政府では、いつの間にか恒久税となったり、復興なのか何なのか判らない目的に流用されて、けっきょく役人の懐に入ったりしそうで、どうも信用なりません)

・復興にあたっては「元通りにする」という発想は捨て、あらたな設計図を引くべき。津波が来る場所は緑地化し、頑丈な鉄骨で公共施設など作る。港は多すぎるので集約し、漁師は高台に住んで車で港へ通勤する。

・日本復興には道州制で地方に権限委譲せよ。変人(凡人ではないという意味)首長に自由な政策を競わせ、成功した地方が全体を引っ張るべし。大阪と京都を合併し橋本知事の「本京都」、河村たかしの「中京都」など有力候補はある。

・個人のメンタリティ改革も必要。国は何にもしてくれない。頼るのをやめ、世界中どこに行っても稼げる個人が自らを復興するところから日本も変わる。

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と、あまり煮詰めてあるとは言えませんが、例によって切れ味の良い口調で明快な現状認識と復興へのアイデアをつづっています。その後、Twitterで質問やアイデアを募っていますから、本書は議論のためのたたき台と位置づけてよいでしょう。

原発推進の動機のひとつが、短期間で核武装可能な力を持っておくため、とスッパリ言い切っちゃってるのも痛快です。それはそうなんだけどね。何の遠慮もなく言ってる感じが良いです。

未来を考える土台は、正しい現状認識からのみ生まれる。

政府は、正しい情報を国民に与えるべきである。

読むべし!

知の衰退から如何に脱出するか 大前研一
マネー力 大前研一




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2011年05月14日

日本はなぜ世界で一番人気があるのか 竹田恒泰

まずこのタイトルがうまいなあ、と思います。
おそらく多くの人は「えっ、日本って世界で一番人気があるの?」と思うでしょう。そこが判っていてタイトルを選んでいる。じっさい、本を開くとまず冒頭に「米国人も韓国人も自国が好きですが、どうも日本人は日本のことを愛せていないし良く知らないようです」とあります。本当にそのようですね。

著者の竹田さんは、旧皇族・竹田家に生まれた明治天皇の玄孫とのこと。慶應義塾大学法学部卒。2006年「語られなかった皇族たちの真実」で第15回山本七平賞受賞。

本書では、まず英国BBCが行った調査で、日本が「世界に良い影響を与えている国」に3年連続で1位となった事実を紹介。日本に否定的なのは世界中で中国・韓国くらいで、インドネシアやフィリピンなどアジアの国々はきわめて親日的。特に台湾は「自国より日本が好き」という人が多い。(管理人:今回の大震災でも、一番多額の義援金を集めて送ってくれたのは台湾でしたね)

そこから、日本の文化・国柄・天皇など、幅広く日本の魅力を紹介します。
新書なので、幅が広いぶん掘り下げは浅いですし、少々強引に日本礼賛を持ってきている部分もありますが、まずは入門用として中高生にも読んでもらいたい一冊です。巻末に北野武さんとの対談もあります。以下メモ。

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・ものづくりの匠は伝統工芸から建築物まで世界で群を抜いている。イラクやカンボジアで「突然走り心地が良くなったな」と思うと日本のODAで作った高速道路だったり、ウズベキスタンで震災に唯一倒れなかった建物が、日本のシベリア抑留者によって建てられたオペラ劇場だったり・・など数知れない事例がある。

・東京は世界一の美食都市。3つ星レストランはパリより多い。飲食店の数は12倍もある。これは日本料理がきわめて専門分化し(寿司、天ぷら、鍋、うなぎ、しゃぶしゃぶ、ヤキトリ等)多彩であるため。バリエーションと専門性は、どこの国も追随できないレベル。

・ジダンなど多くの一流選手が「キャプテン翼」の影響でサッカーを始めた。主人公の翼が物語の中でFCバルセロナに所属するとライバルのレアル・マドリード幹部が「なんで翼をうちに入れないんだ!」と激怒。
イタリアバレー界のエース、ピッチニーニは「アタックNo.1」の鮎原こずえと戦うのが夢だった。

・日本はひとつの王朝(天皇家)が神話から連綿と連続する世界最長の歴史ある国。政治体制は時代とともに変更されたが国体は変わっていない。天皇は制度ではなく「はなからある(北野武さん)」存在であり、天皇がなくなれば、それは日本ではない。

・日本には宗教戦争や被征服民に対する価値観の押しつけがなく信教の自由が許されていた。出雲の国譲り神話にその原型が記録されている。(宗教戦争は世界中で終わりのない争いを生んでいる愚行)

・日本は、内戦や他民族の征服によって滅びることなく、国と文化を途切れず保持したため、古代の人々の価値観が残っており、それは日常言葉の中にも発見できる。
「いただきます」は「(食物となる動植物の)命を頂きます」で、料理人に対する感謝の言葉ではない。(「ご馳走様」は人に向けた言葉)
「もったいない」は、他国の語彙にその概念すらない。

・古代の価値や文化を保持した民族は、アメリカ先住民やヨーロッパのケルト、オーストラリアのアボリジニなどあったが、固有の国土・国家・言語を保持し、1億人以上の人口を保ったのは日本だけになってしまった。

・ニッポン人には日本が足りない。敗戦と共に占領軍の戦略によって過去の日本文明を否定し捨ててきたが、環境と調和して生きるすべを確立しなくてはならない21世紀にむけて、日本文明再興(ジャパン・ルネッサンス)の時がきた。

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20年の停滞に落ち込み、自信をなくして忘れられたかのような日本に、東日本大震災によって世界の耳目が集まりました。
そこで多くの人々が驚愕したのは、大震災の中でも冷静に秩序を守り、互いに助け合う市民の姿でした。

コンビニで棚から落ちた商品を元に戻し、きちんとレジに並ぶ人々・通行の邪魔にならぬよう、端に寄って駅の階段に座り込むサラリーマン・徒歩で帰宅する人々に「トイレ有ります」と手書きの看板を出す商店・津波のせまる中で市民に警報を発し続ける市の職員・入院患者を屋上に搬送し、ともに留まった医師・まず中国人研修生を避難させた後で家族を探しに戻り津波に飲み込まれた専務・放射能の危険をかえりみず原発で戦っている人々のためにと温泉を再開した民宿・・
来日したカナダ人から「定年間際に自ら志願して原発に向かった男は無事でいるのか」と聞かれた時には、そんな話が外国にまで伝わっているのかと驚きました。

暴動や略奪が起きないことを驚きとともに報道する海外メディアがありますが、日本人のセンスからすれば火事場泥棒ほど恥ずべき卑しい行為はない。われわれ日本人にとっては当たり前の事柄が日本以外では稀有なことのようです。
ここは「世界最高の一般人がいる国」と言ってよいのでしょう。(→「私は日本のここが好き! ― 外国人54人が語る 加藤恭子(編集)」

その一方で、原発事故の対応と情報開示に関する政府・東電の不手際によってじょじょに不信感が生まれ、放射性物質を海に放出したことで日本への信頼は大きく毀損しました。残念でなりません。。今後は、和の精神を大切にする日本らしさを堂々と誇りつつも、危急の際のリーダーシップや、「想定外」を限りなくゼロに縮めるシミュレーション力、考え抜く力を磨くべきです。
そのためには、官僚的なルールの中に何もかも管理するのではなく、型にはまらぬ多様な異能者が活躍できる環境が望まれます。例えば、一教科のみで受験できる大学があれば、特定方面に突出した才能が育てられるでしょうし、中学・高校レベルからディベートを授業に取り入れれば、徹底的に考え議論する習慣が身に付くのではないでしょうか?いずれも、ほとんどコストを掛けずにできることばかりです。

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3・11震災以降、なんども思ったのは「この国でよかった」という事です。
この国だから人々が助け合う。レストランにもコンビニにも募金箱が置かれ、赤十字には莫大な義援金が集まる。この国では、道路が、鉄道が、工場が、全力で復旧される。この国を、誰も憎んでいないから世界中が支援の手を向けてくれる。この国には、真の使命感を持って働いてくれる自衛隊がいる。そして国民に語りかけてくださる天皇がいる。

あなたも、もっと日本を好きになるといい。

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 18:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月02日

原子炉時限爆弾 広瀬 隆

私事ではあるが、この春は子供たちの高校・大学ダブル受験だった。で、その機に横浜から郷里の愛知県に転居し、自分のためには都内に仕事用の一部屋を借りることとした。
経験して初めて知ったが、他府県での高校受験については中学にも学習塾にもあまりサポート体制がない。けっきょく親があれこれ手配するしかなく、普通以上に手間の掛かるダブル受験+ダブル転居でテンヤワンヤしている最中に東日本大震災がきて、もう決定的に何もかも普通にはすすまなくなった。なんとか予定通り引越しはしたものの、新しい生活のペースをつかんだのは4月も終わる頃で、ブログの更新は大幅に滞った次第である。

さて、そんな中で気になるのは、続く余震と原発問題・・というわけで本書を手に取った。

著者の広瀬隆氏は「東京に原発を!」以来、一貫して反原発を主張してきた。ロスチャイルド財閥の歴史を解いた「赤い盾」(読んだが、とてもレビューできないので本ブログには未掲載)や、日本の財閥系図を明かす「持丸長者」など、膨大な資料から事実を取り出すことで、見えなかった世界を可視化する労作が多い。本書も、多数の資料や図版つきで丹念に我々が置かれた状況を明らかにしてくれます。以下メモ。

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・地球は生きており、内部のマントル対流によって地面を乗せたプレートが動いている。世界中で地震が発生するのは、主要なプレートの境目である。

・日本列島は、ユーラシア、フィリピン海、北米、太平洋の4つのプレートが重なり合う場所にあり定期的な地震の発生は既定事項。

・静岡県御前崎の浜岡原発は、世界で唯一、3つのプレートが重なり合うポイントの真上に建てられている。

・巨大な「東海地震」と、セットで発生する「南海地震」は100〜250年周期で定期的に発生している。直近では、1944年の東南海地震と、1946年の昭和南海地震。東海地震が、やがて来ることを疑う人は電力会社にもいない。

・日本の地層は、激しいプレート活動によって海底から隆起したり沈んだりしながら造成された。
6500万〜4500万年前ごろ日本を縦に走る大断層「中央構造線」ができたが、この頃はまだ大陸の一部で、日本海もできていない。ようやく列島らしい姿になったのが200万〜80万年前頃で、大陸から完全に離れたのが1万年前。もちろん、日本列島は現在も激しく動いている。
しかも縄文時代(3000年前)には現在より海面が高く、いま原発が建っている海岸沿いはほとんどが海の中だった。日本には真に強固な地盤というものは存在しない。ちなみに、ヨーロッパの地層は5〜20億年前のもの。

・原発は、原子炉で発生した熱で蒸気を作りタービンを回す。蒸気は冷却され、原子炉建屋に戻って原子炉を冷却する。つまり構造上、原子炉とタービン間には配管が必要。原子炉そのものは頑丈に作ってあるが、配管・配電が巨大地震の揺れに耐えられるとは思えない。配管が切れれば放射能が漏れるし、配電が途絶えれば制御室は機能しなくなる。(いずれも、残念なことに今回の震災で実証済み)

・日本では米国の後押しとエネルギー資源の少なさという国内事情があいまって、国策として原発を推進した(やがて利権のカタマリとなった)。耐震基準や地震・津波の想定は、「原発をいかに作るか」が前提であり、真に「安全」を目指したものではない。

・通常、原子炉ではウランを燃やす。高速増殖炉が成功しなければプルトニウムの使い道はないが、世界中で高速増殖炉は失敗した。日本でも「もんじゅ」がナトリウム火災で失敗した。

・六ヶ所村の再処理工場(使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、高レベル放射性廃棄物をガラス固化する)は、溶融炉が詰まってしまい稼動不能となった。ガラス固化できない高レベル放射性廃液が240立方メートルも溜まってしまっている。(ちなみに、これが1立方メートルでも漏れれば、東北地方北部と北海道南部の住民は避難が必要)。
また、使用済み核燃料(長期間の保管と冷却が必要)を保管しておくプールを維持しなくてはならないため閉鎖できない。

・使用済み燃料を保管する日本中のプールはいっぱいで、原発ではサイト内のプールに一時保管しているが、どのサイトでも10年以内にプールは受け入れ限度に達し、原発の運転続行は不能になる。

・再処理工場が稼動していた間に(もし日本が核武装する意図がないのであれば)使い道のないプルトニウムが大量にできた(※プルトニウムを使う高速増殖炉は失敗している)。
それでも用途があるように見せかけるため、ウランと混ぜてMOX燃料を作り、ウラン用の原子炉で燃やすプルサーマルが行われているが、使用済み燃料の放射能を飛躍的に高めるデメリットに比して、燃料の節約や再利用というメリットは(政府の宣伝に反して)ないに等しい。

・再処理も高速増殖炉も失敗しているが、つじつま合わせで場当たり的にメリットのないプルサーマルへ邁進している。14年も死んでいた「もんじゅ」も無理やり再稼動した。

・地下300mに高濃度放射性廃棄物を埋めるという最終処分場は、受け入れる自治体がなく(当たり前だ)いまだ決まっていない。

・日本の原子力行政は袋小路に落ち込んでいうえに、待ってくれない大地震は、ほぼ100%やってくる。日本列島に人が住めなくなる可能性すら充分にある。

・・・

本書で初めて知って最大限にげんなりした事は、2010年6月に福島第一原発で電源喪失事故が起こっていた事実でした(当時ワールドカップ一色だったマスコミはどこも報道していない)。

外部からの電源が4つとも途絶え、原子炉は緊急停止したものの内部では沸騰が続いて冷却水が減り、炉心溶融寸前で停まったとの事。しかも事故原因は特定できていない。
また、2007年中越地震の際、柏崎刈羽原発で外部電源を取り入れる変圧器が火災を起こし、炉心は停止したものの、その後の冷却ができずに、かろうじて生きていた電源で危機回避したとの事(しかし非常用ディーゼル発電機の燃料まわりが地震で陥没した)。

これだけの事態を経験していながら、東日本大震災後の対応を見ると、教訓が活かされていない実態が理解できます。
安易に東京電力を批判する気はありませんし、今も現場で必死に事態収拾に当たっている人々には感謝と応援の気持ちを持っていますが、不測の事態をトコトン想定しきる思考力と、危急の際のリーダーシップが、どうも日本人は弱いのではないか?科学技術の問題ではなく、危機管理能力の問題で、これらの人々は原発を運転する水準ではないのでは?と疑われます。

また、静岡の浜岡原発を地図で見れば、半径20k圏内を東名高速道路と東海道新幹線が走っています。非常時には東京〜名古屋間の移動は途絶するのではないでしょうか?浜岡原発はまず停めるべきと思います。
(追記:その後、管首相の「英断」で浜岡原発は停められましたが、これは横須賀基地の放射能汚染を危惧した米軍から要請があったため、という説があります)

地球と地震の仕組みから原子力発電のイロハ、日本の原子力行政や我々の置かれた状況まで幅広く把握できる一冊です。今読むべきでしょう。

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 17:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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