2010年06月27日

日本経済の真実 ― ある日、この国は破産します 辛坊治郎 辛坊正記

参院選も近いし、現下日本の問題点をざっと整理できる本として一読をお薦めします。

ニュースキャスターの著者らしく、日本経済の問題点を判りやす〜くまとめた書です。
GDPとは何か?から始まって、なぜGDPの成長が必要か、成長を支える基本要素は何か・・と、「今さら聞けない」レベルからサクサクと書かれていて読みやすいです。
経済の専門家ではないので大雑把な記述はありますが、やはり専門家ではない一般国民が知っておくべき内容としては充分かつ適切と思います。Amazonでは否定的な書評が妙に多く奇異な感を受けますが、言われている事の骨子は非常に正しいと思います。

以下メモ
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●企業でも国家でも、成長のためには「稼いだお金の有効投資」が必要。
国民が積み上げた貯蓄で国債が買われ、それを原資に政府が公共事業をするのは悪ではない。問題は「どう使われるか」。
役所の利権拡大、政治家の人気取り、競争力を失った産業の温存や一時的な浮揚効果しかない政策につぎ込んでしまうと、貯蓄を失い成長もできない。
国民は、政府や官僚が「将来の成長に資する有効な投資」をするのか監視すべし。

●高度経済成長時代の夢を追ってもダメ。
日本はとっくに最先端の先進国であり、追いつき追い越す相手はいないのだから自ら新しいモデルを切り開くしかない。
iPODやWindowsOS、Googleや「アバター」のような3D映画など、20年前のベンチャーが、今や米国産業の屋台骨に成長している。政府は将来の日本を支える新産業育成に力を入れよ。

●格差社会が訪れたのは、小泉改革と関係ない。
真実は、90年代グローバリズムによって後進国に技術が普及し、”余人を持って代えがたい能力のある人”と”誰にでもできる仕事を途上国と取り合う人”に分かれた結果。
この世界的潮流を見ずに、当時の日本は政治改革(与野党の政争)・行政改革(政府と官僚の権力闘争)をしていたが、小泉政権が登場して格差の拡大は止まり失業率は低下した。
格差社会を小泉改革の責任にする”すり替え”は、改革によって既得権益を失う者たち(例:ゆうちょや官僚、特殊法人など)の意図的なアジテーションではないか。

●農水省が発表するカロリーベース食料自給率はデタラメ。補助金をばら撒く為の政治的データであって、実態を示していない。例えば、米を作るのに必要な肥料やガソリンは無視されている。石油が輸入できなくなれば、機械化された農業は破綻し稲作は壊滅する。国益より省益の一例。

●民主党政権になって、「官から民へ」に逆行する動きが見られる。国民が期待した通り、官僚の既得権益に切り込む事ができるのか?
(管理人:官内閣になって、すぐ消費税UPを言い出したが、財務官僚に取り込まれてはいないか?)

●日本を滅ぼす悪の呪文

・経済より心の豊かさ
心の豊かさは当然大事だが、衣食足りて礼節を知るのが人間。大卒の3割に仕事がなくては、それ以前の問題。

・大企業優遇はやめろ
競争が激化する世界市場で戦えるような大企業が儲からないと、その傘下にいる中小は立ち行かないし日本を支えられない。配分の不公正は是正すべきだが、大企業をいじめて良い事はひとつも無い。法人税を下げて企業の競争力を強化し、海外から投資を呼べ。

・外資に乗っ取られる
安物の民族意識で感情的に考えてはダメ。外資が来るという事は、日本に投資が行われ、雇用が生まれて消費が増え、成長するという事。将来性に期待しないと誰も投資しない。

・金をばら撒けば景気が良くなる
現在のように個人金融資産が莫大にあっても消費が伸びない時は原因が違う。
※欲しいものが無い → iPADや「アバター」は売れる。日本企業が魅力的なサービスを生み出していない。産業構造の転換を支援すべき。
※将来が不安 → お金をばら撒いても貯金してしまう。安心な社会保障の創出が必要。
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・・と、薄くて読みやく簡潔に的確にまとまっています。上記以外にも参考になる記述が豊富なので、ぜひ読んで欲しい一冊です。

「あとがき」に書かれた言葉におおいに共感しました。

「『20世紀の後半、平和で豊かに栄えた国があった。資源に恵まれなかったこの国は、勤勉で礼儀正しく自律精神にあふれた国民が熱心に勉強し働いて作り上げた。豊かさに慣れた国民はやがて国へ依存し、矜持を忘れた政治家やメディアと、縦割り行政の中で自らの利益を優先する官僚組織に蝕まれ、今は歴史の彼方に消えてしまった』
我々の子孫がそのような外国の教科書を読む日が来ないよう、頑張れ日本人。」

読むべし!




posted by 武道JAPAN at 15:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(政治経済) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月19日

日韓がタブーにする半島の歴史 室谷克実

著者は、時事通信社の政治部・ソウル特派員・「時事評論」編集長などを務めた元記者。

本書では、朝鮮半島に残る最古の史書「三国史記」や、中国の「魏志」など、当時の半島・大陸国が正史として編纂した歴史書を丹念に読むという、もっとも正統的な取組みによって古代の半島と列島の姿を見てゆきます。すると、次々と一般常識がひっくり返ります。

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●多くの日本人は、何となく次のように思っているのではないでしょうか?

・稲作を始めとする大陸の文化は、朝鮮を経由して日本に来た
・古代より日本人(倭人)は列島に・朝鮮人は半島に分かれて住んでいた
・皇室のルーツは朝鮮半島だ

これらは全て間違いです。

・稲作が伝わったのは雲南省あたりから海路で九州。朝鮮半島に存在しないDNAの稲が日本だけにある。

・新羅も百済も倭国のことを文化大国として敬仰していた。半島初の統一国家である新羅の基礎づくりを指導したのは、列島から渡ってきた倭種だった。
→「第四代新羅王の解脱(タレ)は、倭の東北一千里にある多婆那国の生れ」(三国史記 新羅本記)=多婆那(タバナ)国は、丹波、あるいは但馬と考えられている。

・倭国は九州北部と朝鮮半島にまたがっていた。鉄資源を採取するための拠点が朝鮮半島南部にあり、そこから南が倭国と認識されていた。
→「韓は帯方郡(=魏の直轄地・現ソウル付近)の南にあり、東西は海、南は倭と接す」「倭に至るには(海岸に沿って水行し韓国を経て、あるいは南し、あるいは東し)その北岸、狗邪韓国に至る。(そこから)はじめて海を渡ること千余里、対馬国に至る・・」(魏志「韓伝」および「倭人伝」)

・倭は半島南部の拠点を通じて、1世紀ごろには大陸と直接交流していた。


●また、次のような事実と異なる流言も、原典をきちんと読むことで否定してゆきます。

・朝鮮に伝わる「檀君神話」は天孫降臨の日本神話と似ている。→ 共通点は無い。似ているとされる点も原典を読むと違っている。
・「日本」の国名は新羅が与えた。→「倭国、号を日本に更む。自ら言う、日出づるに近きを以て名を為す」(新羅本紀)→日本が「自ら言う」と書いてあり、それ以外の記述はどこにも無い。


●そして、正史をそのまま読むという当たり前の方法が取られず、事実が捻じ曲げられてきた経緯も明かされます。

・戦前の朝鮮史研究では、新羅4代王が列島の出身者である事など常識であった。
・戦後の左傾化により、少しでも皇国史観に染まっていると看做されたものは激しく排斥された。朝鮮半島研究においても、「半島に倭の拠点があった」などという事は言えない空気に包まれた。
・半島古史研究で基本資料とされる「三国史記4」(東洋文庫 1988年)に全文間違いの訳注がある。新羅16代の王のうち半数が倭種であるところ、倭種は4代目のみとされている。訳注を書いたのは韓国人の鄭早苗。

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半島と列島は海を挟んでいるものの、意外なほど柔軟に人々が行き来していた事や、半島南端には倭人・朝鮮人・大陸人が入り混じって混乱も争いもなく暮らしていた様子が描き出されています。

自分は「嫌韓流」ではなく、韓国料理の美味しさや李朝家具の美しさに素直に感動し、個人的に知り合った何人かの韓国人に親しみを感じる「好韓」派なので、ネット上に良く見る(感情に傾いた)韓国・朝鮮批判の類は好みません。
かと言って、列島と半島における不幸な過去から妙な贖罪意識を背負い込んだ挙句、事実を捻じ曲げてしまう学者や文化人や某公共放送局の態度は明らかにおかしい。そんな中で、本書の取る「原典を素直に読む」というスタンスには、非常に感心しました。

政治的な策動や民族感情によって正史を捻じ曲げれば、学問としての歴史は成り立たなくなる。そして、2国間の真の理解は永遠に得られない。

読むべし!


posted by 武道JAPAN at 21:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月06日

食べかた上手だった日本人 ― よみがえる昭和モダン時代の知恵 魚柄仁之助

著者は、1994年に「秘伝めしたきの術」「うおつか流台所リストラ術」などを出版以来、多数の著作を持つ食文化研究家。

本書は、明治〜昭和にかけての変化を、政治や軍事でなく食文化から見てみようという試みです。
といっても堅苦しい内容ではなく、当時の文献(というか主婦向け雑誌?)などを参考にして、著者自ら作ってみた料理や保存食のレシピと感想を、面白おかしく紹介してくれます。

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●食生活維新は昭和に入ってから

明治に社会体制を一変させた日本だが庶民の食事は江戸時代と変わらず、ご飯に汁と漬物、煮物、干し魚だった。

日清日露の戦争を経て、海外旅行などに一生縁のなかったはずの農家の次男坊三男坊が兵隊として中国・朝鮮・台湾に派遣された結果、中華料理や(進出してきていた列強の)西洋料理に出合った。植民地にした朝鮮の白菜や、満州の大豆が入ってきた。

関東大震災や第二次大戦からの復興過程でガスが整備され、各家庭での煮炊きが非常に効率化され(それまでは薪や炭)、主婦が新しい料理を試みるようになった。和食をベースにして、様々な国の料理を独自なアレンジで取り込んでいった。

●賞味期限は自己責任だった

ガスが整備されても冷蔵庫は普及していなかったため、乾燥・塩蔵・酢や味噌を駆使して保存食を手作りし、賞味期限は自分の五感で判断した。

加工食品は少なく、梅干、納豆、ラードやスープストック、ソーセージや果物ジュースなど、自ら様々なものを作った。(ジュースは発酵してワインになったりするので、主婦向け料理テキストが密造酒製造の手引きになっていたりする)食品の保存→加工→調理の知恵が詰まった、安上がりで健康的な生活術があった。

冷蔵庫が普及して、これらのノウハウが廃れた。賞味期限を判断できず、食品メーカーの責任にするようになった。

●昭和のレシピは食料自給率を助ける

肉の摂取量が極端に少なく、塩分の高い副食物が多かった。梅干など、最近流行の減塩ものでは弁当に入れても殺菌の効果がない。塩分が高いと血圧への悪影響をを心配するが、塩辛いものは量を食べられないため少量のオカズで山盛りご飯・・となる。食料自給率向上に良い。
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などなど・・当時の資料を豊富に掲載しつつ、「昭和のレシピ」と、それを支える知恵と工夫を紹介してくれます。

あまり細かなレシピが掲載されているわけではないので、レシピ本というより読み物ですが、日本人は外来文化を何でも柔軟に自分たちに都合の良いようにアレンジして取り込むのだなあ・・とか、戦争や社会体制の激動の中でも、庶民は日々何かを食べながら生きていたのだなあ・・とか面白く読めます。

グルメ追求ばかりが道ではありません。自分で魚や大根を干してみるのも楽しそうです。

料理が好きな人、わが国の食料自給率向上に台所から一助を見出したい人、健康増進と家計のリストラを同時に手に入れたい人など・・読むべし!




posted by 武道JAPAN at 15:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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