2009年12月20日

日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学 原田 泰

著者は大和総研常務理事チーフエコノミスト。
東京大学を卒業し、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。

本書はNIKKEI NET BIZ+PLUSのコラム「経済学で考える」を主体に、「エコノミスト」誌への寄稿を併せて編集された。

「誤った事実認識から正しい政策は生まれないが、正しい事実認識からは正しい政策対応が生まれる可能性がある」正しい政策提言を行うのがエコノミストの使命である。という立場から、世間でよく言われる通説の確からしさをデータの裏づけを基に解明してゆきます。
すると・・出るわ出るわ、TVや新聞でよく聞く論が、次々ひっくり返る様は痛快です。

●給食費を払わないほど日本人のモラルが低下している?
この問題に、著者は都道府県別の給食費未納率と、親の失業率をグラフにして見せる。すると、ふたつの指標はかなりの程度連動している。
つまり、「払わない」のではなく「経済的に払えない」親が増えたと考えるのが合理的。

●格差の本質は何か?
小泉改革が格差社会を生んだという批判がある。しかし世代別の格差統計を見ると別のことが見えてくる。

格差は若い頃はあまり大きくないが高齢になるほど開く。成功して財産を得る人と、そうでない人に分かれてゆくからだ。統計にもそれが表れている。
社会が高齢化すると「格差の大きい世代」が増える。結果として社会全体の格差は開く。つまり格差社会の第一原因は高齢化である。

次の要因は正社員になれた若者とフリーターの間に極端な差ができた事。つまり若年層の雇用が重要な問題。

日本は最終的な可処分所得の低い人が多い。これは児童手当、生活保護、失業給付等が不足している為である。従来の、組織を通じてお金を回す方式を改め、個人に直接配る手法に変えるべきではないか。

●日銀は何をしているか?
金利は、銀行間の貸し借りを行うコール市場に資金が流通するかどうかで変化する。日銀はこの市場に資金を供給したり、絞ったりする事で金融をコントロールする。
データで見ると、日銀は、ゼロ%物価目標政策を行っている。(消費者物価の伸び率がゼロを超えそうになると金利を引き締めている。)
つまり、日銀は(公式にはどう言おうと)実態は物価の上昇をゼロ以下に抑えようと動いている。これは常にデフレ圧力があることを意味する。これでは成長が阻害されるし、金利の正常化も財政再建もできない。

●年金問題
実は日本の年金給付額は世界一高く、3割ほど削減しても十分に高水準である。支給額と支給年限を3割ずつカットすれば、年金支給額は半分になる。保険料の引き下げも可能になり、年金問題は解決する。
翻って、児童手当は先進国の中で一番低い。

●人口減少でどうなる?
実は、人口減少は恐くない。働く人が減っても、消費する人も同じように減るので一人当たりの豊かさは何も変わらない。
むろん、人口が減れば日本全体の経済力は小さくなるが、一人ひとりが豊かで幸福ならば、他国と比較して世界何位であっても関係ないのではないか。

人口減少よりも高齢化が問題である。特に、現在の年金制度を維持しようとしたまま高齢化社会を迎えるのは危険である。

●少子化
日本では、正社員として働き続けた場合と、妊娠出産を機にパートタイム労働に変わった場合での生涯所得差は1億円以上にもなる。(子育てに掛かるコストではなく、「諦めなければならない所得」)これはあまりにも大きなコストであり、仕組みの改革が必要。

●「大停滞」の犯人は
デフレで実質賃金が高止まってしまったこと。

物価が下がれば消費者としては嬉しいが、賃金が下がるのは嫌だ。するとやがて物価の割りに賃金が高い状態がくる。従業員に高い賃金を払う一方で売値は安くなるのだから経営は厳しくなり一部の勝ち組企業だけが残る。社会全体では新卒採用が出来ず若年失業者は増え、給料も上がらないという悪循環になる。
不況のなかでは実質賃金上昇は、このようにボディーブローのように効いてくる。

●19世紀の世界経済はなぜデフレになったのか
当時、世界主要国は金本位制を採用していたが経済規模の発展に対して、採掘可能な金(ゴールド)が追いつかず、これが足枷になった。新しい金鉱山が発見され、供給が安定すると経済も回復した。マネーの伸びを安定させておけば、デフレから脱却できる。

●官民賃金格差は地域に何をもたらしたか
所得の低い地方ほど官民の給与格差は大きい。
つまり、地方の実情に関わりなく公務員に高給が払われている。これは中央からの交付税が入るためである。
公務員の賃金が地域の賃金水準よりも高ければ、有能な人材は公務員になりたがり、ビジネスには集まらない。その結果、ますます地方のビジネスは発展しないのではないか?
かつて中国には科挙制度があり、有能な人材は役人に集中した結果、商人や技術者が不足し経済発展も技術進歩も遅れた。

・・・

日本は大丈夫なのか?
少年犯罪は増加しているのか
格差の何が問題なのか?
人口減少は怖いのか?
政府と中央銀行は何をすればよいのか?

・・など、いま考えなければならない問題に対して、非常に重要な多くの示唆を与えてくれます。素晴らしいです!

読むべし!

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Ddogのプログレッシブな日々




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2009年12月06日

坂の上の雲 司馬遼太郎

読んだのはもう随分前になるけれど、ちょうど先週からNHKでスペシャルドラマの放送が始まったので記録のため。
→ NHK スペシャルドラマ 坂の上の雲

原作は、1968〜72年にかけて産経新聞に連載された小説。

近代国家として生まれたばかりの明治日本。その時代を生きた伊予松山出身の秋山好古、真之兄弟と正岡子規を中心に物語は始まるが・・・
やがて好古が陸軍、真之は海軍、正岡子規は文学の道へと別れて行き、子規の死後は秋山兄弟を軸に乃木希典や東郷平八郎、児玉源太郎らを加えて「小説版日露戦争」となっていくにつれ、もう引き返すことはできない流れにハマって夢中で読み進んだ。

国家予算の半分が軍事費というムチャクチャに何年も耐えて海軍を建設したり、日露戦争を始めるお金が無くて戦費のほとんどを外債でつないだり・・まあ今では想像もできないほど貧乏で、中小企業のように小さな所帯の我が日本国。。

・・頑張ったよなあ〜(つくづく感心)。。

好古や真之が軍人になったのだって、「兵学校なら授業料タダ」という、ほぼそれだけが理由。

背伸びして背伸びして、懸命に登っていけば、あの坂の上に見える白い雲にいつか手が届く・・
そう思って生きた明治の人々にすっかりイレコンデ、旅順攻撃(二百三高地)の無能な作戦によって兵達が次々と命を落としてゆくさまに泣けるほど腹が立って・・最後はバルチック艦隊との日本海決戦!

文庫本全八巻。本当に楽しませて貰いました。ああ、懸命に生きた人間達の姿は切なくて、いとおしい!
まだ読んだ事のない人には絶対オススメ。せめてドラマは見たほうが良い。

以下に、いろいろ考えさせられた事どもを ―
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国家にも揺籃期、成長期、成熟期、衰退期・・といったサイクルがある。明治日本は、国全体がまだ頬に赤みの残る青年のようだ。
日露戦争の勝利は、帝政末期の老ロシアに、せいいっぱいの背伸びをして懸命に、懸命に生きようとしていた青年日本がうち勝ったという事か。
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明治の軍と、昭和の軍では何が違ってしまったのか?明治海軍は、実に合理的に工夫をし、知恵を絞って新しい戦術を作り出している。それが昭和になるとなぜ「特攻」のような命の無駄遣いになってしまうのか。
日露戦争の勝利後、陸軍は不都合な真実を国民に知らせず隠蔽し、日本は神秘的な強国であると子供達に教育した。その子供らが昭和の軍人となって無謀な戦争に突入していった。
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海軍を建設した山本権兵衛は藩閥を否定して能力主義を徹底し、陸軍のオーナーたる山県有朋は派閥に配慮して能力を二の次にする政治を行った。その結果が、同じ民族とは思えぬほどの陸海軍の結果に出ている。
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諜報の重要性。陸海軍の奮闘の向こうで、明石元二郎大佐が単身ヨーロッパに渡り、反帝政陣営に資金を渡してロシア革命を背後から支援するなどという大胆な活動を行っている。この大胆さと知略を、日本はどこで失ったか。
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外交と世論形成の重要性。当時、ロシアによって苦しめられている国は多く、存亡をかけて立ち上がった日本を応援する向きがあった。国際社会において仲間を作ることは大事。日英同盟があったため、ロシアバルチック艦隊は長い航海中、英国にさんざん妨害をされた。
また、当時世界の情報網たるロイター通信とタイムズを握っていた英国が、ロシアの形勢不利と報道することで国際世論が日本の勝利を後押しした。
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・・・と、まあ考察は抜きにして。
全八巻という長さがまったく苦にならない物語世界を堪能できます。明治のニッポンこんなに懸命に頑張ったんだ!と胸を熱くすること保証つきです。

読むべし!読むべし!!


posted by 武道JAPAN at 21:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月03日

私は日本のここが好き! ― 外国人54人が語る 加藤恭子(編集)

「文藝春秋・特別版・私が愛する日本」(06年8月号)に掲載された「大特集・外国人52人が語る 私は日本のここが好き!」を元に単行本化したもの。
政治家や学者による「日本論」ではなく、世界32ヶ国の様々な立場の人から日本に贈られたエール、とでもいうべき本。
我々にとって「当たり前」と思っていたことが、日本以外では「滅多にない」事であったり(街の中に畑があるのに誰も盗まない)、「そういえば無意識にそんな事してるなあ」(お茶を淹れる時、濃さが均等になるよう複数の湯飲みに少しづつ注ぐ。なんという心遣い!)という事に気付かせてくれたり、とても楽しく読める本。

「日本の最も良いところは人間の資質です。私は日本に来てから、私の足や歩き方について(注:この人は足に障害がある)意地悪な言葉を言われたり、失礼な呼ばれ方をされた事は一度もありません。自分の国ではそうではありませんでした。
日本に着いてすぐの頃、言葉もお金も判らないので、手の上にお金を載せて差し出すと、正直な日本人達は、そこから必要な分しか取りませんでした。私にとっては信じられない事でした。」(パキスタン)

「日本では毎日の生活が無事に繰り返され、きちんと仕事ができ、未来への計画や期待を持つ事ができます。日本の人たちは、そういった意味で自分の国を大切にしていると思います。公共の場所を汚さないだけでなく、政治的な問題が起こっても暴動を起こして火を放ったりしない。自分達の国を汚くすることがない。一日一日が平和と共にある。それが、日本の経済力やハイテクなどの世界に誇る力を生み出す基になっていると思います。」(インド)

「日本は本当に差別がない。あらゆる店の店員は日本人にも外人にも分け隔てなく親切でサービスが良い。これは、意識の底に必ず差別意識を持っている欧米人とは違います。」(イラン)

「中国では人が亡くなると街の外に埋葬しに行きます。日本では墓地が街の中にある。生者と死者がむつみあうようなのどかさ。。お坊さんも聖職者というより優しいおじさんのよう。人々の中に自然に南無阿弥陀仏の心があるんじゃないかと思う。日本の素晴らしいところはそこです。」(中国)

「日本人は丁寧で親切。私は日本人十人と知り合えば嫌な人は一人くらいですが、韓国人だと三人くらいはとても付き合えない。」(韓国)

「札幌で最終電車に乗り遅れて途方にくれている時、見知らぬ男女の車が近づいてきて事情を尋ね、一時間も掛かるところへ送ってくれました。何も要求することなく車は去っていきました。日本人の親切心、心遣いは今まで体験したことのない感動でした。」(シリア)

「私は日本の武道の心を持ち帰り、十年後、二十年後の国を創り上げていく決心です。信じる道や道標を持ち、終わりのない修行を続ける姿、そのものが武道の心なのです。」(トルコ)

「他人のためというより自分のために納得のいくまで仕事をする。それが誇りであり、名誉なのです。この伝統は素晴らしい。日本では、いい加減な仕事をする人は、ごくわずかです。」(アメリカ)

「英国と日本はとても似ています。私達は海の民です。日本人と接しているととても和みます。英国と日本は同じ伝統を守ってきました。英国王室と、日本の皇室です。互いの王室が親しい関係にあることが英国民の日本への親近感を与えてきました。産業の発達した近代国家で、すぐれた文化を持つ島国。この条件に合う国は英国と日本しかないのではありませんか?」(英国)

「日本人は、街は新しくても心では古いもの、伝統を大切にしている。茶道や華道、祭りや初詣。敬語で話すこと。それに映画もテレビも歴史モノが作られる。スペインなんて十年に一度くらいしか昔の人の物語を作らないよ。東洋でも西洋でもなく、昔の人の生活も現代の生活も体験できる世界で唯一の国。」(スペイン)

「日本では全てが何と組織立っていることか。地下鉄のホームには線が引いてあり、誰もが整然と列を作っている。ギリシャでは誰も並ばないし、電車が来ると我先に押し合う。日本の方々に伝えたい。自らの歴史と文化に誇りを持ってください。」(ギリシャ)

「松山の温泉地で偶然に墓地を訪ねたとき、日露戦争で亡くなったロシア人達のお墓があるのを知りました。近づいてみると、なんとミカンや杯が供えてある。近くに住む日本人の女性達が、今でも生花やお水をあげて、ずっとお世話をしてくれているのです。私は、日本人の心の優しさに涙が出るくらい感動してしまいました。それ以来、日本の友人達の事を考えると、彼らを決して裏切ることはできないし、裏切られることもないだろうと確信できるのです。」(ロシア)

・・世界一の「一般人」がいる、良きイスラム教徒に最も近い、世界に手本となる国、など日本人に対する賛辞は尽きませんが、反対に、古き良き伝統が急速に失われている、公共のマナーが悪くなっている、など心配する声も出ています。

多くの外国人が一様に語る日本人は、親切、正直、誠実、謙虚、勤勉、マナーが良い、職人気質、時間を守る、清潔に暮らす、他人を思いやる、人と適度な距離を置き不必要に干渉しないが困っていると親身に助けてくれる・・など。これを読めば、「反日な国」は世界にごくわずかしかない、と判ります。

時には、こうした「外からの目」の声を聞いて、自分の姿を振り返るのもよいでしょう。読むべし!

◆この本について紹介している他のブログ
カウンターゲーム
マイペース魔女の読書日記


posted by 武道JAPAN at 22:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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