2009年10月12日

ジパング再来 大恐慌に一人勝ちする日本 三橋貴明

著者の三橋さんは、、公開データを詳細に分析する手法で韓国経済の危機を予見し、インターネット掲示板「2ちゃんねる」において注目を集め「本当はヤバイ!韓国経済」を著してデビューしたネットエコノミスト。

本書でも、政府や金融機関が公表している一次資料に基づいて冷静に日本のバランスシートを分析し、根拠無き悲観論を叫ぶマスコミや似非エコノミストを「日本破綻原理主義者」と呼んで痛快に撃破しています。目からウロコです。以下メモ。

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・「日本の債務は国民一人当たり○○円!」は嘘。日本国債を買っているのは国内金融機関であり、その原資は国民の預貯金。つまり国民は「債権者」(金を貸している立場)である。

・政府の債務増大は問題ではない。全ての先進国で増大している。企業でも、事業規模が大きくなれば借入れ(運転資金)が増える。日本の問題は、借入れが増えたのに事業規模(GDP)が伸びない‐つまり経済の効率が悪い事。

・そもそも政府が借金を返す必要はない。貸している金融機関も返して欲しいと思っていない。期限が来たら繰り延べすれば良い。紙幣を発行しても良い。

・国家がデフォルトするのは海外からの借金が返せないから。日本は世界最大の対外債権国であり、円建てで発行した国債は、国内の潤沢な預貯金によって国内で消化されている。国家破産はありえない。

(もっとも、国債の発行額が増加すれば予算に占める利払い費の割合が増加するし、国債の引受け原資である国民の預貯金や保険が減っている状況で、いつまでも国債を発行できるはずはないと思いますが、この点は不明です)

・日本の成長は世界で2番目の巨大な内需がポイント。GDPの6割は個人消費。

◆2006年度 日本のGDP内訳
民間最終消費支出 56.9%
政府最終消費支出 17.6%
総固定資本形成 23.6%
在庫品増加 0.5%
純輸出 1.4%

(輸出対GDP比(GDPに対する輸出の割合)を見ても、ドイツや中国、韓国が40%近くであるのに対し、日本は20%に満たない。)

・「公共事業は悪」か?
景気後退時は民間に支出を求めるのは(民主主義国である限り)不可能なので、政府が支出を増やすのは当然。無用なハコモノは論外としても公共事業=悪という考えは短絡。

・「公務員は削減すべし」か?
公務員の給与はGDPの「政府最終消費支出」に含まれる。公務員数または公務員給与が経れば、「政府支出」が減ることになってGDPを押し下げるが、それで良いか?

・不況期は低金利であるため、長期の巨額投資が必要になるデフレビジネス(鉄道や空港、港湾の整備など)が盛んになる。この分野に圧倒的強みを持つ日本に有利。

・2009年4月のIMF発表によると、日米欧の不良債権規模は次の通り
アメリカ 2.7兆ドル
欧州 1.19兆ドル
日本 0.15兆ドル(日本の被害はぬきんでて軽微)

・オバマ政権の景気対策の8割は教育、医療、交通インフラの整備等。グリーンニューディールには実は1%強程度。

・日本の強みは、東京というメガロポリス−治安が保たれ、交通網が完備されている事で周縁に裾野が広がり世界最大規模の人口を有する都市となっている。
政府の経済対策(09年度補正予算)で、リニア新幹線の実験が前倒しされた。東京−中京圏を40分で結ぶリニア線が開通すれば東京−名古屋−大阪を結んで人口5000万を越す世界最大のメガロポリスが完成する。

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民族感情的な「日本最強」論ではなく、データのドライな分析から導いた結論として書かれているため説得力があります。

毒入り金融商品による被害が最も軽微で/国内にまばゆいばかりの純粋なマネー備蓄があり/デフレビジネスに強い技術や企業が存在する日本には、繁栄するための人、モノ、金、技術の全てが揃っている・・と、心強いばかりの評価です。

「足りないのは、国民の情報リテラシーだけで、これは日本人自らが勉強するしかない」と結論付けており、大いに共感します。読むべし!

■本書について書いている他のブログ
廣宮孝信の反「国家破産」論 ブログ
リアル読書ブログ





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2009年10月04日

これが日本人だ! 王志強(著) 小林さゆり(翻訳)

本書は、訳者の小林さんが北京の書店で偶然発見し、内容に魅かれて出版する運びとなったもので、著者の王志強さんは滞日経験の長いビジネスマン。
つまり知日派ではあるが、学者や研究者ではなく、あくまで「普通の中国人」から見た日本人の姿が描かれています。学問的な「日本人論」というより、サブタイトルにあるとおり「中国人によって中国人のために書かれた日本及び日本人の解説書」といった内容です。

とはいえ、日本の風俗習慣や歴史をよく理解しており、日本人を殊更に低くも高くも見ておりません。その分、否定しがたい日本人の生態が赤裸々に描き出されていて、なかにはヒヤ〜そうだなあと思う記述もあれば、そうかなあ??といった部分もあります。オビに「読んで首肯するか、立腹するか!」とありますが、まさにその通り。・集団至上主義・島国日本・日本人の精神世界・など日本人に対する大方の中国人の率直な見方が読めて楽しいです。 以下メモ

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・日本は大陸から適度に海で隔てられており、この適度な距離は軍を送って侵略するには遠く、文明が伝播するのは可能であった。この恵まれた条件が、日本に必要な文明をもたらし異民族の侵略からは守った(似たような条件の英国は、大陸と自国を隔てるドーバー海峡が対馬海峡の3分の1しかない。キューバやマダガスカルには最も近い大陸に文明がなかった)

・古来より中国から文化や社会制度を学んだが、欧米列強が現れると西洋から学んだ

・日本は海と山の狭い範囲に人々が住み、地震が多く毎年台風に襲われ自然災害も多いため助け合わねば生きてこられなかった。そのため集団から離脱する事を何よりも恐れる習性が身についた。これが日本人の団結心を生み、また集団の意見が優先されて自分の意見を持たない個人を作っている

・集団に対する依存心が強いが、まとまりも良く集団で動くと強大な力を発揮する。明治維新も戦後の復興も他国には真似のできないことであった

・繊細なものや静けさの中に美を見出す
・他国から日本人がどう思われるかをとても気にする
・情緒的かつ非理性的、無原則、ムードで動く、これは天皇制を支える精神土壌でもある
・物事がうまく行けば傲慢になり「日本民族の優秀さ」を誇るが、うまく行かない時はすぐに自信を失う
・第2次大戦では、精神論に頼った戦略性のない無謀な戦いを展開した
・武士道は形を変えて今も日本人の中に生きている

・日本人は人類史上に貢献するような新しい発明をしていない。発明されたものを応用して改良し、職人的なこだわりで優れた製品にするのは上手い

・外来の文化を柔軟に受け入れて混乱しないのはスゴイ。自分たちに役立ちそうなところだけ濾過して吸収し、うまく日本風にアレンジしてしまうイイトコドリ。ただし、外来文化の根底を「なぜ?」と深く理解せず「どうのように?」と実用的な事にしか興味を持たない
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中国人の一般的な感情として、日本は様々なものを中国から学んで漢字文化圏の辺縁にいたくせに、ここ100年あまり新しく出てきた西洋文明をすばやく学び取ると、軍備を増強して豹変し、恩知らずにも大陸を侵略して残虐行為を働いた「信頼できない国」という見方が根底にあるようです。

また、明治維新後と、戦後の急激な経済的勃興を見て「突然猛烈に変化して突き進む」が、「コントロールを失って悲劇を引き起こす」といった「不安定さ」を感じている、という事も判ります。

今後、世界はアメリカ圏、欧州圏、アジア圏という3地域を中心に動くと思われます。我々もアジア諸国、とりわけ中国とは「戦略的互恵関係」をより深めて行く事になるでしょう。そのうえで、双方の国民が他方をどのように見ているのか?を知りあう事は重要と思われます。とても参考になりますよ。

読むべし!

翻訳者:小林さゆりさんのブログ「北京メディアウオッチ」
中国で映像撮影...Emmy Broad"Band"Cast 本日の北京−映像ブログ(Blog


posted by 武道JAPAN at 15:58 | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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