2009年04月30日

知の衰退から如何に脱出するか 大前研一

「集団知」というフィルターを通して見た21世紀の日本人論。
なぜ日本人は、情緒のみで論理がなく、ものを考えなくなったのか?この状況を脱するために必要な処方箋は?
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21世紀の世界では、過去の知識は必ずしも問題解決の答えにはならず、経験のない事態に対して、なぜ?どうすれば?と「考える力」が必要で、集団としてのIQが高い国家が勝ち組となる。
日本はあきらかに知の衰退に陥っており、このままいけば世界の負け組みになるのは必至。
「小さな幸せでいいじゃないか」という意見もあろうが、長期にわたって衰退し経済的繁栄を失って生きてゆけるとは思えない。
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日本人は、民族としての集団IQだけでなく集団記憶力も低いのではないか?良し悪しは別として、敗戦と同時に鬼畜米英から180度転換してアメリカ万歳一辺倒になるなど、他の国では考えがたい現象が日本では起こる。最近でも、郵政選挙で小泉自民党に投票した人が、年金問題で安倍首相を大敗させるなど、「何も考えていない」としか思えない行動が目立つ。
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政治家もビジネスマンも、これからは英語・IT・金融の三種の神器が必須。それに加えてリーダーシップ。

リーダーの用件は以下の三つ。

1)行くべき道を指し示す
2)そこまでの道程と距離を示す
3)実際にやってみせるか、できる人を連れてくる

陰りが見えるとはいえ、米国は強い。その強さは「できる人を連れてくる」点にある。世界トップランクの教育機関は米国の大学であり、世界中から優秀な人材が集まる。日本では東大さえ世界ランクでは30位程度である。
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英語は、実質的な世界共通言語であり、これができないと何も始まらない。
「英語より、美しい日本語が大事」などと二者択一の議論をしているようでは子供がかわいそうである。
中国・韓国も教育機関を充実させ、英語教育に力を入れている。例えば、韓国のSKY(ソウル大・高麗大・延世大学)では全て英語で授業を行っている。
明治国家を作った偉人たちは謙虚に世界から学んだ。いまや中国・韓国からも大いに学ぶ点がある。
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バブル崩壊以降に生まれた子供たちは「希望に満ちた未来」を感じたことがないためか、あるいは生きていくだけなら何とかなってしまう社会に居るためか驚くほど欲がない。「ゆとり教育の見直し」以前に、全般的な意欲の低下を何とかしないと問題は解決しないのではないか。
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高等教育の責務は「メシが食える」人材の育成である。
○×式(知識の詰め込み)と偏差値教育は20世紀の工業化社会に適応した人材の量産には合致していたが、21世紀に必要な「考える力」は育てない。
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かつてエリートの間では、古典文学やクラシック音楽などの教養が共通の素養とされたが、現下の政治・ビジネスエリートの間では地球環境に対してどう考えるか、何をしているか?などが共通の話題となっている。Youtubeのトップ10にあがるニュースなどは皆見ている。
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残念ながら、国にも教育機関にも頼れる状況ではない。ひとりでも多くの「目覚めた個人」が、自分の行動を変えていく必要がある。
英国病からイギリスを救ったサッチャーや、シンガポールを繁栄に導いたリー・クアンユーなど、しっかりしたリーダーが出れば国は変わり得る。小泉元総理が本物の政治家だったら日本は良くなっただろう。(実際には、道路公団民営化や郵政選挙など本物の改革とは程遠い事しかしなかったが)

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つねづね疑問に思っていました。電車に乗ると皆がケータイを覗き込んでメールやゲームをやっているが、「読むべき本はないのだろうか?」「勉強することは山ほどあるのではないか?」「3S(スポーツ・セックス・スクリーンに浸し、何も考えないようにさせる愚民化策)に、みんなハマッテいるのではないか?」と。
立派なスーツを着た中年男性が漫画雑誌を読んでいるのを見ると心配というより恐ろしくなり「一億総白痴化」という言葉が浮かぶ。。

400ページを超える著作ですが、判り易く書いてありますし何よりも日本と日本人の将来を案ずる切なる気持ちが強烈に伝わってきて心を動かされます。読むべし!そして今日から行動を変えよう。俺もそうすることに決めた!





posted by 武道JAPAN at 17:30 | Comment(1) | TrackBack(0) | 読書記録(社会歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月25日

「三つの帝国」の時代―アメリカ・EU・中国のどこが世界を制覇するか パラグ・カンナ

訳者のあとがきに「国際政治版80日間世界一周」とあって、これが本書をうまく説明している。
著者のパラグ・カンナ氏は、米国のシンクタンク「新アメリカ財団」の上級研究員であり、外交官の祖父とビジネスマンの父を持ち、UAE、米国、ドイツで育ったインド人という特殊な経歴の持ち主だ。その経歴のせいか、あるいは100ヶ国近くを実地に訪れ、本書執筆のために再び2年をかけて世界各地を見て歩いた成果か、世界の主要地域で「いま何がおきているのか」の情報を、新聞やTVからでは知りえないレベルでレポートしてくれる。

GDPも軍事力も世界最強の超大国アメリカが徐々に覇権を失い、世界が多極化を始めたのは衆目の一致するところであろうが、カンナ氏は今後の世界で「三つの地域帝国−アメリカ・EU・中国」が拮抗すると予言する。

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アメリカは「裏庭」である中南米諸国との関係を、これまでのような支配−服従から転換し、ラテンアメリカ諸国のプライドを満たしつつ対等のパートナーへと改善すれば、食料・エネルギー・資源の南北アメリカ自給自足貿易圏を構築できるであろう。南米には、ベネズエラのような産油国もあれば、ブラジルのような食料大国もある。
(最近のニュースによると、オバマ大統領は、ブッシュを「悪魔」とまで呼んだベネズエラのチャベス大統領に好意的に受け入れられているようである)

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EUは、東方への拡大を粘り強く推進し、統一ヨーロッパ帝国を作るであろう。無論、多くの困難が予測され、拡大の意思は、あるいは挫折するかもしれないが、現在のところ、これまで歴史上に現れたどんな帝国よりもEUはうまくやっており、加盟を望む国も多く、新参の加盟国に近隣の国々が「クラスメート」のように振舞い方を指導するという好ましい動きも見られる。
また、南米が米国の裏庭であるように、地中海沿岸の北アフリカ諸国は「EUの南海岸」と化しており、石油やガスが地中海を縦断するパイプラインによって運ばれている。

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中国は、中央アジアを含む全アジアにネットワークを張り巡らし、中東やアフリカ・南米にまで資源を求めて手を伸ばしている。日本・インド・オーストラリアの三角形に入る地域で中国の侵食に持ちこたえられる国はないであろう。ミャンマーなどは、すでに中国の一地方と化し、一部の中国人から「南雲南省」と呼ばれている。

経済は開放的だが政治はベールに隠されており、2050年まで民主化はない。この方式は民主主義を至上のものとは考えないアジアでは概ね受け入れられている。

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日本と中国は、しばしば永遠の敵対関係と見られがちだが実際にはアジアの政治経済にとって車の両輪である。二国の間には、次第に新しい力学が頭をもたげ始めている。

日本は、ハイテクを駆使した海軍とミサイル防衛計画を持ち、国家予算に占める防衛費が非常に小さいにも関わらず、大国の中でもっともへりくだったこの国の安全保障を十分に満たしている。(もっとも、民族主義者の中には、米国や中国との軍事力不均衡を心配する声が出ている)

日本は、世界を視野に入れた明確な国家戦略を持たないため超大国には分類されない。中国に一歩譲ったポジションで満足しなくてはならないだろう。

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BRICSのうち、ロシア・インドに関しては厳しい見方である。

ロシアは、豊かな資源を元に外貨準備を積み上げたものの、資源以外の産業は育たず経済規模は小さい。腐敗の横行や、広大な領土と減り続ける人口のアンバランスは、かつてチャーチルが「謎に包まれた謎で、中身も謎だ」と呼んだ頃と同じく難問のままである。

インドは、一部の成功者を除けば未だに10億人以上が貧困の中にある第3世界で、大きな国だが重要な国ではない。経済の発展も増え続ける人口で帳消しにされてしまい、今後数十年は貧しい大国のままであろう。中国は民主主義ではないが統一されており、インドは民主主義であっても国内は混乱し、貧困のため何も自由にならない。台頭するとしても中国の仕切るルールに乗って、という事になる。

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その他にも、中東や東欧、ラテンアメリカなど、我々にとって遠くて情報の少ない地域についても詳細に解説されており、現時点の政治経済世界地図をざっと頭に入れるのに大変有意義な一冊。新たな認識に目を開かせられる部分もたくさんある。例えば、

・我々日本人はアフリカ大陸を地図で見ると、そこがアフリカという「ひとまとまり」の地域に見えるが、実際にはアラブ人が住むサハラ砂漠以北の「北アフリカ」は、地中海を取り巻くヨーロッパの裏庭であり、中・南部アフリカとは別物・・とか

・イスラム文化圏はアラブ世界を包含して、西アフリカからアジアまで広がっているが、マレーシアやインドネシアなど「アジアのイスラム」は、中東の「アラブのイスラム」とは性格が大きく違う・・などなど。。

400ページを超え、内容ぎっしりの本にしては、訳も上手で歯切れよく読みやすい良書。読むべし!


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2009年04月04日

中国の「核」が世界を制す 伊藤貫

「日米同盟を維持しつつ、必要最小限の核抑止力を整備しておくことは、21世紀における日本人の道徳的な義務である。」

・・・という結論で終わるこの本は、東大卒業後コーネル大に学び、20年以上米国ワシントンDCに住んで外交評論と金融分析を行ってきた伊藤貫氏によって書かれた。

多くの日本人にとって、意外で、受け入れ難いであろう「日本の核保有」について正面から論じた著作であるが、米国務省・国防総省・CIAのキャリア官僚・連邦議会メンバー・著名な国際政治学者たちと「核の傘」の有効性について長年にわたって議論し、米国の外交戦略の「本音」を知りぬいた上で書かれた内容には、きわめて高い説得力がある。久しぶりに「全日本人が一読すべき本」と感じた。

核武装の是非はともかくも、その議論すら封印されている状況は異常であり、多くの人の「外交」と「国際政治の現実」に関する認識のレベルを上げてくれるものと思う。米中や日本の一部の政治指導者にとっては「日本人には決して読んでほしくない本」であろう。

不思議なことに、Amazonでも出版元のPHP研究所でも「在庫なし」になっている。2006年に出版されたばかりなのだが?早く入手したほうが良い。

以下要点抜粋
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・21世紀の東アジアは、世界でもっとも危険な地域となる事を、多くの軍事学、国際政治学の専門家が指摘している

・日本は米中露の3大核保有国に包囲された「三覇構造」の中にいる(北朝鮮も核とミサイルを保有した)

・しかし日本では、国防に関するまともな議論がなされているとは言い難い。

・外交には「ウィルソニアン」型と「リアリスト」型の2つのパラダイムがある。

1)ウィルソニアン・パラダイム
米国大統領ウィルソンが唱えた、理想主義型パラダイム。国際法や国際機関の強化と、経済の相互依存が高まることで戦争がなくなるとする考え。日本政府が国民に外交方針を説明するときに良く使う。

2)リアリスト・パラダイム
現実主義的パラダイム。国際社会には、強制執行力を持つ世界政府も世界警察もないのだから、各国のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)を計って対処するのが現実的と考える。

・米国依存の「親米保守」や、自分が丸腰なら誰も撃たないというフィクションを唱える「反米左派・リベラル市民派」は、どちらもリアリストではない。

・日本では、この二つの極論が大勢を占めるが、世界各国の戦略思考はバリバリの「リアリスト」である。(ただし、公式発言は「ウィルソニアン」的な内容であることが多い。それら発言は全て戦略に基づく嘘)

・どの国も、自国の国益のみを追求しており、自国民を犠牲にしてまで他国を守ることはありえないため、米国の「核の傘」は有事には機能しない。日米同盟とは、日本に自主的な防衛力を持たせないための仕組みである。

・MD(ミサイル防衛システム)では日本を守れない。これを無効にする安価な技術が次々に開発されている。

・米国の政治家は、これらを十分承知しているが、日本を弱い国においたまま自国の覇権に都合良く利用する事が国益に適うため、「米国は日本を守る。MDがあれば安全」と言うだけ。

・キッシンジャーと周恩来は1972年2月に「日本が核を持つことを阻止する。日本に自主防衛能力を持たせない為に、米軍は日本駐留を続ける」との密約を作った。ブレジンスキーも2006年秋の公開シンポジウムで「米中間には日本にだけ核を持たせないという密約が存在する」と語っている。

・国際社会で、現実に真の発言力を持つのは核保有国のみである。

・「日本がその気になれば3週間で核開発可能」などという嘘を信じてはいけない。15年は掛かる。

・国家には、商人・軍人・哲人のバランスの取れた3要素が必要。
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1)中国の国家目標
2020年代に世界最大の経済大国になり、軍事費でも世界最大になる。アジア圏から米国の勢力を駆逐し、この地域の盟主としての地位を回復する。20世紀に奪われた領土は全て取り戻す。

2)米国共和党の戦略
日本には自主的な防衛能力を持たせず属国にしておく。中国との勢力均衡に利用できる範囲において親日的なバイアスが働く。

3)米国民主党の戦略
やはり日本には自主的な防衛能力を持たせず、米中で共同管理する。親中嫌日。中国共産党から多大な賄賂を受け取っている。

特にクリントン夫妻は、1980年代から繰り返し収賄している事で有名。中国人民解放軍が50%出資した「香港チャイナ銀行」から莫大な賄賂を受け取り、同銀行副頭取だったジョン・ホアン(人民解放軍の情報員)を米国商務省に入れた。ホアンは、CIAの機密リポートや財務省やペンタゴンの機密データを中国に流し続けた。
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ちなみに、著者が考える日本に必要な核武装は以下の通り

1)小型駆逐艦と小型潜水艦および、これに搭載する単弾頭巡航ミサイルが200〜300基。
2)コストは1兆円程度。GDPの1.2%。(世界各国のGDPに占める軍事予算平均の約半分)
3)先制攻撃や他国への侵略はしないのだから、米中露などが保有する多弾頭長距離弾道ミサイルなどは不要。
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実際に日本が核武装を準備するとなれば、米中は共謀して徹底的に反対するであろうし、まず何よりも国内世論が障壁になると思われる。

ただ、中国が軍事力を増強し続け、北朝鮮が核を開発しミサイル技術を向上させているにもかかわらず、国連も米国も有効な手を打てない状態が続けば、日本人が、自分や、自分の子供達の生命・安全・財産・権利を守るための自主的な防衛努力を考える事は、たしかに道徳的な義務であろうと思われる。


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