2009年01月29日

持丸長者〜幕末・維新編 広瀬隆

持丸長者(富豪・財閥)の形成過程から真実の日本近・現代史を炙り出す意欲作。3部作の1冊目。
ロスチャイルド財閥の歴史を追った同著者の「赤い盾」同様、徹底的な調査によって、今に至る大企業・財閥の成り立ちと、その閨閥が系図入りで描き出されている。

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開国、近代化は維新によってなされたものではなく、幕末の優秀な大名、幕臣によって既に準備されていた。明治政府はその成果を強奪した。
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維新とは、徳川幕府が薩長幕府に取って代わった事。外国商人から武器を買った下級武士たちが起こしたクーデター。武器購入に要した借金は明治政府が国民から取り立てた税金によって返済された。
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権力を牛耳った薩長の下級武士たちには政権担当能力も経済運営能力もなかった。
徳川慶喜の家臣であった商人出身の渋沢栄一が、幕府瓦解後に静岡藩に身を寄せていた優秀な旧幕臣を明治新政府に集め、そこから産業が勃興した。
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三井財閥の人材が新政府に入り込み、明治政府が廃藩置県によって召し上げた船舶(国家財産)を三井、鴻池が設立した汽船会社に無償で払い下げた。
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三菱財閥も、土佐藩所有の汽船などの公有財産を、岩崎弥太郎個人の私有財産に移し変えてスタートした。政治に取り入った商人たちが、公有財産を私有化しゆく過程はムチャクチャである。
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やがて財閥は、儲けを極大化するために政治を操り、周辺諸国への侵略戦争に国家を駆り立て、朝鮮に開国を迫り、台湾を侵略した。
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「勝てば官軍」の通り、力で政権を強奪し「うまい事やったモン勝ち」で私財を溜め込んだ卑しい人間が、誤って偉人と伝えられている例が多く、吟味が必要である。
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日本の文明は鎖国によって遅れていたわけではなく、大半の知識は長崎を通じて流入していた。しかし日本人は進歩を競うよりも技や術を磨くことに楽しみを見出し、すっかり満足して過不足なく暮らしていた。
開化後、自国の文化や文明を投げ捨ててきたのではないか。
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日本は、山川草木に恵まれ隅々まで器量よしの国である。賢い商人たちの知恵と工夫によって発展してきたこの国と、ここに生きる人々にとって何が本当に大切か正しい見識を持つべし。




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2009年01月11日

日本の「安心」はなぜ、消えたのか ― 社会心理学から見た現代日本の問題点 山岸俊男

社会心理学者である著者が、一般に信じられている日本と日本人に対する常識をひっくり返します。

文章は読みやすく、実証実験を交えて丁寧に論証していて説得力があり、日本社会の現在位置と未来への指針を提示していて参考になります。

著者は、社会の形態に「安心社会」と「信頼社会」の2種類があると言います。

●「安心社会」=社会の秩序維持に重点を置く。統治の倫理重視。
・外部との交渉を極端に制限した閉鎖社会
・身内だけで助け合い、また監視しあう。よそ者は、基本的に信用しない
・身内の裏切りや不正を厳しく罰する仕組みがあり、正直で居るしかない
・その仕組みが安心を保障するため、構成員は互いを信頼するかしないか考える必要がない
・内部の人間関係が重要なため、「空気を読む」能力が発達する
・構成員は、正直で誠実で自己主張を控えた態度をデフォルトとする
・普段暮らす社会を離れた場所では「旅の恥はかき捨て」になる
(これは例えば、古い日本の農村や、鉄の掟で結束したマフィアの社会?)

●「信頼社会」=社会の発展やダイナミズムを重視する。市場の倫理重視。
・外部に開いており、交易などの機会を積極的に活用する
・よそ者であっても「人は基本的に信頼できる」と考える
・見知らぬ者との接触にはリスクも伴うが、チャンスも大きいと考える
・相手が信頼できるかどうか見分ける能力が発達する
・民法や裁判所など、「身内の仕組み」以上のインフラが発達する
(こちらは、アメリカ型?あるいは地中海貿易で栄えたジェノヴァ商人)

ちなみに、どちらの社会が良い悪いという事ではなく、例えば戦後日本の驚異的な発展は「終身雇用」「年功序列」の「安心社会」で、一丸となって結束した成果であるとの事。「安心社会」は、秩序維持に掛かるコストがとても低くてすむ反面、急激な環境の変化に弱い。

面白いのは、一般的に言われている「正直で控え目で真面目」な日本人の特徴は、決して日本人古来のものではなく、上記「安心社会」に適応して生きてゆくうちに身に付けた戦略であるという点。日本人でも、アメリカ型「信頼社会」に暮らせば、違った性質を帯びるようになるという。

また日本人は、アメリカ人よりも他者に対する「信頼感」は低い。なぜなら、信頼できるかどうか判断する必要のない「安心社会」に暮らしてきたため、社会のワクを取り払って個人になってみると、そういう結果が出る・・といった意外な話を、様々な実験の結果から見せてくれます。

特に傾聴すべきなのは、現在の日本が「安心社会」から「信頼社会」への移行期に差し掛かっており、これまで社会の「安心」を担保した仕組みが崩れてきているのにも関わらず、新たな「信頼」システムができていないために様々な混乱が起きているとする指摘です。

これを「道徳教育」や「武士道精神の復活」で何とかしようとするのは、グローバル化が止められない現実の中で去り行く「安心社会」を立て直そうとする無益な議論であり、一刻も早く「信頼社会」の構築を目指すべき、と著者は説き、そのために武士道ではなく「商人道」の復権を挙げています。

反対に、絶対にしてはいけない事は「武士道(統治者の倫理)」と「商人道(市場の倫理)」を、区別なく混ぜてしまう事。たしかに「商人のような政治家」など最悪ですね。

すごく読み易いのに、斬新な視点を与えてくれる一冊です。


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2009年01月06日

神々の軍隊vs国際金融資本の超暗闘 浜田政彦

一見、陰謀系「トンデモ本」に見えるがさにあらず。

2.26事件の経緯を、豊富な資料を基に、背後に蠢いた財閥、軍閥、政治屋の動きも含めて克明に描き出した重厚なノンフィクション。

ユニークなのは、2.26事件を、陣風連の乱〜大本教・出口ナオ〜三島由紀夫「盾の会」、と続く、国體(こくたい)すなわち「日本的神話」を守ろうとする一連の動きであると捉え、「貨幣神話」に対する抵抗であったと喝破している点。

国際的な金融財閥と、それに繋がる日本の大財閥&天皇vs新興財閥の暗闘が、軍部の「統制派」「皇道派」の対立の背後に居た事や、2.26事件以降、皇道派を一掃した軍が、財閥の利益に操られて大陸への侵略戦争に突き進んでいった事など、歴史の表側には出てこない経緯が明らかにされる。
また、この国の支配層たちの複雑に入り組んだ「閨閥」や、国際金融財閥との関わりも解説されている。

自分自身は「日本的なるもの」を愛しており、守りたいだけでなく、これを世界中が見習えば、この世はもっと暮らし易くなる、とすら信じているが、現実的には「神々の秩序」が支配した古きよき時代は過ぎ去り、「市場の秩序」が世界を席巻している。そして、これは今後も強化されてゆくであろう。

とはいえ、「市場(マネー)の秩序」は、民族、文化、宗教を超えて世界をひとつの共通言語(ルール)の下に統一しようとしており、「行き過ぎた市場原理主義の暴走」をコントロールする事ができるならば悪いことばかりではない。
重要なことは、共通言語を通じて何を発信するかであり、その時にこそ、各民族固有の文化が問われるのではないか?
近江商人の「三方良し(買い手良し、世間良し、売り手良し)」など、日本には武士道に並んで「商人道」という「日本的なるマネーの文化」があったのだから、これが見直されるべきではなかろうか?

以下メモ
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2.26事件に決起した青年将校たちは、1)天皇は現人神であり、2)明治維新とは天皇が立って上からの「ご一新」により世情の混乱を祓ったものである、と教育されたため、当時の混乱した国情(一部の財閥が巨利をむさぼる中、大多数の国民は困窮し、娘を身売りする農家もあとを絶たなかった)を憂えるあまり、天皇を取り巻くスモッグを祓えば全てがうまく行くに違いないと信じて行動した。
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日本を日本たらしめるもの(民族を民族たらしめるもの)は固有の神話であり、近代史とは、貨幣という唯一の神話が全ての神話を滅ぼし、戦争を含むマネーゲームを展開してきたものである。
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国際金融財閥や、それに繋がる日本の財閥の存在は陰謀論でも何でもなく現実であり、ブリジストンや出光など戦争によって大儲けした企業が多数あるのも事実。戦争をすると儲かる奴がいるのは現在でも全く同じである。


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