2008年12月27日

隠された皇室人脈 ― 憲法九条はクリスチャンがつくったのか!? 園田義明

一般には、ほとんど知られていない皇室とバチカン(カトリック)との深い交流や、憲法九条制定にまつわってクエーカー教徒(平和主義キリスト教派。平和、男女・民族の平等、質素な生活、個人の誠実を旨とする)が活躍したことなど、平和の希求という点で結びついたキリスト教と皇室の関係が、豊富な資料を基に解説される。

迫る日米開戦にあたって、戦後処理を見据えてバチカンとの連絡を取ろうとした現実的な天皇の姿や、木下道雄侍従次長「側近日誌」に描かれた「鹿児島湾上の聖なる夜景」での、まさに日本的な国民と天皇との「まごころの通い路」、日独伊三国同盟を推し進めた松岡洋右への不信感など、さまざまな昭和天皇の姿も描き出される。

個人的に特に興味深かった点をいくつかメモ
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付和雷同の気が強く、国民性に落ち着きのないことが戦争防止の困難のひとつであった。この欠点を補うには、国民の教養を養い、宗教心を培う必要がある。(木下道雄侍従次長「側近日誌」)
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古来より、戦勝国Aが敗戦国Bを他国Cとの戦争に使役するのは常識。
マッカーサーが日本を武装解除するために押し付けたつもりの憲法九条を、吉田茂や岸信介がまんまと逆手にとって「アメリカの戦争」に駆り出される事態を回避し、「安保ただ乗り」でむしろ敗戦国(日本)が戦勝国(米国)の軍事力を利用しつつ経済発展を成し遂げた。
憲法九条引きこもり作戦がなければ、朝鮮戦争やベトナム戦争に日本人が使われた。
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靖国神社には敵味方を問わず戦没者を祀ってあるというのは間違い。戊辰戦争で賊軍とされた会津白虎隊や、西南の役で没した西郷隆盛は祀られていない。戊辰戦争後に、長州の大村益次郎や山県有朋を中心に作られた「長州の護国神社」としての性格が見える(安倍元首相も長州閥)。
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読む価値は高いのですが、全体的に文章がイマイチ散漫な印象で、論旨を追うのに苦労した。著者の中ではキッチリ繋がっているのだろうけれど、様々なレベルの読者に届けるという点ではやや困難が残ると思われる。むしろ「あとがき」が、非常に明快で同意できた。

・時期と相手さえ見極め、皇室も認めるなら九条改正もあり
・今はまだ「盾としての憲法九条」を利用すべき
・北朝鮮は相手にしない。台頭する中国を警戒。
・中国は「問題児」であったほうが日本にとって都合が良い。「中共」でなく「民主中国」などが誕生すれば、日本最大の危機が始まる。
・米国は、台頭する中国に対して複数のシナリオを描いており、日本を中国にぶつける戦略もあるはず。そうなれば日中は火の海となり、米国は漁夫の利を得る。
・日本の神道こそは最高のアニミズム。地球環境が叫ばれる今こそ、八百万の神々を世界に解き放つべき。




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2008年12月21日

武士道セブンティーン 誉田哲也

神奈川と福岡に離れた香織と早苗が、剣道を通じて友情を通い合わせる。「武士道シックスティーン」の続編。

あの荒っぽかった香織が、チーム全体のことを考え後進の育成に力を入れている成長ぶりが素晴らしい。
反対に、九州の剣道強豪校に移った早苗が、そこで剣道をスポーツ・競技ととらえる黒岩レナと出会い、違和感を抱き悩み始めるところから「セブンティーン」の主題が始まる。

「シックスティーン」が「剛と柔」の対立と融和とすれば、「セブンティーン」は「武道とスポーツ」の相克。

香織の「そんな当てっこ剣道に、私達の『剣道』が負けていいわけないだろう!」の言葉に感動。「剣に武士道の心がなければ、レフェリーの居ないボクシングと同じで殺し合いに堕してしまう」「武者の仕事は戦いに勝つことだが、武士の役目は戦いを収めること」など、「武士道」が良い具合に物語に上がってきます。

この二人にまたまた会いたい!「武士道エイティーン」希望。


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2008年12月12日

21世紀の歴史―未来の人類から見た世界 ジャック・アタリ

ジャック・アタリはミッテラン政権の最高経済顧問、欧州復興開発銀行初代総裁。ヨーロッパ随一の知性と言われる経済学者、思想家。

本書は、「21世紀(未来)の歴史」というタイトル通り、今後50年間程度の政治・経済の見通しについて書かれたもの。未来を予測するために、まず過去の人類の歴史から市場経済がどのように発展してきたかを超長期の時間軸で俯瞰し、その後に、未来に起こる3つの波について分析する。
「過去の歴史」と「現在の事実」を基に、悲観でも楽観でもない冷静さで描き出された未来図には、認めたくなくても頷かざるを得ない説得性がある。本年もっとも衝撃を受けた本。

以下メモ
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人類の歴史は3つの権力【宗教人・軍人・商人】が入れ替りながら社会をリードした。「神々の秩序(宗教)→帝国の秩序(軍事)→市場の秩序」
現在は「市場の秩序」(マネー、経済)が勝利し、今後これが加速する。

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市場の歴史は「中心都市」を軸に動いた
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◆中心都市とは
市場民主主義の中心地。超長期にわたり資本、頭脳、マネーが集積する場所・「クリエイター階級」を引き寄せる場所。
過去の歴史上に8つ出現し(ブルージュ、ヴェネチア、アントワープ、ジェノヴァ、アムステルダム、ロンドン、ボストン、ニューヨーク)現在9番目の都市はロスアンジェルス(およびハリウッドやシリコンバレーを含むカリフォルニア州)

◆クリエイター階級(起業家・商人・芸術家・学者・技術者・金融業者・エリート)
学問・芸術・技術に革新をもたらす才能あふれる人々(=超ノマド)

◆ノマド
人類は1万年前にメソポタミアで定住民となったが、21世紀にふたたびノマド(遊牧民)となる者が増える。(「市場の秩序」が国境を無効化する)
・超ノマド=エリートビジネスマン・学者・芸術家・プロスポーツ選手など
・下層ノマド=生き延びるために放浪する人々
・バーチャル・ノマド=定住民。超ノマドに憧れ、下層ノマドへの転落を恐れる

人間だけでなく企業もノマド化し、移動する。
・劇場型企業=特定の演目(商品開発など)のために必要なスタッフ(や資本)を集め、公演期間が終われば(プロジェクトが終了すれば)解散する。
・サーカス型企業=得意な演目(製品、ブランド)を持って、興行地を変えながら移動する。

◆10番目の中心都市
東京は、1980年代にチャンスがあった。今後も有力な候補地だが、課題も多い。
上海やムンバイの経済規模は世界有数のものになるが、国内問題の処理に忙しい。

※東京が「中心都市」になれない理由
●既存の産業・不動産から生じる超過利得、官僚周辺の利益を過剰に保護してきた。
●アジアにおいて、平和的で信頼感にあふれた、一体感のある友好的な地域を作り出すことができなかった。港湾や金融市場の開発を怠ってきた
●クリエイター階級(技術者、研究者、企業家、商人、産業人)の育成や招聘を怠ってきた。

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未来に起こる3つの波
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◆超帝国(民主主義・政府・国家の破壊)
10番目の都市は現れず、目に見えない帝国「超帝国」が世界を覆う。
・保険会社が人々に国家を超える規範を課す
・民間の警備会社が国軍に取って代わる
・企業の独自通貨が国の通貨を凌駕する

◆超紛争
・世界の多極化>地域紛争の勃発
・国家の弱体化>警察機構の無力化>武装勢力(マフィア、暴力団、テロ組織)の跳梁
・下層ノマドの反乱
・宗教勢力(イスラムのアルカイーダ、韓国の統一教会、中国の法輪功※共産党員より信者が多い)
・希少資源(水と石油)をめぐる戦争
・国境をめぐる戦争

◆超民主主義
トランスヒューマンと調和重視企業の出現
・トランスヒューマン=愛他主義者。他者に共感し、よりよい世界を残そうと考える人たち。
・調和重視企業=利潤追求より社会の調和と幸福の追求を目指す企業。

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21世紀日本の課題
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1)中国からベトナムにかけての東アジア地域に、調和を重視した環境を作り出すこと
2)日本国内に共同体意識を呼び起こすこと
3)自由な独創性を育成すること
4)港湾や金融市場を整備すること
5)企業の収益性を大幅に改善すること
6)労働市場の柔軟性をうながすこと
7)高齢化を補うため移民を受け入れること
8)市民に新しい知識を公平に授けること
9)未来のテクノロジーをさらに習得していくこと
10)地政学的思考を入念に構築し、同盟関係を構築すること


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2008年12月06日

シュリーマン旅行記 清国・日本 ハインリッヒ・シュリーマン

シュリーマンと言えば「トロイの遺跡」しか知らなかったが、実は事業家として成功し財産を得て世界漫遊に出たらしい。その旅行の途中で1865年に幕末の日本を訪れ、旅行記を残したのが本書。はじめに清国の上海、天津、北京(万里の長城)などの記述があり、その後に横浜に上陸。当時は尊皇攘夷の風が強く、江戸に入るのは難しかった情勢ながら八王子や江戸市中を積極的に探索している。

清国は、国の末期でもあり社会全体が腐敗していて活力を失い、街は汚く、インフラが壊れているのに対し、日本は隅々まで配慮が行き届き、清潔で、「蒸気機関を用いないで達することの出来る文明の最高水準」と褒めている。

ギリギリ最低の賃金しか要求しない船頭・ワイロを決して受け取ろうとしない税関の役人・椅子も机もベッドも不要な、シンプルで合理的な畳の住居と、花の咲いている美しい庭・ヨーロッパの製品に匹敵するかそれ以上の陶器や工芸品の数々・男女ともに平等に行き渡っている教育・・

シュリーマンが異文化、異文明に対して好奇心いっぱいに、かつ偏見の無い目線で書いているのが良く判る。しかも観察眼がするどい。浅草の観音寺を訪ねた後の感想などは笑いながら唸ってしまった!
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「私は、民衆の生活の中に真の宗教心は浸透しておらず、また上流階級はむしろ懐疑的であるという確信を得た。ここでは宗教儀式と寺と民衆の娯楽とが奇妙な具合に混じりあっているのである。」
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娼婦は社会の制度としても、心情的にも認められており、年季が明けたら普通に結婚することも当然であった。それどころか、人気のある花魁などは神格化さえされていた。
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銭湯は混浴であり、通りに向けて開け放たれており、シュリーマンが通ると皆が裸のまま出てきて取り巻いた。裸でいることが全くタブーではなかった。
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馬が藁のサンダル(?)を履いていた。などなど。
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豪華で贅沢なものは無いが、平和・行き渡った満足感・調和と秩序の中に暮らす、素朴で高潔な、愛すべき先祖達の暮らしぶりが実にイキイキと描写されていて楽しいです。


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