2008年11月21日

忍びの国 和田竜

忍者小説です。「のぼうの城」に続く和田竜の第2作。

なによりも表紙がカッコイイ。黒地に赤で「忍びの国」、と白抜きで様々な姿の忍者達。。。
内容は、非情に徹した伊賀忍者達と、伊勢を治める織田信雄軍との戦い・・を中心に進んでいくが、無敵の忍者=金でしか働かない主人公の無門が、恋した女、お国のために人間らしい心を回復してゆくという副旋律がからむ。
織田軍の猛将、日置大膳のサムライぶりや、偉大すぎる父、信長に無視され続けて居場所の無い思いを常に胸に抱える信雄など、脇を固めるキャラが描けていて良い。「のぼう」もそうだったが、この作家は登場人物を一人ひとり魅力的に描けるんだなあと思う。

攻める守るの戦いや、登場人物たちの心の機微の描き方など、全体的には「のぼう」の方が印象深いが、エンターテイメントとして十分な品質の一冊です。




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2008年11月11日

ミノタウロス 佐藤亜紀

吉川英治文学賞新人賞
本の雑誌ノンジャンルベストテン2007年第一位

第一次世界大戦(&ロシア革命頃)のウクライナ地方で裕福な農園主の息子だった少年が、やがて始まる戦争と革命の渦に巻き込まれて生きてゆく世界を描く。

・・と書けば何となく判った気になるけど、実際に本を開くとそうはいかない。
物語は主人公目線の一人称で始まり、客観的・説明的な視点は一切与えられない。よって、読者も主人公も、先が見通せずコントロールもできずに変貌してゆく時代を、地面の上を右往左往しながら、目の前に出現する世界をとにかく必死に生き延びて行くしかない・・という展開に放り込まれる。

第一次大戦&ロシア革命時のウクライナ地方は、ドイツ軍&オーストリア軍&赤軍&白軍に加えて地域の小勢力が入り乱れ、誰が勝つのか正しいのか、なーんにも判らない情勢。正義も、道義も、いわんや民主主義も人権もクソもない世界で、主人公ヴァーシャは暴力で女を犯し、悪びれもなく人を殺し、奪い、盗み、裏切る。現代の我々が常識と考えているような秩序は無い。呪いによって人と牛の間に生まれ、迷宮に閉じ込められた凶暴な怪物「ミノタウロス」というタイトルは、この世界を生きるニンゲン達をうまく表現している。

ニンゲンってなんなんだろうなこんな時代こんな状況に放り込まれたら「ただ生き延びる」ために単純になってふだん「らしく」身につけた気になっている文明なんぞすぐにハゲ落ちてしまうのだろうななどと頭の後ろのほうで考えつつ物語の終末まで突き進んで壁に激突したようにオシマイになる。

堂々と「文学作品」です。外国の古典の翻訳みたいだけど、現代の日本人作家が書いたのです。スゴイ!


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2008年11月02日

資本開国論―いま本当に必要な経済政策 野口悠紀雄

読み応えがあり刺激的。
日本経済の問題点と野口さん提唱の解決策をギッチリ書いてます。
簡単には、まとめられないので要点をいくつか・・

・90年代以降、冷戦の終結と共産主義国の変容により、市場経済圏に30億人の労働力が流入した

・同時に、IT革命によって通信コストがゼロに近くなり、オフショアリング(国境を越えた分業)が簡単になった

・これにより、コモディティ(差別化要因が少なく、世界中どこでも生産できて、価格競争に陥りやすいもの)を提供する人や産業は一気に値下げ(賃下げ・リストラ)圧力にさらされた

・この変化に対応し、資本を開国して積極的に海外からの投資を引き入れた国々は成長し、日本は完全に乗り遅れている

・日本で起こっている「格差」は、この「世界の産業構造の変化」が原因であって、小泉改革のせいではない

・格差是正と言う名目のバラマキや、従来の重厚長大産業を温存したままの成長促進では解決しない。産業構造の変革が必要である

・トヨタやキャノンが今後も日本を支えうるのか?Googleやアマゾンのような未来の産業となる企業が生まれなくてはならない

・金融緩和、円安志向は、旧来型の産業を延命させるだけであり、国民が汗水たらして働いて貯めたお金を海外に安く貸してやってわずかな金利を受け取る損な役回りである。日本の消費者のみが負担を強いられる

・積極的に海外からの投資を受け入れ、経営者にも競争をさせるべきである。優秀な労働力を活かし切れないのは経営に責任がある

・日本は海外に持つ莫大な資産の運用益を上げる事に真剣に取り組むべきである。プロこそ「貯蓄から投資へ」を実践せよ。貿易大国から資産大国への道を歩め

・・・とまあ、なかなか厳しい提言が並びます。

「法人税を引き下げても企業の競争力に影響はない」というくだりは??だったり、
「ものづくりはもう全部ダメで金融の腕を磨け」みたいに書いてますが、それはちょっと賛同できないなあ、日本人の職人的こだわりを活かした「高級ものづくり」の道もあるんじゃないかなあと、全部を全部肯定できないですが、全体としては「ううむ!」と、頷ける内容です。
やや重めですが、読む価値は高いです。


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