2008年10月11日

蝿の王(Lord of the Flies) ウィリアム・ ゴールディング

1954年出版の小説。著者のゴールディングは、ノーベル文学賞作家。
未来の大戦により英国から疎開する少年たちの乗った飛行機が墜落し、大人のいない世界での無人島生活が始まる。といっても「十五少年漂流記」のような勇気と希望に満ちた物語ではない。

最初のうちこそ、少年たちには秩序や目的があったものの、幼年から10代前半の幼い集団は次第に統率が取れなくなり、比較的年長のグループも遊んでばかりいて役に立たない年少者の面倒を見るのに倦み疲れ、対立する。
やがて集団は、正体の見えない獣(の幻)におびえ、狂気と怠惰に支配され、得体の知れない情動のまま暴力に駆り立てられ仲間を殺害してしまう。最後には対立の激化から「人間狩り」が始まる。

人間存在の、きれいごとで語りきれない側面をじっくり描き、徐々に狂気に滑り落ちていくストーリーには無理がなく、説得力がある。

ちなみに「蝿の王」は悪魔ベルゼブブの事であるが、作中では少年たちの一団が狩った野生の豚の、無数の蝿がたかった生首の事。

文明という環境から切り離され、既存の秩序や目的という「外から与えられる枠組み」を取り外してしまった人間は、ぐずぐずと崩れて「人ならぬもの」に変貌してしまうのか?では「人」とは何か?
・・・そんなテーマを、蝿で覆われた豚の首が象徴的に表しているようで戦慄させる。読み応え十分の一冊。




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2008年10月07日

日本はなぜ敗れるのか 敗因21か条 山本七平

実際に戦場を体験した著者が、
1)日本が戦争に負けた理由
2)それと同じ行動パターンが今も日本社会に現存すること
を解いてくれます。
1975年に書かれた本ですが、2008年現在にも通じる、というか何も変わっていないのでは(汗)?日本人とはどんな民族なのか、が明確になって怖いです。我々は何を変えなくてはならないのか。奥田碩会長が「ぜひ読むように」とトヨタ幹部に薦めた本、との事。

系統だった分析も戦略もない・身勝手な期待や無責任・思考停止・命の無駄遣い・・バシー海峡の兵員輸送の実態などは鬼気迫る恐ろしさ。もっと皆、この事実を知ったほうが良い。

・・・

・個人の「芸」「職人技」を磨く事に集中し、兵器や戦術を工夫しない。米軍は合理的に工夫して色々と方法を変えてきた。未訓練兵でもできる作戦で来た。

・日本軍は一方向に同じやり方を繰り返し、5万人を送ってダメなら10万を、それでダメなら20万を送り、全滅するとき「やるだけの事はやった」という。

・命を大事にしない。上の命令を聞いたら命は無いと兵隊達が気付いてしまった。

・自己を絶対化する。反日感情に鈍感。日本の文化を普遍化できない。自国の文化を明文化し自ら把握し、他文化との差異を説明できないから外交でコミュニケーションできない。

・日本人の収容所では暴力団が現れて力で牛耳る(=恐怖で抑える以外の秩序が無い)。米英人には彼らの内的文化から現れる秩序がある。
集団に自然に発生する秩序は、その集団が持つ伝統的文化を表している。日本人でも職人の集団には整然とした秩序があり、暴力団は介入できなかった。

・極限状態で聖人として振舞えるのは特殊な例であり、普通の人間は餓鬼にも修羅にもなる。「人道的」というのは、修羅になった人間を非難することではなく、極限状態に人間を追い込まない事である。

・人間の社会は、平時は金と女と名誉を中心に動く。教養や、いろいろの条件で体裁よくやるだけ。社会機構の根本とは、各人の口に食物を届ける事。その分配の仕組みを確立する事である。

・平時にあって金も女も名誉も要らぬ人は、人の上に立てる人だ。普通では抜けられぬこの境地に達した人が、戦場で大勢の兵を率いる事が出来る。偽善者やニセ政治家は、こういう人の真似をするだけ。

・・・

戦争の問題よりも、日本人と日本社会について極めて的確な考察です。何度でも読み返して、深く身に付けたい内容のある一冊です。


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